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獣医師の視点から考える、mipigとペット業界のこれから

こんにちは、ピグ姉の北川です。

mipigにはさまざまな立場で、mipigを支えてくださる、大切なパートナーがたくさんいます。定期的に、インタビュー形式で「with pigな人たち」をご紹介したいと思います。

mipigはペット業界では珍しい、異業種出身のメンバーが立ち上げた会社です。これまでも業界の常識にとらわれない発想を強みに事業を展開してきました。一方で、創業初期の頃はブタさんやペットに関する専門知識が未熟であることが大きな課題でした。

そこで私たちは、事業の構想段階から獣医師の徳本さんに監修をお願いし、現在も定期的にブタさんの未来を相談しながら事業を推進しています。

今回はそんな徳本さんから、獣医師の視点から見たペット業界の実態やmipigの事業についてお話を聞くことができました。ブタさんとヒトが、幸せに共生できる未来を一緒に考える機会になれば幸いです。

徳本一義

第1弾「with pigな人たち」
獣医師・有限会社ハーモニー 代表取締役 徳本一義
物心ついた頃より猫に囲まれて生活し、獣医師を目指すようになる。大学卒業後は動物病院で臨床獣医師として勤務。病気の動物にしかアプローチできないことに課題を感じ、外資系ペットフード企業に転職。動物の栄養に関する学術的な研究を行う。同時に、大学での非常勤講師として活動。現在は有限会社ハーモニーを立ち上げ、mipigをはじめ、ペット業界の支援を行っている。そのほか、一般社団法人ペット栄養学会理事、一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長、日本獣医皮膚科学会、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学 非常勤講師等を兼任。

「異業種」ならではの発想に大きな可能性

──本日はよろしくお願いします。まずは獣医師のお仕事内容について教えてください。

日本ではペットのお医者さんというイメージが強いですよね。食肉の安全を確保することや、狂犬病やBSEなどの人獣共通の感染症対策など、公衆衛生にかかわる監視・指導業務が本来の仕事だということはあまり知られていません。

令和4年に愛玩動物看護師法が制定されたことで、現在はペットお医者さんとしての役割は愛玩動物看護師が担うようになりました。仕事の幅が広い獣医師の業務も、少しずつ分業が進んでいる状況です。

──獣医師として臨床業務だけではなく、ペット業界で活躍する企業の支援活動もされています。mipigでも創業初期からお世話になっていますが、当時なぜ私たちの活動に興味をもってくれたのでしょうか?

社長の佐藤さんと私は同じ大学院の出身で、同窓生のネットワークを通じて連絡をくれたのが最初の出会いでした。初めて事業内容を聞いたときは、異業界出身ならではの発想だと感じましたね。

獣医師からするとブタは産業動物です。農場で見るブタの姿形はかわいいですが、ペットとして一緒に暮らす発想は、私たちにはありません。欧米ではマイクロブタをペットにする事例もありますが、家の敷地がせまい日本には馴染まないと考えていました。

法体制の面からも、ブタはあくまで家畜です。ペットで飼うにしても、産業動物として扱う必要があることが事業化の際にネックになると考えました。

──やはり、産業動物であるブタをペットにすることは難しいと。

ただ、2人の姿勢には好感を持ちましたね。ペット業界に異業種から参入すると、ピュアな心で違法行為をしてしまう可能性がある。問題が起きた後では「知らなかった」では済まないので、創業初期に獣医師に相談しようという考え方は本当に素晴らしいです。

だからこそ私もmipigの事業に貢献したいと思えましたし、もしかするとペット業界の未来において大きな意義があるのではという期待も生まれました。

──mipigの取り組みは、ペット業界にどんな影響を与えると考えたのでしょうか?

少し遠回りになりますが、こういう話をさせてください。

私たちは、食卓に並ぶお肉をみて「産業動物がどのように飼育され、野生動物がどのように生きているか」を考えることは少ないですよね。特に日本人は「穢れ」の概念があり、この事実を見ないようにする傾向が強いと言われています。

産業動物のブタに焦点を当てると、我々がいつも食べているブタは180日で出荷されます。10〜15年といわれる寿命をまっとうすることはありません。小さなサイズのポットベリーは実験動物として使用されています。

産業動物としてのブタの活用を改めよう、と主張をするつもりはありません。ただ、ブタが「ブタさん」と呼ばれ、ペットとして天寿をまっとうする未来があっても良いのではとmipigの事業に触れていると感じるんです。

ブタさんの本能を活かしてあげることが大切

──獣医師の視点から、産業動物のブタと愛玩動物として歴史のある犬・猫では、ペットとしての違いはありますか?

