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豊永純子「蒲原のポトフはうまい(6日目)」

3月6日、蒲原6日目です。朝起きたらペンを握ります。

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そう、本日は昼過ぎから「蒲原滞在のアーティストよる報告会」をセッティングしていただいてます。できれば企画の提案もしたいところ。残り時間少なし!

9時過ぎに、市川さんが元気に宿を出発していきました。東京日本橋から実家のある愛知県まで歩いて帰省しようという強者の大学1年生で、昨日「燕之宿」で出会いました。

「昨日考えたんですけど、いろいろ歩いて来た中で印象的な土地って、人と出会った場所だと思うんです。蒲原は豊永さんと出会ったから、記憶に刻まれます。」
というような、嬉しい言葉を残してくれました。
連絡先も交換したので今後も会えますね。彼女の人生に幸多きことを願っています。

市川さんを送り出した後、山本さんと一緒に吉田ふみ子さんのお家を訪問しました。昨日「旧五十嵐歯科医院」でお話を伺った際、お家を見たいと言ったら快諾してくださったのです。

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吉田ふみ子さんは、「蒲原宿まちなみの会」の会長さんです。「NPO法人 旧五十嵐邸を考える会」の副理事長も務めていらっしゃいます。

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現在「吉田邸」には、ふみ子さんがお一人で住まわれています。かつてはお菓子屋さん、その後飴などを売る店舗でした。

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地域のご家庭のお子さんを預かることもあるそうで、
「こどもたちが、あの看板変だ!って言うの。「カステーラ」なんて、おかしいよって。」
と、このお家に遊びに来るこどもたちの様子を嬉しそうに話してくれました。

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菓子販売の許可証。古い木のふだを見せていただきました。
その他にも、家から古いものが出てくる度に、飾ったり大事に保管されたりしているそうです。

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「苺もち」の包み紙。

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大工さんに作ってもらった行燈(あんどん)。「宵祭り」の夜は、通り沿いのお家が行燈を出し、まちなみの会がろうそくに火をつけて歩きます。秋の夜、幻想的に並ぶ行燈の列とやさしく照らされる街並みを思い浮かべました。

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美しい町並み感謝状。「あなたのお住まいはこの美しい町並みになくてはならない大切な建物です。」という文言がいいですね。

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古い吉田家の写真。明治43年撮影と書かれていました。

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「なかのま」にある名物階段。非常に省スペース!
かつて内職の道具を持って、この階段をのぼりおりした記憶を話してくれました。ふみ子さんにとって、家の中のひとつひとつに思い出が染み込んでいます。

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吉田邸の裏手には用水路があります。白色だった手すりの色が、まちなみの会の提案で、景観になじむ茶色に変更されたそうです。まちなみの会はかつて42名が会員になっていましたが、いまはふみ子さん含めてお二人。周辺の古いお家も次々と建て替えが進み、昔のまちなみはもうほとんど残っていないとのことです。
ふみ子さんは「吉田邸」の保存に熱心に取り組まれていますが、倉庫の解体や瓦の交換、草むしりなど数々の課題を抱え、「困ったなー、どうしようかなー」とおっしゃられていて、ご年配の方がおひとりで古いお家を管理し続けることの難しさをひしひしと感じました。

「旧五十嵐邸を考える会」理事長の片瀬さんと出会い、さまざまな地域の取り組みに参加された吉田ふみ子さん。かつて引っ込み思案だった性格が、いろんな人と話すことで明るく変化したそうです。

午後は、旅人である山本さんと豊永による報告会です。木下勇さんがセッティングをしてくださり、さまざまな地域をリードする7名の方にご参加いただきました。
「しずおか民家活用推進協議会」会長の伊藤さん、寺井さん、「蒲原地区まちづくり推進委員会」理事の稲葉さん、「鮨処やましち」ともこ女将、「えまるじょん」の米倉さん、「燕之宿」の大澤さん、そして今回の滞在で大変お世話になった木下真由美さん。

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木下さんから今回の趣旨のご説明があった後、
旅人から自己紹介、どのような6日間を過ごしたのか、蒲原で感じたこと、その上で提案できること、などをお話させていただきました。

豊永は「蒲原で活躍する人」に焦点を絞って、その人物像についてまとめました。
◎人がいい・温かくてパワフルで頭がいい
◎良いものと良いものを掛け合わせる達人がたくさんいる
◎遠い未来を見つめている

山本さんは、まちを動かしている70代のリーダーシップについて言及し、世代交代がうまくいっていないこと、若者がそこに参入しづらいこと、そもそも若者が働ける場所が少ないこと、などを指摘されていました。

その後、聞いていただいた皆様から以下のようなコメントをいただきました。
●年寄りの立ち振る舞いを考えさせられた。潔く、若い人たちのやることを認めたい。
●年齢などで線を引かず、自然にいいところを認め合えるような関係をつくりたい。
●先輩たちがやってきたことを大切にしつつ、良いこと同士が繋がるように、しがらみを無くしていけたらよい。
●蒲原ってこんなに良いところなんだと思った。
●蒲原古代塗の創始者を題材に、芝居をつくったら面白いのでは?
●人が来るっていいんだなぁと感じた。
などなど・・きちんと準備されたプレゼンではなくお聞き苦しい面が多かったと思うのですが、私たち旅人の報告に耳を傾け、真摯に受け止めていただいたことが、皆様のコメントから伝わってきて嬉しくなりました。

最後にご挨拶している内に、いろんな感情が衝突した結果、恥ずかしくも号泣してしまいました・・・。1週間、こんなにもよくしていただき、お会いしたどの方も快く2時間でも3時間でもお話してくださいました。どの方にも信念があり、大切にされていることを中心に据えて努力されていました。偶然の出会いがきっかけで深い話ができた方もいました。
ひとりの人間として、旅人として、この東海道の蒲原宿であたたかく受け入れてもらえたことは、一生忘れられない大切な経験です。と、この文章を書きながら燕之宿で大号泣しております・・涙腺どないなってんねん!

晩御飯は、真奈美さんがご用意してくださり、木下さんご夫妻・山本さん・豊永でこの1週間を振り返りながらいただきました!

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このほどけるポトフのように、地域住民がそれぞれの個性や信念を持ちながら、支え合ってひとつの素敵な音色を奏でられたらいいなぁ。地域だけではなく、世界中がそうであってほしいと思います。

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木下さんご夫妻と記念撮影。6日間、本当にお世話になりました!
蒲原地区のみなさま、しずみんのみなさま。今後ともよろしくお願いいたします!!!

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