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232日前の私に言いたいこと

 2023年、夏。大のスラムダンク好きで、ミッチー推しである私は「宮城リョータの故郷の沖縄でバスケの国際大会があるんだ」くらいの気持ちでW杯を観戦していました。
 Bリーグに推しの選手やチームがあるわけではない、バスケ日本代表に関しても「女子は東京五輪で銀メダルを獲っていたけど、男子は??」、ホーバスHCはいつも怒ってる人、そのくらいの知識しかない状態で見始めたW杯。一応、日本が死の組と言われるグループに振り分けられていることは知っていましたし、個人的にスポーツ界の共通認識として「ヨーロッパのチームは強い」と考えているので、ドイツやフィンランドと同グループは正直厳しいと思いながら見ていました。しかし、日本はドイツには敗れたものの、次のフィンランド戦は逆転勝利!勝利に喜ぶ選手の中で一番私の目を引いたのは、後半にバケモノ級の活躍を見せた川村選手でもなく富永選手でもなく比江島選手でした。スラムダンクでのバスケの知識しか持たないバスケ未経験者ではありますが、なんとなくわかりました。前半の比江島選手のプレーがあったから、後半も諦めることなく戦えたんじゃないかなと。なぜなら、画面越しに応援していた私がそうだったからです。「勝負はここから!まだまだいける!」と思っていたからです。
 安西先生だったら翔陽戦でミッチーに声をかけたように「…君がいてよかった…」と言っていたはず。実際に試合後の会見でホーバスHCは「彼が前半あのプレーをしてくれていなかったら負けてたと思います」と言って、比江島選手のプレーを褒めてました。この時の私は、まさかそんな比江島さんが実は今回の代表選考ではギリギリまで当落線上にいた選手だったとは知る由もなく、単純に「HCにここまで言われるなんてスゴイ人だなぁ」とのんきに思ってました。
 翌日のスポーツニュースのヒーローは川村選手だったことが余計に比江島選手不足、彼をもっと知りたいというオタク魂に火を付けることになります。
 そして、あのベネズエラ戦。第4Qは比江島選手のための舞台でした。あと1つのファウルで退場となるプレッシャーの中、10分間で17得点。スリーポイントシュートを1つも外さず次々と決める姿はまさしく主人公でありヒーローそのもの。比江島選手がシュートを決めるごとに、実況のボルテージは上がり、チームのケミストリーも上がり、観客の熱も上がっていきます。それは画面の向こうで見ている私も同じでした。あの時、沖縄アリーナを支配していたのは、間違いなく比江島選手でした。
 中継で映る観客席、観客が持つボードには「日本の天才」と書かれてあり、涙ぐんでいる人もいました。実況者が言っていた「チーム最年長」や「苦しい時も日本代表をずっと支えてきた男」というフレーズが耳に甦ります。ボードを掲げていた人や泣いていた人は、楽しいだけじゃいられなかった時もずーっと比江島選手を応援してきた人達なのでしょう。それほどまでに誰かを魅了する選手だというのに、試合後のインタビューでは渡邊雄太選手やホーバスHCの方が目立っていた気がします…。なんか、こう、コメントに「やったぞー!!」みたいな勢いがないんですよね。さっきまで鬼のようにスリーポイントを決めて、ドヤ顔でセレブレーションしてた人は何処へ???
 そこからはもう早かったです。転がり落ちるように比江島慎にハマりました。まずは比江島選手の経歴を調べミニバス時代からの映像や記事があることに感謝し、アカツキジャパンの公式映像での後輩からのイジられっぷりに驚愕し、さらにはブレックス公式映像のエースたる活躍の一方で試合中以外はほわほわしている様子に無事(?)敗北しました。このあたりで、私の中で比江島選手の呼び方が「比江島さん」で定着します。「まこ」と呼ぶのは気恥ずかしいし、「ひえじ」は新参者の私には畏れ多いし、「比江島選手」では硬すぎるということで「比江島さん」です。

 知れば知るほど、こんなにも主人公補正のかかった人間が、現実の世界に存在しているのかと驚きました。
 内気な少年が兄にくっついて始めたバスケ。もうこの時点で青春王道マンガのプロローグ的なものを感じませんか?大好きな兄の背中を追いかけてバスケを始めた少年が、世界へ羽ばたいていくまでの間にはいろんな葛藤や苦難もあったはず。でも、それを全て乗り越えていく---そんな未来を予感させる始まりです。
 周りの子よりも背が高いというバスケ選手として恵まれた体格を持ちながら、それに奢ることなく、逆にスピードが無いという劣等感を抱き自己研鑽を続けた少年は、のちに唯一無二と言われる彼だけの独特なステップを獲得します。
 これも比江島さんっぽいエピソードだなと思いました。背が高いという生まれ持った自分の強みよりも、スピードが無いからディフェンスに追いつかれて止められてしまうというネガティブな発想になるところが、ベネズエラ戦後に渡邊雄太選手に「マコが信じてくれないから」と言われ胸をバンバンと叩かれていた場面を思い起こさせます。
 小中高大学と全ての世代で全国制覇を成し遂げ、全国区にその名前を知られるような存在になり、各カテゴリーで代表選手に選ばれ、プロになってからも新人王、ベスト5、MVP受賞とタイトルを獲得し、周囲から期待され続けられる中でそれに応えられる選手がどれだけいるのだろうと思います。もちろんバスケは一人でやるスポーツではないですし、支えてくれたたくさんの人がいたでしょうけど、決めなきゃいけない瞬間に自分を信じきれるかどうかは自分との戦いだったはず。

