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西松秀祐 「ぼーっと / 南伊豆3日目」


落居

朝10時にチェックアウト予定だったので、8時ごろから昨日共同水場の源泉を探しながら気になっていた子浦の隣の集落、落居まで歩いて行くことにした。そのことをゲストハウスの小野さんに伝えると、落居に向かうトンネルを歩いて行って、向こう側に見える海が綺麗だからと伝えられた。

実際トンネルはすごい良かった。800mくらいあるのか?微妙に向こう側はちょっと見えるくらい。何分くらいかかるかな?とか初めは色々考えていたが、聞こえてくる音に耳を傾けたり、徐々に歩くことに集中していく。ほどよく身体の動きに集中しだしたあたりで、丁度向こう側の海がばっとしっかり見えてくる。トンネルから見える海はすごい抽象的な印象を受けた。どこか具体的な海というよりはなんか映画やアニメとかで見たほのぼのした凪の海、そして自分の記憶の海が混じり合ってできた、どこか知ってる海みたいな。それくらいすごい理想的な海だったような気がする。

落居、名前の由来について気になってはいたが、特に調べたりはしていない。チェックアウトまでに戻れば良いし、ぼーっとまた海を眺める。トンネルから抜けた場所は割と高台にあって、下まで降りていく。その時に会ったゲストハウスをやっている方と少し話をした。この落居から見える島にはたくさん海亀がいて、夏は船でそこまで行ってシュノーケリングをして、落居まで戻りBBQしたりするらしい。海亀は昨日釣り船の船長さんも何度か、「海亀が顔だした」と言っていた。一瞬のことで自分は釣りに集中していて見れなかったがいつか見てみたい。落居は個人的に1時間くらい海を眺めていただけだったが、すごい充実した時間が流れていたように思う。

またトンネルを抜け子浦にもどる途中で、草刈り鎌をもったおじさんに出会った。子浦の山道の草を狩りに行くらしい。映像などを用いた作品を作ってることなどを伝えると面白がってくれ、道端で色々雑談をした。そのおじさんは今朝大きい猪が海を渡ってくるのを見たらしい。なんかクジラが来たのかな?と海を眺めていると、大きな猪でびっくりしたと面白そうに話していた。そして子浦のことなどをたくさん教えてくれた。立ち話をしているとジャケットを着た男の人と3名の女性が車から降りてきて、少し会話をした。おじさんが男の人に大分から来た美術家だと。と伝えると、南伊豆にも美術家がたくさんいて、そういった人と交流が深い人を紹介できたらするよと言われ、携帯番号を交換した。その4人は用事があるようで軽い立ち話だったが、おじさんとは30分以上話していたと思う。別れ際、子浦、落居まで行ったなら、波勝埼までも行ってみるといいよと言われた。ワーケーションは始まってまもないが、なんとなく予定もたてず気ままに動く感じが心地よく、言われた通り波勝岬まで行くことにした。むかし風待ち港として栄えたこの子浦から、南伊豆での滞在を始めて良かった。Dajaの滞在、そして道で会う人、何もしっかり考えてはいないが、ふわーっ漂うように自然と動けているような気がする。RPGのゲームなら、風の町からなにか出会った人と話すことで新しいステージに向かっているような気がした。

Tee Salon Kibi

Tee Salon Kibi


波勝埼に向かおうとゲストハウスDajaさんのチェックアウトをしていると、さきほど電話番号を交換した方から電話がかかってきた。南伊豆にあるアート村の人と連絡がとれたこと、そして11月1日から子浦のKibiというTee Salonと子浦五十鈴川美術館で開催される展覧会があること、今その人はKibiで打ち合わせをしてるから、展示は大体できてるから見に来ても良いことなど、伝えられた。そして波勝埼に向かう前にKibiに向かうことにした。 

「矢谷長治写生展」
矢谷長治は子浦で生まれた画家で2014年に99歳で亡くなった。ここに来るまで矢谷長治のことを知らなかったのだが、フライヤーによると彼の写生の多くは8B鉛筆と多様クレヨンで描かれたらしい。Kibiでは打ち合わせ中だったので、写真とってよいですか?とか聞けず写真がとれていないが、すごい立派な古民家の中に、絵画が10数枚展示されていた。少しづつ知っていく南伊豆の土地名の書かれた場所の写生も多く、何十年も前に描かれた、その少し知っている場所の風景に、時空がゆがんだ何か不思議な印象を感じた。すごいよかった。これから行こうと思っている波勝岬の写生もあった。

この民家は大正・昭和時代前期の政党政治家、執筆家の小泉朔太郎の元邸宅で、展示されている矢谷長治の絵画以外にも様々な資料が展示されていた。

波勝岬


波勝岬につくと、モンキーペイという猿が放し飼いになっている園内を通りぬけないと行けなさそうだった。せっかくだしとチケットを買い、中に入る。暑くもなく寒くもない心地よい天気、猿がお互いの毛繕いをしている姿、すごいなんか絶妙に眠たくゴロゴロしたい気持ちにもなった。波勝崎の景観はもちろんすごいのだが、特にそこで印象的だったのが、海や景観を眺めていると、猿たちが喧嘩というか、ボスザルになのか分からないが、すごい勢いで追われている状況が数分に1回は起きていて、迫力もすごいし、気がぬけなかった。そもそもぼーっと何かを見るということが、どこか圧倒的な安心の上にある特殊な状態なのかもなと痛感した。
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「黒潮大蛇行と磯焼け」

そのあとは下賀茂に戻り、「黒潮大蛇行と磯焼け」についての講義を聞きに行った。会場には50人以上の町民が集まっていて、磯焼けの問題の深刻さを感じた。黒潮大蛇行、伊豆近辺の海温上昇、カジメの発育の衰退、ブダイの冬の活動の活性化、などの話だった。磯焼けについては漁師の方からお話をうかがったことがあったが、科学的知見による意見は初めて聞けてよかった。でも個人的には漁師の方との協力方法や、特効薬的なアイデアについてもうちょっと聞けたらよかったが、質問する勇気もなく町役場をあとにした。


漆喰塗りとDIT


その後は今夜宿泊するローカルローカルで働いている渡辺さんが今年1月から開店するお店を改装中で、その中を覗きにいった。先日すこしお話しを聞いていて、漆喰塗りをやっているらしく少しだけ手伝わせてもらった。ひょっとしたら手伝った人たちを撮影した写真展をおこなうかも、とチェキ撮影も行った。そこの改装をしていた青柳さんに教えてもらった伊豆のバンド「天草」も、大分に戻ったらゆっくり聴きたい。

今日宿泊するゲストハウス、ローカルローカルは、南伊豆のワーケーションのホストをしてくれている。チェックインして少しオーナーの伊集院さんと話していて、このゲストハウスのリノベーションをおこなったTEAMクラプトンの考え方、施工方法で、様々な人々が関わってできてくるものづくり、ワークショップの用に人々が関わりながら場所をつくっていくDIT(Do it together)について教えてもらった。様々な箇所で人が関わっていく感じが1月からオープンする本屋さんの漆喰塗りにも大事に伝播している感じ伝わってきた。

一日の締めとして、南伊豆での初温泉を満喫した。

ポリネシヤ風呂


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