【雑談】ワクチンの重要性と誤解

こんにちは、お久しぶりです。
関東では新型コロナウイルスの患者さんが爆発的に増えており、依然予断を許さない状況が続いていますね。こんな中では、本当に沢山のストレスがかかっているのではないかと思います。
今まで可能な限り新型コロナウイルスに関する話題は避けてきましたし、私自身感染症専門医では無いので、極力触れずにいました。
しかし、コロナ禍が2年経ってもなおマスコミを初めとする各種媒体の情報発信が玉石混交、特に批判するためなら読者に誤解を与えても構わないとすら感じる報道スタイルに辟易し、筆を取ります。

1.そもそもワクチンとは何なのか?

 先ず第一に、ワクチンとは何かご説明します。
 人間の体には、体外から侵入した異物を速やかに認識し、排除する免疫機能が備わっています。この機能は、初めて侵入した異物には限定的な効果しか発揮できないものの、異物の特徴を学ぶことで2回目以降に高度な排除システムを動かすことが可能になります。
 ワクチンとは、この免疫機能を利用し、異物の特徴的な部分を体に覚えさせることで、本物が侵入しても対応できる体制を整えておくためのお薬だと考えて頂ければ良いかと思います。

2.ワクチンの種類とは?

 一口に「異物の特徴的な部分を体に覚えさせる」と言っても、方法はいくつもあります。具体的には
生ワクチン:弱った病原微生物を体内に侵入させる。ワクチンのなかで唯一、極めて弱いが感染性を保有する
不活化ワクチン:機能が停止した病原微生物(死体)などを体内に侵入させる。既に死んでいるため感染性は無い
トキソイド:毒素を放出する病原微生物の毒素を不活化させたもの。そもそも病原微生物ではないため感染性は無い
ウイルスベクターワクチン:ヒトに感染性を持たないウイルスの殻に、標的となる病原微生物遺伝子の一部を封入する。一部の遺伝子しか存在しないため感染性は無い
mRNA ワクチン:遺伝情報である mRNA の一部(特徴的なタンパクをコードする部分のみ)をリポソームなどに封入する。同上
 が挙げられます。よく、後半2つは新しいワクチンでありヒトへの影響が分からないと言われていますが、そもそも新薬など全てそう言わざるを得ません。
 私が使用しているエンタイビオも、α4β7インテグリンの阻害剤は今までヒトに長期使用してきた経験がありませんから、長期的な影響など厳密にいうなら分かりません。しかし、様々な傍証から
投与するメリット>投与しないデメリット
と判断して使用しているのです。こうした、恰も正しいことを述べているようで片側のリスクのみを強調し、もう片方のリスクを軽視させるような言説には十分に気を付けてください。

3.ワクチンの目的は?

 ワクチンの目的は、感染予防ではありません。副産物として、殆どのワクチンがある程度の感染予防効果を有しますし、新型コロナウイルスワクチンについても同様ですが、主目的は【死ななくなる事】です。
 これはジェンナーの牛痘から続く歴史ですが
感染予防≠発症予防≠重症化予防
 なのです。ワクチンは右に行くほど効果が高く、左に行くほど効果は低いのです。これは、生物の免疫機能の限界でもありますし、早いサイクルで変異する病原微生物と生物の免疫機能が折り合いを見つけた結果でもあるだろうと言えます。
 なぜならば、侵入した異物に対して完璧な防御機能を有するのでは、変異に対して対応しきれません。そこで、ある程度変異にも対応できるよう幅を持たせた機能を有するのです。その代わり、完璧な防御機能を持つには至っていません。
 どういうことかというと、ワクチンの模擬異物に対して強い免疫機能を獲得しますが、その獲得した機能は模擬異物と多少形が変わろうともある程度機能するようになっているのです。それが、変異したウイルスにもワクチンが一定の効果を発揮する理由です。

4.なぜ私はワクチンを接種したのか

 私は年齢や持病の関係から、重症化リスクが高い人間です。従って、ワクチンを接種することで命を守るメリットが、接種せず通常感染するデメリットに比べ極めて大きいのです。
 ただ、最初は摂取すべきか迷いました。
 というのも、我々世代よりも若い世代の方が、今後の未来は長く明るいのです。その若者たちを差し置いて、年寄りが摂取することの是非を見極めるまでに多少時間がかかりました(そのタイミングでは、若年の重症化リスクや感染リスクは報告がちらほらあったものの、変異やその他に関する報告が極めて少なかった)。
 さらに私自身、現在も医療従事者として少しだけ現場に出ております。それも理由の1つです。

5.コロナにかかって免疫を獲得したほうが安全じゃないの?mRNA を体に入れるほうが怖い

 まず、コロナウイルスは RNA ウイルスです。つまり、感染すればコロナの RNA は体に侵入します。
 ワクチンの遺伝情報とは、この中の極めて一部のみ(しかも感染性なし)ですし、そもそも mRNA は特殊な酵素で外的に相当操作しない限り遺伝情報を”組み込む”ことは出来ません。mRNA が簡単に組み込めるのであれば、皆さんがかかっている風邪も RNA を有しますので、皆既にミュータントになっています。ワクチンはあくまで断片的な設計図を体に入れ、回数限定で小さな部品を生産し、その後設計図は燃やされるというシステムです。
 つまり、生のコロナに感染するほうが余程気持ち悪いですし制御が出来ません。ワクチンの mRNA は2週間程度で体内から分解されつくすことも分かっています。
 また、一部ではワクチンの mRNA がコードするスパイクタンパクが血管に影響を与えるという間違えた解釈もありましたが、著者らによって否定されています。何でも閾値というものがありますからね。検出されることと、影響を与えることと、影響が問題であることの間には、それぞれ津軽海峡程の幅があると考えてください。

6.報道から少し身を置く

 皆さんに少し提案したいのは、報道から少し身を置くという事です。
 はっきり申し上げますが、昨今のテレビ報道はセンセーショナリズムに傾き、適切な医療情報を提供している番組は圧倒的少数と言って差支えないでしょう。
 先ず必要なことは、信頼できる医療従事者を見つけるということかもしれません。IBD患者さんであれば、自身の主治医がそれに当たります。ご不安な事も多いと思いますが、医師、薬剤師にご相談ください。
 加えて、各都道府県の公的な発表やQ&A、厚生労働省のQ&Aもご参考になさってください。
 再度申し上げます。
 昨今の報道は、未だに視聴率やセンセーショナルな話題を確保するためか、それとも特定の政治的目的があるのか、批判にしろ擁護にしろ医学的に公正な判断がされていると感じる事は個人的にほぼありません。

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