「自分を褒めてやりたいです、少し」

 2023W杯の最終日、追っかけ取材をしていたカメラに向かってそう話す比江島さんの控えめな笑顔が印象的でした。

 バスケエリートと言っても過言ではない華やかな経歴だというのに、本人はいたって温厚で奢ったところもなく、「諦めない男」というキャッチコピーの通り悔しさもたくさん抱えている人。だからこそ、次の目標に向かって成長し続けることができるし、負けて悔しいからどうすればいいか考えて、今の自分にできること、できないことを分析した先であえて困難とも思える道を選べる強い人。それなのにコート外では、なんかくにゃくにゃしてる???

 試合中の無双感。
 試合以外はほわほわ。
 黙っていれば美男子。
 口を開けば何言ってるかちょっとわかんない。

 これが、ギャップ萌えというやつですか…。二面性どころか多面体のような人で、どこから見ても不思議な輝きを放っている人です。某アニメの主題歌のように「一番星の生まれ変わり」だと思える人です。

 地上から見ると星のきらめきは「キラキラ」と表現するのがふさわしい輝き方で、眩しいというほどではありません。でも実際のところ、恒星は中心で水素などのガスが「核融合反応」を起こして燃えています。水素爆弾が派手に爆発しているようなものらしいです。 これって比江島さんのようだと私は思いました。体の芯の部分は誰よりも激しい情熱を持っているけど、それがあまり外からは見えない。でも時々見せる「比江島スイッチ」発動中の姿は、見る人全てを惹きつけて止まない、そんな気がします。だから、あれほど多くの人-応援するファンはもちろん、チームメイトや対戦相手まで-に愛されるんだろうなと感じています。ただバスケが上手なだけではなく努力も当たり前にする人で、日本一と言われる程のスキルを持ちながらも自分に自信がないようにも見えてしまう、そんな完璧ではない部分がもどかしくもあり愛しくもありといったところでしょうか。比江島さんの周囲にいる人達の比江島さんに対する扱いを見れば一目瞭然。みんな彼のことが好きなんだなと感じます。

「みんな比江島慎を好きで良かったですよね」

 そう呟いた井上雄彦先生のコメントに♡を無限に付けたい気持ちです。

 かつてバスケ人気を高めたマンガ「スラムダンク」が26年という時間を経て映画化し、2023W杯の盛り上がりに一役かったのは間違いないでしょう。でも、そこから先の今のBリーグの盛り上がりは、間違いなくあの時コートで戦っていた選手達の姿があったからだと思います。フィクションを超えるリアル。それは私だけじゃなく、今までBリーグをそれほど知らなかった人に多くの感動を与えてくれました。個々の選手を知り、そこから所属しているチームを知り、チームも好きになっていく。推し用語で言えば私は「ブレックス箱推し比江島慎担」というやつです。私は昔から推しだけではなく、その推しの周りにいる人も好きになってしまうタイプです。ですので、比江島さんに落ちた時から宇都宮ブレックスに落ちる未来は確定していました。
 そして今。比江島さんの活躍と宇都宮ブレックスの試合に一喜一憂する日々を送っています。勝てば嬉しいし負ければ悔しい。でもその負けさえも愛しいし、選手達が「次こそやってやる」という姿を見せてくれるから、ますます応援したくなる。このままの勢いだと、本気で宇都宮に移住しそうでコワイです。比江島さんと比江島さんを通じて知った宇都宮ブレックスは、私にとって生涯の推しになるかもしれません。だから、あの夏の日、ガ◯ガ◯君ソーダ味を片手になんとなく中継を見ていた私に言いたいです。
 
 無駄遣いはしないように。グッズ購入やギフティング、バスケットLIVEやradikoの登録にチケット購入や遠征費などに注ぎ込む日が来るから。しかも気づけばコアラ関連の雑貨が部屋に増えているし...。でも、それが楽しくて仕方がない毎日が待っているよ。

#宇都宮ブレックス
#比江島慎


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