基本は同じです。犬には「狂犬病」という、人間が感染すればほぼ100%死亡する感染症があります。犬の殺処分について問題提起されることがありますが、本質的な目的は狂犬病を予防するため。有事の際に人間を救えるよう、国に犬を殺処分する権利があるのです。

これはブタの場合も同じです。豚熱(CSF)は人間にはかからないものの、感染すれば畜産が壊滅してしまいます。過去にはもう発生することはないと考えられていた口蹄疫に由来する大量の殺処分が起きましたし、今後も可能性はあります。

感染対策の1つにワクチン接種があり、それは犬もブタも同様です。また、どのペットも、ノーリードで散歩をすれば野生動物との接触で感染リスクが高まってしまう。ブタだから、犬猫だからといって、感染症対策の面では大きな差異はありません。

──育て方の面では、何か違いがありますか?

ブタはブタ以外の何ものでもなく、犬や猫とは違う動物だと理解してほしいです。犬や猫も食べているからといって、ブタにドッグフードやキャットフードを与えてはいけません。

ブタの性質も、きれい好き、運動好き、保湿が大切、水が大好き、探索が大好きなど、特性をあげればキリがありません。重要なのはその特性を認めてあげることです。本能的に探索が好きなので、畳の間があれば引っ掻いてしまいます。これを妨げることは人間の都合でしかありません。

動物には、以下のような「5つの自由」を与えるべきという考え方があります。国際的にも浸透している動物福祉の理念です。

  1. 飢え・渇きからの自由

  2. 不快からの自由

  3. 痛み・負傷・病気からの自由

  4. 本来の行動がとれる自由

  5. 恐怖・抑圧からの自由

本能を妨げてしまうこともまた、この自由を妨げることになる。そういったことにも配慮をしながら、ブタの特性にあった育て方を意識してほしいですね。

まだまだ新ビジネスの芽があるペット業界

──ペット業界全体の傾向についてもお伺いしたいです。

ペットフード協会の調査によると多少猫は増えているものの、2008年をピークにペット数自体は減少傾向にあります。先進国の中でも最低水準で、ペット不可の物件が多く飼う場所がないことが理由です。

その結果、動物と過ごしたことがない子どもたちが増えている。動物愛護の観点から考えてもこれは悲しい現状ですね。

──頭数は縮小傾向とのことですが、ペット業界に可能性はありますか?
 
年々ペットにかけるお金が増えているというデータがあります。そのため、視野を広げればペット業界の可能性は十分にあると私は考えます。「ペットと過ごす」という切り口を1つ取っても、高性能な一眼カメラでペットを撮影する、ペットにとって優しい家を建てるなど、さまざまなビジネスが考えられます。

まだまだ業界内で気づいていないサービスも多々あるはずです。公衆衛生の観点から獣医師の関与は不可欠ですが、まだまだ新しいチャレンジができる業界だと考えています。

──獣医師の視点から、mipigが今後力を入れるべきポイントはどこでしょうか?

医療ですね。麻酔や薬など、犬と猫とは用法が違います。獣医師も、ブタの診察経験や知識がなければ対応ができません。

東京であればニッチなペットにも対応した先生もいるため、心配はありません。しかし、ペットとしてのブタがもっと社会に馴染んでくると、医療が受けられないブタが出る可能性があります。拠点を今後増やす中で、mipigとして各地域の獣医師に研修機会を与えることは、社会的な責任だと考えています。

──最後に、mipigの監修に関わってきた獣医師として読者にメッセージをお願いします。

マイクロブタさんとワンちゃん

動物と過ごすことは、豊かな人生を送ることにつながると私は考えます。先進国において、こんなにも動物と暮らす人が少ないのは、個人的にも非常に悲しい。mipigの「ブタさん」を通じて、動物の素晴らしさをもっと日本の皆さんに知ってもらえたら嬉しいですね。

mipigが掲げる「ブタさんとヒトが幸せに共生できる未来」を少しでも実感してくれたら、それはペット業界のこれからにも、人と動物の暮らしにも喜ばしいことだと思っています。

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取材協力:株式会社ソレナ

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