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さよならにむかって歩く希望 https://ancoromochi-cha.hatenablog.com/

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失恋したときに聴こえる音

aiko が、「切れた電球を耳元で振ってさよならという音をきく」という曲を歌っています。 初めてこの曲を聞いたときから忘れられないフレーズ。 この曲、出だしから最高。 「しかし連絡がないな」で始まるんです。不安定なメロディに乗った不安定な歌詞。 aiko の歌はどれも好きだけれど、切れた電球~のフレーズが何年たっても刺さって抜けない。 私は、切れた電球を耳元で振ってみたことなんてない。振ってみようと思い立ったことさえない。 だけど、振ったことはなくても、それが幸せな音で

    • 結局恋はわからないままだけど

       平日の夕方のショッピングモール、手を繋いだ高校生二人をのせたエスカレーターが二階から三階へ上っていく。付き合っているんだろうな。彼らの後ろ、ひとりエスカレーターに運ばれながらそんなことを考える。楽しいのかな。幸せなのかな。ずっと一緒にいたいとか思うのかな。色々と考えてみたけれど何もわからない。正直に言えば他人のことになんて興味もない。恋愛感情ってどんなものだっただろうか。僅かだけど自分にもあると思っていた種類の感情がどう頑張っても思い出せない。  恋愛って、なんだ?  

      • 春の雷はぬるくやさしい

        "親愛なるあなたへ あなたは生きたかったですか" しなないでと言わなかったあなたが好きだった。 飲み干す前に、半分捨てた。 こんなに欲しかったのに、途中でいらないと諦めたくなる衝動がおさえられない。 動く喉元を眺めていた。水は流れるから綺麗で良いなと思った。さっきまで聞いていたはずなのに、その喉から出る声は忘れた。 私は同じ形で復元できない。言葉も、声も、表情も、焼き付けたくても何も残らない。 記憶は綺麗でなんか都合が良いから好き。 気が変わる前に、心変わりさせてあげる。

        • ひかりに向かって生きる

          「スヨンと同じ病気で、視神経は機能しています。昼か夜かは分かるので幸せです」 とある映画を観ている時、この台詞に何故か込み上げてくるものがあった。 目から日本語の字幕が、耳から数少ない知っている韓国語の単語が入ってくる。へんぼっけよ。最後の単語がしっかり聞こえた。 私たちは、光に向かって生きている。昼か夜かが分かるから幸せだと、簡単な自己紹介の場でさらっと言える、そんな鮮やかで深い心を持つ人でいられるだろうか、もしも視力を失っても。 행복해요. (へんぼっけよ)という言葉

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        • 粗茶です
          28本
        • エンドロールの気持ちを教えて
          12本

        記事

          シャッター

           人が撮った写真をみるのが好きだ。その人にはその景色がそんなふうに見えているのかと感じることができるから。 _______  彼女は写真を撮らない。一緒に行った場所や食べたもの、僕とのツーショットなんかも、一切撮らない。一度彼女にたずねたことがある。写真撮らない人だよね。このタルト、美味しそうだしすごく写真映えするんじゃない?と。そうしたら彼女は少し笑って答えた。「撮ったら残っちゃうし、過去になるよ」と。どういうことだろうと思った。椎名林檎の「ギブス」みたいだな、知らんけ

          シャッター

          スーパーハイパーエモーショナルエブリデイ -おひさしぶりアンパンマン号-

          他人の人生って楽だし傷つかないしずっと他人事だねハハッって悪魔ネズミが心を齧る 絶対的な正義のヒーローは誰でしたか アンパンチも体罰の時代です アイコスの煙を真正面から受けて 東京生まれ東京育ち悪い奴らは全員トモダチ 「涙で買えるものは全部手に入れてしまった」時期は越えたし 今はとことんハッピーにいけ 生きる上で諦めた地図を読むこと 近所にドトール二件いらんて 伝わっているようで伝わっていないこと 伝わっていないようで伝わり過ぎていること どちらも不足よ 美しさは

          スーパーハイパーエモーショナルエブリデイ -おひさしぶりアンパンマン号-

          アバウト・ユー

           冷たい冷たい朝、凍ったフロントガラス越しに、ろくに見えもしない曇り空を眺めながら君のことを考えていた。寒い。今日は一段と寒い。気づいたら歯を食いしばっている。君は何をしているのだろうか。まあどうでもいいけど。私には知る由もないけれど。ワイパーを動かす。無駄な抵抗。シャリシャリと凍ったガラスの表面を滑っていくワイパーを見つめながら小さなため息が出る。時間はたっぷりあるようで、実際まったく足りやしない。それなのに人生が長すぎる。生活が間延びしている。目の前の「楽しいこと」も「と

          アバウト・ユー

          アバウト・ミー

          ずっと漠然と仕事を辞めたいと考え続けていた。その気持ちは日に日に強くなっていく。今の状況に不満があるというわけではない。働くことは楽しい。周囲の人は優しくて心強くてとても良くしてくれる。でも、毎日「私には向いていない」と思う。無理をしすぎて正常な判断ができなくなっているという自覚がある。幸せだけど、楽しいけれど、ヘラヘラしているけれど、限界が近い。 なんでもやりすぎてしまうところがある。セーブをすることとサボることは別物なのに、頑張らないと罪悪感を覚えてしまう。やれるか不安

          アバウト・ミー

          【毎年恒例】2023年何してた?

