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関野佳介「猫と人に連れられて(1日目)」

2023年11月4日(土)
横浜からバスに乗り、御殿場駅に着いたのは十四時半ごろだった。集合場所となっているマウント劇場まで地図アプリを見ずに行こうと思い、とりあえず歩き出した。十五分ほどふらふら彷徨ったけれどちっとも見つからないので、観光案内所で劇場への行き方を聞いた。私が到着したのは御殿場駅の箱根乙女口のバスターミナルで、マウント劇場は反対の富士山口からすぐのところにあるとのこと。そもそも逆側にいた。初日から遅刻するのも嫌なので、大人しく集合場所へと向かった。

劇場に着いてすぐ、ホストの勝呂さんの車に乗って高嶺の森コテージという別の宿泊施設へ。そこでカレーを食べ、古本を少し見た。コテージにいた人懐っこい猫にメロメロになった。森から現れたというこの猫は、100年くらい生きてそうな達観した風格だった。この子が近づいてきてくれることで、なんとなく受け入れられている気持ちになった。

夜はGotemba Apartment Storeという場所でウェルカム・パーティーがあった。そこで私を含む3人の作家が活動内容や、この滞在中御殿場でしたいことなどを話した。場の空気感はとてもアットホームで緊張せず、進行の森岡さんが質問してくれるのもとても話しやすかった。

一緒に滞在する丹治さん、國吉さんの話を聞きながら、改めて私はこの街でどこに行きたいのだろう、何をしたいのだろうと思い悩んだ。あまりそういうことが自分の中で膨らまないまま当日を迎えてしまった。

でもこんなにぐるぐると考えすぎることもまた、目の前の現実をそのまま見ることを妨げていると思う。自分にベクトルを向けるのではなく、外に開いていきたい。

とにかく流れに乗っていこうと思う。初めて訪れた場所で、そこに住む人たちのおすすめを聞き、その場所に行ってみる。何もすすめられなければ身体を動かして歩き、自分から話しかけて質問する。相手の話を聞く。会話をする。そういう基本的だけど大切なことを丁寧にしていきたい。

ある中学校の美術の先生とウェルカム・パーティーで話す機会があった。彼はかつて御殿場で働き、今は富士市で教えているという。少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、でも熱意がしっかり伝わるような言葉や身振りで、以前していた映像の授業について話してくれたことが印象的だった。

ここに書いていないさまざまな人たちとの会話もたくさんあった。全部を記録することはやっぱりできないけれど、どれも大切で残しておきたい。

初めて滞在するこの街で、私はこういう人たちの温度感を探しているのかもしれない。

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