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日本のマンガ、ベトナムではどんな感じ?

街を歩いてる時、近くにメイド服姿の男の子たちが通りがかると「あ!今日はこの近くで日本に関係する何かのイベントがやってるな」と思います。不思議でしょう?

ジャパンフェスのような、日本企業が協賛した日本の食文化や旅行先を紹介するようなイベントがあると、特にアニメ関連の催しでなくても、なぜだかコスプレをした子達が集まって、会場で各々写真を撮っています。
ベトナムで日本語が話せる人に、日本語を勉強し始めたきっかけを聞くと、マンガやアニメ、ゲームといった日本発のメディアが好きになったからという理由が圧倒的に多く、「日本好き=日本のアニメ・マンガ好き」と見てほぼ良い感じです。
故にこういった日本っぽなイベントがあると、必然的にコスプレ会場になりがちです。
そしてなぜだか由来はわからないのですが、誰もがチャレンジしやすいコスプレなのか、男性が着用するメイド服というのがベトナムでは一般的らしく、どのようなコスプレ会場でもメイド男子は毎回何人も見かけるのです。

実際本屋さんに行ってみると、ベトナム語翻訳された日本のマンガが数多く並んでいます。
「名探偵コナン(作:青山剛昌)」や「ドラえもん(作:藤子・F ・不二雄)」、「鬼滅の刃(作:吾峠呼世晴)」といった、日本人でも海外で人気があるとすでに知っているようなものが並んでいることは、ベトナムに来る前から予想をしていましたが、「乱と灰色の世界(作:入江亜季)」といったマンガ好きの間では評価が高いけど、一般にはあまり知られていない作品や、「弟の夫(作:田亀源五郎)」といったLGBTをトピックにした作品も並んでいたのはちょっと意外でした。

書店に並ぶ「乱と灰色の世界」
書店にならぶ「弟の夫」

日本を含むアジア全体で昨今みられる現象ですが、BL作品は現在ベトナムの若い女性の間でとても人気です。書店で日本マンガコーナーのかなりのボリュームをBL作品が占めています。去年ベトナムでも公開されたBLマンガが原作の映画「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称チェリまほ)」も、劇場が満員になる盛況ぶりでした。
先日、ホーチミン中心地にある書店FAHASAにて、日本の出版社の協賛のもと、日本でも人気の「消えた初恋」の作者アルコ、「夢中さ、きみに」「カラオケ行こ!」が人気の作者和山やま(いずれもBL作品です)が来越してサイン会を開催していたのですが、こちらも早朝から整理券配布の列に多くの人が並んでいて、配布開始時間前に整理券がなくなっていました。

漫画本のように巻数が多く、店内のスペースを広く取るものは重版が難しいのか、一度売れたものの補充はなかなか入らないようで、過去にどのような作品が出版されていたのかを現行流通している本を書店でチェックするだけで知ることことは難しいのですが、たまたま入った古書店では、「タッチ/あだち充作」や「ご近所物語/矢沢あい作」、「じゃりン子チエ/はるき悦巳作」のようなクラシックタイトルも並んでいました。

「タッチ」ベトナム語版
「じゃりン子チエ」ベトナム語版

出版社で発行される本以外にも、インターネット上を検索してみると、ベトナム語翻訳されたさまざまなマンガがウェブ上で見つかる状態で、おそらくベトナムでは発行が厳しそうなガロ系の作家のものなども見つかりました。そういった意味でも、日本人が想像する以上に幅広いジャンルの漫画が翻訳され読まれているようです。現在、日本のマンガは紙だけでなく出版社が運営するウェブ上で連載されることも多くなっていますが、そういった媒体についても翻訳版が即日読まれている印象があります。

読まれる媒体が紙からウェブに移りつつある現在、紙の本自体が売れにくく、初版本にはCDの初回限定プレスのような特装版やおまけがついているものも多く、出版社側が苦心している様子も伝わります。フィジカルなメディアがファンアイテムとなりつつある状態なのは前回取り扱ったCD事情と近い感じで、この辺りの事情は日本でも似たような状況かもしれません…。