          気づいたら12月。12月に入った瞬間、皆が走り出した。さすが師走。きっと次にハッとした時には今年が終わっている。 正直に言うと、今年の記憶がほとんどありません。ひたすら仕事をしていたということ、数少ない休みの日は大抵寝ているか推しを推していた記憶しかなく、毎年日記で振り返っているこの記事を書くかもかなり迷いました。日記もそれはもうボロボロなもので、書いている月と書いていない月、元気な時とそうでない時が顕著で、人様にお見せできるようなものがほとんどありません。 2023年は

          【毎年恒例】2023年何してた?

          あいしてる まさかね

          アラームの音って、最初の一音からはっきりきこえる時と、ぼやけた音が次第にクリアになってくる時がある。 なぜこの設定にしていたかは忘れてしまったけれど、随分と久しぶりの夜勤だったので夜勤用の時間のアラームをセットしていたら、Juice=Juiceのひとりで生きられそうって〜っていう曲がアラーム音になっていた。19時、かりんちゃんさんの芯のある声が出だしの「ひとりで」というところからはっきり聞こえた。ぱちっと目覚める。アラーム音にする曲じゃないよなとやけに冷静な頭で考える。

          あいしてる まさかね

          木曜、PM26:00

           飲まないとやってらんない気分だった。大して飲むこともできないし、あまり好きでもないけれど、飲まないとやってられない夜だったのだ。木曜の夜に飲み歩くには丁度良い理由だった。一人でいる方が好きだけど、誰かといたい夜だった。生ビールとレモンサワーとグラスワインの赤。アルコールに弱い人間にとって最悪の組み合わせをお腹の中でどぷどぷと混ぜ合わせる。うまく回らない頭で言葉を探しながらブンブンと首を縦にふって相槌をひたすらうった。楽しかった記憶がある。誰かと話しながらお酒を飲むというのは

          木曜、PM26:00

          人間だから超新星になれないだけで

          「不安なことがない」は「生きるのが楽しい」とイコールではないし、「生きていたくない」は「死にたい」とイコールではないし、「生んでくれたことへの感謝」と「生まれてよかった」は別物だし、大事にしたい人、悲しませたくない人の存在があっても、それとは無関係に「すっと消えてしまいたい」という感情はわいてくる。 難しい。言葉は、そのままだ。それを発した人だけが唯一確実な理解者で、たったひとつの意味しかない。慮ることも汲み取ろうと想像力を働かせることも結局は無意味だから、本意が完全に伝わ

          人間だから超新星になれないだけで

          コーヒーゼリー

          一人暮らしを始めて十年以上経ち、自分の世話を自分ですることに慣れを通り越して飽きてしまった。生活のどこに力を入れてどこの手を抜くかも判断ができなくて、全てがぞんざいになってしまっている。ふとした時に自分を大切にできない大元は生活の雑さにあるような気がする。キッチンの換気扇の下に椅子を置いて冷えたコーヒーゼリーを口に運びながらそんなことを考えた。数時間前にガラス容器に流し入れてつくったコーヒーゼリーは、三口目にはもう飽きてしまうような想像通りの味だった。ミルクをドバドバかけてぐ

          コーヒーゼリー

          ディミニッシュ・セブンス

          12歳で同じクラスの太郎を好きになった時、これが初恋かと思った。初恋は実らないと言うけれど、この恋は実るのだろうかと他人事みたいに考えていた。付き合いたいだとかそういう気もわかなかった。実らない、もしくは実ったとしてもいつかは枯れるものだ、そういうものだと太郎を好きになる前から私は知っていた気がしたのだ。夏休みが終わってから、太郎は隣の二組の女の子と付き合いだした。冬になる頃には、私は太郎のどこを好きになったのかすらはっきりと覚えていなかった。 15歳で塾が一緒だった二郎を

          ディミニッシュ・セブンス

          たなば、

          「名前を言ってはいけないあの人、」 「ドヴォルザークよね」 「いやヴォルデモート」 「それ」  缶チューハイ片手に過去のやりとりを思い出す。 夏並みに暑いのに、昼間は思い出したように土砂降りになる。まだ梅雨が明けない。湿度ひとつで感情と体調がぐらぐらしてしまうのは嘘みたいだけど本当の話。人間って案外もろい。  珍しく昼間に晴れていたから、天の川が見えるかなと思って窓を開けたけれど曇っていて何も見えなくて、窓の隙間から黒い羽虫がシュッと数匹入り込んできた。どんどんグイグイチ

          たなば、

          ハロー、ちっともエモくない29

           フリルレタスと食パンと栄養ドリンクが入ったエコバッグをぶら下げてダラダラと歩く。ああ、姿勢悪いな、歩き方ダサいな、とちょっと反省して姿勢を正し、颯爽と歩く真似をしてみる。玄関の近くで女の子を右腕に抱いた男性とすれ違う。こんにちは、と互いに頭を下げる。女の子の目の水分が多くてまんまるで吸い込まれてしまいそう。かわいいな。思わず口角が上がる。  二十九歳。たしか、私の母が、私を産んだ年齢。なにかの間違いでこの世界にハローしてもう二十九年。来年には三十歳。みそじ、って言うらしい

          ハロー、ちっともエモくない29