【番外編】”自分”だからできる事を

こんばんは、そふぁーです。今回は、note で話題となっている

#いま私にできること

というテーマに沿いつつ、医療における「自分」ができることの重要性をお話していこうかと思います。

1.根拠に基づいた医療(EBM)の流れを知っていますか?

 皆様は私が過去に行っていたツイートのみならず、色々なSNSや情報源から EBM という概念が現在の医療の主流であり、皆さんの命を守る重要な考え方であるという事をご存じだと思います。
 では、この EBM の歴史についてはご存じでしょうか。
 実は、1970年代後半に行われたカナダの健康診断結果に関する研究が初期であると言われています。
 ここで少し「予防」という話に触れておくと、健康診断とは早期発見を主目的としているので二次予防という「予防」を目的に行われるものです。健康診断の有効活用で著名な論文では、実際に死亡率も抑制する事が分かります【1】。

2.医療において「自分」ができることは多い

 当然、前述の健康診断というのは「自分」が「能動的に」受けなければなりません。本邦では職場における健康診断や人間ドックへの公的補助など様々な支援策があるため、必ずしも能動的といえない部分がありますが体調が悪くなってから受診するという一般的な医療とは異なり、健康診断を受けるという事は予防として非常に有効かつ「自主的」な行動です。
 一方で、記憶に新しいのは平成16年に厚生労働省が発表した「最新の科学的知見に基づいた保健医療に係る調査研究」を元にマスコミが非常に強く”健康診断の2/3は無効!?”などと煽ったことでしょう。健康診断には、EBMに基づいて行われる検査と、今後のエビデンス構築のために組み込まれている基本的検査項目があります。その違いがマスコミには分からなかったのです。要は、未来への投資をマスコミは馬鹿にしていたとう事実が燦然と存在することに他なりません。現在も、私はマスコミの報道姿勢に疑問を感じますし、現実としてマスコミで報道されている意見や提案の殆どが荒唐無稽あるいはとっくの昔に検討済みの事で埋め尽くされ、時間の無駄である点も併せて強く申し上げます。
 現在の様々な報道でもそうですが、物事を正しく理解するにはある程度の知識と経験が必要です。このような「知識」をどこから手に入れるか。これは自分の工夫次第というのが、現代の世相だろうと思います。情報収集が容易になったからこそ、予防のための行動も変容しています。
・第一に、正しい情報を手に入れる事
・第二に、情報を判断する知識を身に着ける事
・第三に、信頼できる専門家を有する事
 これが、現代医療と情報における重要な「予防術」だと思います。書いていることは簡単に見えますが、やるべきことは非常に多いです。当然、情報を手に入れて行動しないのであれば意味がありません。そこから判断したことに基づいて、行動することで最終的な予防は成立するのです。

3.3段階の予防の概念と一次予防の実践

 実は、この時期に予防のお話をする理由は消化器を専門とする私にとっては非常に単純明快です。それは「食中毒」に気を付けて頂きたい、というのが理由の1つにあります。
 この”気を付けて頂きたい”というのは、当然「予防」のお話ですが、予防というのは以前もお話した通り3段階あります。
・一次予防:発症を未然に防ぐ
・二次予防:早期に発見して、早期に治療し、早期に回復して頂く
・三次予防:病気悪化あるいは、病気による二次的な問題を防ぐ
 食中毒を例に挙げると

 厚生労働省が出している注意喚起のようなものは、食中毒の発生そのものを防ぎますので一次予防です。特に生ものや加熱が不十分な食品を取ることはお勧めしません。実際問題として、冬場は車内の温度も高く、買い物をしても自宅へ持ち帰るまでが夏場並みに温かいという例も多々あります。
 現在、二次予防や三次予防を行う力が減弱しています。ぜひ一次予防にお力を入れて頂きたいと思います。
 IBDについても同様です。
しっかり決まった時間にお薬を飲む(在宅勤務や通学時間の変化などによる生活リズムの変化を極力少なくする)
・適度な運動、適切な栄養、身体を冷やさないなど基本的な養生に努める
・ストレスをため込まない。時には枕を殴ってストレス解消(埃が出ますので、マスクを着用し準備運動を怠らず、突然の激しい動きによる諸問題が起きないように注意してください)
 これらは意外と大変です。#いま私にできること というのは、意外とあります。人は「自分しかできないこと」に重きを置く傾向がありますが、当たり前のことを当たり前に行う事こそ非常に重要なのです。

4.自分の褒めるところを沢山知る

 私は、昨今の世相で非常に心配なことがあります。何が原因か分かりませんが、何か「特別な」事を求めているように見えることです。
 例えば、感染症対策において、うがい手洗いというのはゴールドスタンダードです。効果が期待出来て、重要だからこそスタンダードになるのですが、もっと効果的な方法を!特別な何かがあるはずだ!というのは馬鹿げています。そんなものがあれば、とっくにゴールドスタンダードになるのです。
 これは、IBD治療でも同じですね。色々な方が、独自の治療方法によって根治!などと仰いますが、結局因果関係は無くプラセボであったり、後に悪化されたりと色々です。5-ASA は UC 治療の標準治療ですが、多くの方に有効であり、それだけで寛解導入と維持に成功される方も比較的いらっしゃるからこそスタンダードとなるのです。
 だからこそ、毎日の服薬や注腸、坐剤を欠かさず、定期的に自己注射や外来治療を欠かさない方は徹底的に自分を褒めるべきなのです。効果が期待できる重要な治療を、きちんと行っている事は強い称賛に値します
 日々、帰宅後にうがい手洗いをしているなら、その度に自分は偉いんだ、素晴らしいんだと褒めるべきです。その1つ1つの行動が、予防になり、感染症を防ぎ、医療と自身の健康を守るのです。
 例えば1日15分程度日光に当たる習慣があるなら、それも褒めるべきです。ビタミンDの生成に繋がります。
 他にも枚挙にいとまがありませんが、体調に合った食事をされた場合も褒める。夜11時前程度に就寝できたら褒める(間もなく意識が無いとは思いますが)。朝歯を磨いたら褒める、顔を洗ったら褒める、食事後に早め早めで食器を洗ったら褒める(食中毒の予防)、しっかり加熱した食事をできたら褒める、生きているだけでも褒める。
 難病を抱えながらも日々を懸命に生きている私の大切な仲間の皆さん。今、皆さんが生きているだけで偉いんです。特別な何かではなく、私たちが日々行っている事の大切な意義を知ってください。

参考文献

【1】Friedman GD, Collen MF, Fireman BH. J Chronic Dis. 1986

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