【論文紹介】IBD論文を読もう 9/4

こんばんは、そふぁーです。
意外と手抜きでもお許し頂けるようなので、去年の報告ですが少し気になっている論文をご紹介します。

Novel Perceived Stress and Life Events Precede Flares of Inflammatory Bowel Disease: A Prospective 12-Month Follow-Up Study
Wintjens DSJ. et al. J Crohns Colitis. 2019
PMID : 30371776

こちらの論文は、12か月間の前向き追跡調査を行ったもので、新しいストレスやライフイベントが炎症性腸疾患の再燃に先行するかを確認したものになります。

1.概要

 炎症性腸疾患(IBD)は、寛解と再燃を繰り返すことを特徴としています。社会的、あるいは心理的ストレスやライフイベントが再燃に及ぼす影響は、再燃リスク因子を探索する報告で、いくつか報告がありますが【1】、いずれも後方視的研究が多いのが実情です。
 この論文では、前向きに12か月間IBD患者さんを追跡し、ライフイベントやストレス、疲労、不安、抑うつなど様々な要因が再燃と関連するか検討しています。
 その結果、ライフイベントや新しい心理的ストレスは3ヵ月以内の再燃と関連している可能性が示されました。

2.方法

 myIBDcoach という遠隔医療のシステムからIBD患者を募集しています。参加者は 417 名で、12か月間に渡り 1-3 ヵ月ごとに疾患の活動性、不安、抑うつ、疲労、ストレス、ライフイベントの報告を行ってもらいました。再燃は臨床的な疾患活動性と各種検査値を組み合わせて定義されています(詳細は論文Material & Method 参照)。

3.結果・結論

 調査期間中に再燃した患者は 49 名(11.8%)でした。再燃3ヵ月前までのライフイベント、新しい心理的ストレスは関連性を示した(OR : 1.81, 95%CI = 1.04-3.17,; OR = 2.92, 95%CI = 1.44-5.90)。従って、新しい心理的ストレスやライフイベントが予想される場合は、モニタリング頻度を増やすなどすることで、再燃予防に寄与する可能性があります。

4.注意点

 本研究では、いくつかのリスク因子が示されています【2】。特に低栄養が再燃リスクを上昇させることや、他の研究では服薬順守の不徹底【3】などが挙げられます。
 また、筆者らは心理的ストレスがリスク因子であることの傍証及び対策として催眠療法を引用していますが【4】、この報告は必ずしも良質とはいえません。しかし、医薬品によるコントロールが難しいストレスに対応するためには、専門医へのコンサルなども重要な選択になりえます。
 今回の論文では、そうした他科専門医の介入が検討されていないことも含めて注意して読み込む必要がある報告であり、サンプルサイズも複数の因子による統計学的な検定を行うには不足しています。
 患者として行えることはライフイベントが控えている場合には休養を心掛けたり、受診頻度を主治医と相談する、服薬順守の徹底などが挙げられると思われます。

参考文献

【1】Bernstein CN. et al. Am J Gastroenterol. 2010.
【2】Spooren CEGM. et al. Dig Liver Dis. 2019.
【3】Feagins LA. et al. World J Gastroenterol. 2014.
【4】Moser G. Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2014

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