見出し画像

鈴木のぞみ「消えゆく風景と伝承」南伊豆5日目

・再び洞窟へ
・小浦からトンネルをぬけて落居の夕陽
・画家 真壁泉さんとの出会い
・東小浦のお囃子


今回のMAWでは、28日(土)29日(日)が地元氏神様のお祭りだったため中抜け。28日に一旦龍山へ戻り、29日(日)夜おそくに2日間泊まる予定のゲストハウス コドコドさんへ到着した。

5日目は、先日カヤックで案内していただいた洞窟へ再チャレンジ。
先日行った際に、自分がカヤックを操縦しないといけないことで洞窟の中で音がとりづらかったり、オカリナが吹けなかったりしたため、
先日案内をしてくれた武田さんにわがままオーダーをして
2人乗りのカヤックを使って漕ぎ手一人工(武田さん)で、いくつかの洞窟を試してみた。

洞窟の反響音を求めて
洞窟に泳いで入るため、妻良の岸に上陸
泳いで潜入した洞窟
この石の音がとても良い

洞窟の中の反響は、自分の位置する場所の岩の形状により変わるので
ここいいな、と思っても波に揺られてズレてしまったり、なかなか難しく
とりあえず少しサンプルをとってみたけど もう一度チャレンジしたい。

上陸した妻良の岸は石がゴロゴロしていて
波が引いていく時の音がとても心地よく
1時間ほど そこで音を録った。


カヤックを終えて
夕陽を見ながら音スケッチできる場所を探して
落居の橋の下へ。
武田さんが、この地区に住む土田林一さんを紹介してくれて、波止場の先でのんびり音を鳴らすことができた。
宇留井大橋は、老朽化により壊され、道ができることが決まっているようで 工事が行われていた。
落居の集落にずっとあったこの景色はなくなってしまうのか、と
なんだか胸がぎゅっと締め付けられた。

小浦から落居に抜けるトンネル
トンネルを抜けた先にある宇留井大橋
波止場から
宇留井島の下から

陽が落ちて、小浦の郵便局に寄ろうと 郵便局の前にクルマを停めたら、
どうやらそこは郵便局の駐車場ではないらしい。

「小浦五十鈴川美術館」

と書いてある。こんなところに美術館?
そういえば、チラッと見た西松さんのnoteに何か書いてあったような。

覗いてみたら、真壁泉さんという、いかにも画家さんぽい方がお話してくれた。
明日からの「矢谷長治写生展」で 矢谷さんの息子さんで、展示の準備で生け花をしているのだという。

少しお話したら、お隣のヨシザワ君がいろいろ教えてくれるよ、
お隣のお家に案内してくれた。

小浦五十鈴川美術館と真壁泉さん


お隣に行ったら、ヨシザワさん(よっしーさん)という30歳くらいに見える男性がいて
よっしーさんは、最近までは山の方に住んでいたけど、つい1ヶ月前くらいに ここに引っ越したらしい。
家主は矢谷長治さんの奥さんの千景さんで、よっしーさんは千景さんに頼まれて
この家をリノベーションしながら住んでいるらしい。和紙に柿渋を塗ったものを使って、天井にパターンを描いてデザインしたんだ、と見せてくれた。
干し芋がのってる竹細工も、外に吊るしてある干し柿も、梅干しも、いろんなものが手作りでされてあって 丁寧な暮らしとはまさにこのことだ、という感じのお家。

和紙に柿渋を塗った型
よっしーさんがデザインされた天井
外に干してあった柿を出してくれた

しばらく泉さんとよっしーさんと、3人でお茶をしながら 泉さんからお話を聞いた。
泉さんは父である画家
矢谷長治さんのもと東京で生まれ、1歳で戦争が始まり小浦へ疎開。
みんなで手を繋いで浜辺に行って、夕焼け小焼けを歌いながら帰ったんだ、とか。
いろいろお話を伺ったが、長くなるのでそれはまとめレポートにて。。

泉さんが美術館の準備に戻り、よっしーさんが夕ご飯食べてく?と言って 玄米ご飯や手作り納豆など、いかにも体に優しい夕ご飯を食べさせてくれて 和やかな夕食を終えた。


夕食を終えたら、「今からお祭りの太鼓の練習行くけど見学する?」と誘ってくれて
一緒に町の集会所らしいところへ。

小浦には東小浦と西小浦があり、ここは東小浦の集会所。集落は今50世帯ほどになっているようで、各家の屋号が書いた連絡網が貼ってあったり、龍山と同じ雰囲気を感じて急に身近に感じた。

11/1の宵祭りで叩く太鼓の練習で、昔は30歳以下の男性によるものだったけれど、若い人がいなくなり 今年から、中学生、女の子も練習に入るようになったとのことで、中学生の男の子とよっしーさんが交互に大太鼓の練習をして、
周りで笛を吹いたり、男性陣が「アイヤー、アソレ」といって声かけをしていた。

この2週間毎日練習があったらしい
長いバチは、「砂切り」に使われる
昔の妻良港の写真が飾られていた
昔は練り歩いたが、もう人がいなくてできないのだそう

若竹、五郎三、岡崎 というのが
どの地域でも基本としてあるとのことで、1時間半くらい聞いていたけど、
一度では全然聞き分けがつかなかった。
お囃子は、すごくゆっくりで 上品な 位の高いお祭りのような雰囲気を感じた。

終わったあと、今日が練習最終日なので、と
みんなで打上げをされて混ぜてもらった。

笑顔の素敵な東小浦の
二郎さんと関さん

東子浦地区には、江戸時代から伝わる「人形三番叟」があり、神社の本殿を舞台に唄と音楽に合わせて人形が舞い奉納していたが、
それも今は人手がなくできなくなってしまったようで、DVDを見せてくれた。
「これは10年前のあいつだ、まだ毛が生えてる」と、みんなで懐かしんだ。

練習には、地元の若い人はこの日1人しかいなかった。練り歩きも、三番叟もできない。どうやって伝承していくかが問題だ、とみんなが口にしていた。DVDに残る風景は、もう見ることができない。

海辺で温泉もマリンスポーツもあり、華やかにも見えた南伊豆町でも、昔ながらのこういった集落が抱える課題は同じなんだなぁと、切ない気持ちになった。

MAW 5日目、たまたま出会いから小浦に長居して気づいたら21:00をまわり、結局郵便局にはいけなかったけれど、やっと 見たかったもの、知りたかったもの「ここに昔から住む人の暮らし」に少し触れることができた。

MEMO :
・宇留井島は根がある、小宇留井は鬼が投げた(まわりが砂)
・四神が神様を御守りしていて練り歩く
・お囃子は口伝で譜面はない
・東小浦は農業、西小浦は漁業で栄えた
 (東には田んぼがあった)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?