スタッツを通して考える16-17レギュラーシーズン ①ミネソタ・ティンバーウルブズ

16-17レギュラーシーズンについて、 NBA.com/Stats のデータをもとに考えていきます。今回はミネソタ・ティンバーウルブズ[MIN]についてです。。あくまでデータのみから分かること・考えられることを述べるので、実際に試合を見てらっしゃる方の実感とは離れているかもしれません。しかしそういった、データと実際の感覚をすり合わせていく作業もスタッツ解析のおもしろさの一つです。なんでこんなデータになったんだろうと考えてみることで、MINについて新しい視点が生まれる…かもしれません。

まず最初に、16-17レギュラーシーズン1試合以上出場した選手は全486名、そのうち総出場時間が410分(5分×82試合)以上である370選手におけるMINの選手のスタッツ的位置づけをいくつか見ていきます。MINにはどんなタレントがいるのでしょうか。まずは横軸に48分あたりのポゼッション数[PACE]をとり、縦軸に勝率[WIN%をとった散布図を紹介します。水色のデータ点がMINの選手です。縦の破線はPACEの中央値を表しています。ザックリいって、縦破線よりも右ならリーグの一般的なペースよりも早く、左なら遅いと考えることができます。また、横の破線は勝率50%の位置を表しており、横破線より上なら勝ち越し、下なら負け越しです。

MINの選手は縦破線の左側に位置しています。すなわちMINは比較的「PACEの遅いチーム」であるようです。

それでは次にMINの選手のオフェンス効率[OFFRTG / 100ポゼッションあたりの得点数]ディフェンス効率[DEFRTG / 100ポゼッションあたりの失点数]を見てみましょう。横破線はOFFRTG中央値、横破線はDEFRTG中央値を示しているので、縦破線よりも右に行くほど一般的な選手よりもOFFRTGが優れており、横破線よりも下に行くほど一般的な選手よりもDEFRTGが優れているということです。

MINの選手は、比較的OFFRTGが高い一方でDEFRTGは悪かったようです。また、チーム内で考えると Karl-Anthony Towns, Andrew Wiggins のOFFRTGが高いことは納得ですが、Tyus Jones のオフェンス効率の高さは正直意外でした。

それでは次に、どんなエリアからのシュートを多く撃っているのか見てみます。横軸に制限エリアからのシュート頻度[Restricted Area FGA Freq. / シュート総試投数のうち制限エリアからのシュートが占める割合]をとり、縦軸にその他2Pシュート頻度[Other 2PA Freq. / シュート総試投数うち制限エリアをのぞく2Pシュートが占める割合]をプロットします。横破線(Restricted Area FGA Freq. 中央値)よりも右に行くほど一般的な選手よりも制限エリアからのシュート頻度が高く、縦破線(Other 2PA Freq. 中央値)から上に行くほど一般的な選手よりも制限エリアを2Pシュート(その他ペイントゾーン、ミドルレンジ)が多いことを意味します。

このグラフから、MINの選手は「制限エリアシュートを、あまり多くは撃っていない」こと、そして「比較的その他2Pシュートが多いこと」が分かります。特に Andrew Wiggins, Kris Dunn, Ricky Rubio の3選手はその他2Pシュートの頻度がおよそ50%であるようです。

さて、リーグ全体におけるMIN選手の位置づけは分かりました。それでは次にチーム内での比較をしていきます。得点数について箱ひげ図を作り、MINの得点力を誰が担っているのか確認しておきます。

白い四角は、その範囲に総出場試合数のうち半分が含まれることを意味し、四角中の黒線が中央値を表します。そう考えると、MINの得点力の大半は Andrew Wiggins, Karl-Anthony Towns, Zach LaVine の3選手が担っていたことが確認できます。また、得点中央値が10点近い選手が3名(Ricy Rubio, Gorgui Dieng, Shabazz Muhammad)いることが分かります。しかし彼らの得点数は、0得点から20得点まで、日によってバラつきが多かったことが分かります。

続いてアシスト数の箱ひげ図を作ります。

アシスト数の中央値が3より大きいのは  Rick Rubio だけであったようです。その他の選手は全員、アシスト数の中央値が3以下であり、MINのアシスト・パス回しの多くは Ricky Rubio が担っていたことがうかがえます。

