チョイスを見て~クローン病~

こんばんはそふぁーです。
前回に引き続き、NHKのテレビ番組チョイスを見た感想を書いていきます。

☑ クローン病に割いた時間は少ない
☑ 提示された内容は極端

まず、クローン病の定義やその他諸々は指定難病の HP をご覧ください。
⇒ クローン病(指定難病96)
今回もネタバレを含みますので、気を付けてください。

★症例報告3

20代男性
大学講義中に肛門周辺に痛みを訴え、近医受診。
痔ろうと診断されたが、同時に内視鏡検査を進められ大学病院へ転院。検査後クローン病(CD)と判明。絶食等による治療を受け寛解し、5-ASA による治療を外来で開始するが、3日後に43℃の熱発。
5-ASA に対する過敏症により薬剤性膵炎を発症。
抗 TNF-α 製剤による治療を受け、寛解維持。

まず、5-ASA 過敏症は少なくありませんが、それでも珍しいうちに入ります。ただ、CD では潰瘍性大腸炎(UC) ほど 5-ASA の効果は高くありません。また、寛解維持にも有効ではないことを踏まえると短い時間に様々な説明を加えるためには仕方のない話かなと思います (Lim & Hanauer. Cochrane Database Syst Rev. 2010. ; Gordon M et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011)。

次に抗 TNF-α 製剤についてです。CD での有効性は明らかです(D'Haens et al. Am J Gastroenterol. 2011)。従って、この患者さんが継続的に寛解維持できているのは良いことと思います。

問題は
□ エレンタール等の話が出なかった
□ Top down 療法の話が出なかった
□ 食物繊維に関する表現が不適切
の3点かと思います。

★ エレンタール
 言うまでもなく、CD 治療の主役といっても良いエレンタールですが、今回の番組では殆ど触れられず食事制限についても非常に緩やかな話しか出ませんでした。
 確かに、海外の論文ではエレンタールの有効性について疑義があるのは事実です。しかし、国内で有効性は確認されており、CD で紹介しないのはどうかなぁと感じます。

★ 食物繊維
 狭窄がある場合などを考えると、食物繊維を推奨するのは決して賛同できません。当然水溶性食物繊維は重要ですが、不溶性食物繊維の摂取はリスクであると言えます。

最後に、クローン病や潰瘍性大腸炎を適切に情報提供しようと思うと 45 分のテレビ番組では短すぎるのです。色々な勉強会ですら各疾患で 90 分以上使うので、一般向けで話すには重たいというのが現状かと思います。

個人的には炎症性腸疾患学会や患者会などで協力し、医師・薬剤師・看護師・栄養士・検査技師などの立場から90分ずつくらいの動画を公開するのが正しいだろうと考えます。



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