「鬼滅の刃」(右が特装版)
「鬼滅の刃」特装版付録のシール

日本のマンガに関するイベントもあります。
大きなものは日本企業の電通が主催するジャパンコミックフェスと呼ばれるイベントで、ホーチミンでは今年の6月に3日間に渡って行われました。
コロナ禍の間は日本からの出展よりも、ベトナムのアートマーケットや、ベトナムのバンドとのコラボが中心でしたが、今年は初めての有料チケットを発行しての開催で、今までで1番日本からの出展が多かったように見受けられました。

ジャパンコミックフェス会場

こちらはベトナムの国民食と言われるHaoHaoというラーメンを生み出した、日本でもお馴染みの食品会社エースコックのブース。
今回はハイキュー!とのコラボで、お得なセットを買うとハイキュー!グッズがもらえたり、フォトブースがありました。

エースコックの「ハイキュー」ブース
エースコック「ハイキュー」ブースの様子

こちらは今回のイベントのアートワークを手がけたイラストレーターのミツメさんのブース。
会期の間ブースでライブペインティングをしている様子がそばで見られました。
イラストカードやイラスト集が販売されていて、その場でサインも入れてもらえるとのことで、ベトナムのファンとの交流する様子が見られました。

ミツメ氏のブース
ライブペインティング中のミツメ氏

こちらはMINTOという会社の出していた進撃の巨人のフォトブース。
写真を撮ると進撃の巨人のポスターがもらえました。
MINTOはオリジナルキャラクターのグッズを販売したり、進撃の巨人をはじめ既存のキャラクターの版権管理をしている会社で、ベトナム発のコミケを計画中とのことでした。

MINTOブース

変わったところでは、きゃりーぱみゅぱみゅなどで知られる、日本のマネジメント事務所のASOBI SYSTEMのブースがありました。
最終日の夜にMUSIC NIGHTというイベントがあり、ASOBI SYSTEM所属の日本のDJ・ミュージシャンのRAMRIDERとTEMPRA KIDZのKarinがMUSIC NIGHTに参加していました。
アニメソングやゲーム音楽を中心のセットリストだったのですが、ベトナムのみんなが持ち寄ったペンライトやスティックバルーンを振りながら、踊ったり合唱で盛り上がっていたのがとても良かったです。

RAMRIDERのライブの様子
アソビシステムブースとTEMPURAKIDZ KARINさん

有料エリアの屋内ブースでは「SPY FAMILY」「鬼滅の刃」「呪術廻戦」などジャンプ系のアニメグッズのブースがありました。こちらは日本ではなく「MUSE木綿花」という台湾の会社でした。台湾・東南アジアにキャラクターグッズの流通事業をしている企業で、ベトナムでは日本のキャラクターを扱っているのが、必ずしも日本の企業では無いということをこの時初めて知りました。

木綿花ブース1
木綿花ブース2

出展ブースは版権使用の都合もあり、比較的ブームが定着していて、すでに完結済みの漫画やアニメの取り扱いが多かったのですが、コスプレを見ていると、中国のゲーム「原神」(ベトナムでもカフェチェーンでコラボキャンペーンを行っていたり大人気です)や、Netflixで配信中の作品「推しの子(原作:赤坂アカ/作画:横槍メンゴ)」など、現在進行形の新しい作品を好きな若者が多い印象でした。

「推しの子」アイに扮するコスプレイヤー

考えてみれば当然のことなのですが、海外のカルチャーを好きになったらなるべくリアルタイムで流行っているものを知りたいと思うし、どうにかして手に入れたい、読みたい、機会があるなら触れたいという気持ちは万国共通ですよね。そんな当たり前のことを当たり前だと気付かされました。海を超えて好きなものを追いかけている人の方が熱量も高く、インターネットや翻訳ツールの発展に伴い、そのスピードもどんどん早くなっている気がします。
逆にこちらのトレンドを見ることで、日本の書店の棚を見るより早く、本当に面白い新作マンガを知ることができるようになり、ベトナムに来てから私の中での日本のマンガブームが再来しています。
最近面白いマンガに出会えてない方は、一度海外で流行している日本のマンガについて調べてみると新しい発見があるかもしれません。

オオシマチズ
ベトナム・ホーチミン在住。おいしいものとおもしろいものを探して、キョロキョロしながら街をあちこち探索する日々を過ごしています。

Instagram:https://www.instagram.com/milkmilkmilkcoffee

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