最後にリバウンド数の箱ひげ図を見てみます。

リバウンドは Karl-Anthony Towns と Gorgui Dieng の貢献が大きかったようです。また、Ricky Rubio はPGながらそこそこ多くのリバウンドを取っていたことが分かります。それと比べると、Andrew Wiggins のリバウンド数が少し物足りないような気がしなくもないですが…。

さて、それでは最後のセクションです。MINの選手について、試合ごとのPIEと100ポゼッションあたりの得失点差[NETRTG]、そして勝敗(W/L)の関係を見ていきましょう、PIEはザックリいって、その試合における選手の支配力・影響力を反映したスタッツです(だと僕は思っています)。PIEの解釈の仕方の一例を以前紹介したことがあるので、気になる方は是非ご覧ください。PIEが大きい試合ほどNETRTGが優れており、かつ勝っている傾向が見えるならば、その選手の出来が勝敗に大きく関わっていると言えるはずです。それでは見ていきましょう。以下、全選手ではなく何名かのみ紹介するので悪しからず。

まずは Karl-Anthony Towns[KAT] の PIE-NETRTG-W/L の関係性を見てみます。縦破線はKATのPIE中央値、横破線はNETRTGが0の位置を表しています。

黄色のデータ点が勝った試合、青のデータ点が負けた試合です。KATのPIE中央値は15を超えており、これはかなり優秀です。右上の区画、PIEが中央値よりも高く出場中のNETRTGがプラス(相手よりも多く点を取っている)ゾーンを見てみると、確かに勝利数が多く、KATの活躍は勝利に貢献していることが分かります。が、KATのPIEが中央値よりも低く(いつもより活躍できていない試合)、NETRTGがプラスのゾーン、すなわち左上の区画に注目します。KAT不調でも勝った試合が、まあまああることが分かりますね。もしかすると、次のように解釈できるのかもしれません。「KATはすでに最大級の支配力・影響力を発揮している。MINが今以上に強いチームになるためには、むしろKAT以外の選手の影響力が大きくならないといけない」。あるいは「KATの不調は普通の選手の好調に匹敵するので、いつもよりPIE低くても試合における影響力に陰りはない」ということかもしれません。

それでは次に Andrew Wiggins [Wiggins]についても同様のグラフを見てみます。

Wiggins はPIEの中央値が10を切っている、これはちょっと意外です。PIEは10を超えると一般的な選手以上の貢献度・影響力・支配力と考えられる指標なので、Wiggins の支配力にはまだまだ伸びしろがあると言えるかもしれません。先に見た箱ひげ図、Wigginsのリバウンド数やアシスト数を今後増やしていくことが重要、なのかもしれません。実際、PIEが高いほどNETRTGがよくなる、そして勝利につながる傾向がKATよりも顕著です(PIE-NETRTG相関係数:KAT→0.34, Wiggins→0.54)。


次にZach LaVine [LaVine]についても同様のグラフを見ていきます。

LaVineはPIE中央値が10未満と、彼もまだまだゲームにおけるインパクトに伸びしろがあるようです。また、彼の場合、PIEとNETRTGの相関性も比較的低い(相関係数0.24とはいえ、外れ値らしきものがあるので、それを除くと相関はないと思われる)ので、彼の活躍はチームをリードに導くにはいたっていなかったのかもしれません。試合の勝敗も、彼の影響力がいつもより大きい試合/小さい試合とでそれほど違わないようにも見えます。

最後に Ricky Rubio[Rubio]について紹介します。

RubioはPIEの中央値が10を超えており、試合におけるRubioの支配力は Wiggins や LaVine よりも大きかったことを示しています。勝敗に注目してみても、Rubioの影響力が大きかった試合(PIEが中央値より大きかった試合/破線よりも右側の試合)では勝ち数が明らかに多いことが分かります。PIEとNETRTGの相関も、LaVine や KAT より強い(相関係数0.42)ようです。Rubio が躍動するシーンが増えれば、MINはさらに手ごわいチームとなる、のかもしれません。

と、いうことで、今回はミネソタ・ティンバーウルブズのスタッツを見てきました。今回わたしが行った解釈・考え方は、あくまでわたしの憶測・推論であり、それが正解とは限りません。正解なんて一生見つからないのかもしれませんし、そもそも正解なんてないのかもしれません。しかし、そういうデータが出ていることは事実です。それをどう咀嚼するかは、受け取り手であるわたしたち次第です。頭を捻って悩んで調べて、これがスタッツ遊びの醍醐味です。今回の記事をタネに、スタッツと戯れてみてください。

[おわり]


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