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あるけ、老人としゃべれ

最寄り駅は、小さな小さな、地元のローカル線の駅だ。
その駅から、ローカル線に乗って会社にいく。
だいたい1時間に1本だから、乗りすごしたら
致命的な痛手をおう。

ローカル線は、電車ではない。
汽車だ。
したがって、電線のようなものが上にない。
ディーゼルエンジンで動いているのだ。
乗ってしばらくすると、しゅぽーっ、と
音がして、黒いすすを吐き出す。
文字通りの、しゅっしゅっぽっぽだ。

これは、電車の様にスィーって動かない。
ガッタンゴットンすごい揺れるし、
トンネルに入ると耳をつんざくような
ゴーゴー音がする。
鉄道好き(乗り鉄さん、撮り鉄さん)が
珍しさのあまり、遠くから乗りに来たり
わざわざ写真を撮りに来たりする。
こんな関西の最果てまで、来ていただいて。
ありがとうございます。

最近は、話題性を煽って、人気アニメと
コラボして、車内も車外も、そのアニメで
ラッピングされる車両もある。

内側のラッピング具合も圧巻だ。
車内もびっしり、そのアニメ一色になる。
これ、いくらかかってるんだろう、
という完成度。

だいたい若い子に人気なアニメを狙っている
ようだ。
今までみたラッピング車両には、

「攻殻機動隊」
「宇宙戦艦ヤマト」
「けいおん!」
「Re:ゼロから始まる異世界生活」
「進撃の巨人」

などがあった。
これに乗りたい旅人の気持ちはわかるし、
旅のテンションで乗るならたぶん
Foooo!
てなる。

しかしこちらとしては今から仕事モードの
日常の通勤で乗るわけで、
さあ、今日も会社か、めんどくさいなあ。
でもよっこいしょ。などと座席に座ると、
急に、

・おっぱいの大きなメイドの格好の人の絵
(もえ)

・顔面に黒い縦線がたくさん入った、
しんどそうな男の子の絵(銃を持っている)

・スカートがちょんちょんに短い女子高生の絵
(キラキラしすぎている)

が目の前にあったりする。
私はどのアニメも、しっかり見たことがない
ので、どのキャラクターにも感情移入
できない。
ビジュアルを見て感想を述べるまでだ。

精神状態によっては、これらの絵にあてられ、
心がざわついて、ちょっとしんどくなって
しまう事も、ままある。

旅の方は、ぜひ、楽しんでいってください。

この汽車は、通常、一両編成で、
「ワンマン」車両だ。
つまり、運転手1人しか乗っていない。
ワンマンバスと一緒。

乗客は、後ろから乗る、というきまりで、
降りるとき、切符を前にいる運転手に渡す。
運転手は駅に停まるたび、運転席から
でてきて、乗客から切符をもらう。

なかなか大変な仕事だな、と思う。
トラブルがあったとしても、ひとりで
対処しなければならないし、結構危険な
仕事じゃないかと思う。

この田舎町では、20代以上の大人は、
車の免許を持ち、自分の車を買い、
それで通勤するのが当たり前だ。

私はナルコレプシーという睡眠障害があるため
免許を取らなかった。
取れない、という事はないが、あらゆるリスクを避けるためだ。

汽車に乗っているのは

旅人。(乗り鉄さんら含む)
老人。
高校生。
障害を持っていて運転できない人。

でだいたい全部だ。
私は1番最後の人の枠に入る。

都会のように、交通の便がよくないので、
車の免許を持たない私が、この土地で
2人の子供を育てていくのはなかなか
大変だ。

夫は私を甘やかさないので、歩いて行ける
所はどこまでも歩くし、バスや汽車を乗り継ぎ
できるだけ自力で目的地へ行く。

子供たちも、お父さんになるべく頼らずに
なんとかする。
うちで唯一、車を運転する夫が、
「乗せてやろうか」
「連れてってやろうか」
と自分から言ったことはない。
ほんとうに、誰も甘やかさないのが夫なのだ。


田舎を歩いていると、まず、人に会わない。
歩いている人は、

私。
小学生。
老人。

でだいたい全部だ。
働き世代は、どんなに近い場所でも車に乗って
行く。ちょっとくらい歩いたら?と思うが。 

ちなみに、学校から登校班で歩いて帰ってくる
小学生は、道で誰かに会うと、

「かえりました〜」

と言う。
これは、学校で、言え、と言われているのかは
知らない。うちの子達も、かえりました〜
と言っていた。
それを言われた大人は、 

「おかえり〜」

と返すことになっている。
道を歩いている人にはもれなく
かえりました〜
と言うはずだから、小学生に
かえりました〜
と言われたい、心の疲れた方はぜひうちの
町へ。

歩いていると、同じく歩いている
おばあちゃん達が話しかけてくれる。
特に小さい子供を連れていたときは、
警戒心なく話しかけてくれた。

おかげで、近所のおばあちゃん達とはだいたい
顔見知りで、仲良しだ。
作った野菜をくれたり、美味しい漬物ができたからちょっと寄っていけ、と言われたりする。

引越したばかりのころ、子供たちを連れて
うろうろしていたおかげで、
私はこの田舎のコミュニティに入ることが
できたと思う。
たぶん車に乗っていたら、いつまで経っても
だれ?だれ?引越してきた人だれ?
って言われてたんだろうな。

田舎って、老人ばかりで、さみしい。
とかいうけど、それは、
お店とか、遊ぶとこないし、活気がなくて
若い人が住むにはさみしい、という意味か。

じっさい、田舎の老人はめちゃくちゃ元気で、
やることがいっぱいあって忙しそうだよ。
さみしい?なんで?って思ってる、たぶん。

私は、田舎がほんとにさみしくなってしまう
のは、今の老人が居なくなってしまった時、
じゃないかと思うのだ。

takanoyamaさん、かわいい絵を使わせていただきました、ありがとうございます。




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