【シーケンサーとショパンの思い出 ①】

 日本語は難しいですねぇ。このタイトルじゃ「『シーケンサーとショパン』の思い出」なのか「『シーケンサー』と『ショパンの思い出』」なのかわかりません(笑)。

 作曲家にとってシーケンサーとはいわゆる「作曲するソフト」のこと。有名なのはLogicなど。私は現在MOTU社の「Digital Performer」というシーケンサーソフトをMacで使っています。ここに辿り着くには変遷がありました。

 カプコン入社当時、最初にパソコンで作曲したのはMSX。皆さん、ご存じですか??MSXですよー。あの(笑)、MSXですよー!あれで作曲してました。MSXで作曲し(なんというソフトだったかわかりません;)、その後、NECのPC98+カミヤスタジオの「レクリエプラス」、同じくPC98+カミヤスタジオの「MYU」、そしてその次にようやく、Mac+MOTU(当時の名前はMarl of the Unicorn)の「Performer」(まだDigitalはつかない)、そして現在のMac+MOTUの「Digital Performer」と変わってきました。

 実は、この中で「MYU」というソフト、これが超優秀で、PC98が陰りを見せる時代でありながら私はこのソフトをどうしても手放せなかった。とにかくやりたいことへのアクセスが非常に素晴らしく、このソフトを取り上げられたら私は仕事できない、というほど全信頼を置いていたソフト。ところがこのソフトは非常にレアなソフトでおそらくその存在を知る人はわずかしかいないと思う。カプコンで使用していた人以外では2〜3人ぐらいしか会ったことがないぐらいです。

 そんなワタシ的にMYU全盛期の中(約20年前)、ロスにある『Parasite Eve』開発チームへサウンド開発視察として出張に行くことに。単なる出張だったので当然その間に曲を作る予定もなく、何の準備もしてなかったのですが…何故か現地の偉いアメリカ人から「ちょっとちょっとPVあるから曲つけてよ、2分ぐらい」と言われちゃいました。突然。もちろん英語で。

 いや、ちょっと待て、そんな急に言われても無理に決まっとんがな、と思ったけど、「できない」と言うのはなんか悔しい(やっぱり負けず嫌いだな笑)。なので、まぁすぐに全部揃うわけないだろ、なんて計算ずくで、「そうねぇ、MacとPerformerと音源と打ち込み用の鍵盤があればできなくはないけど」と返事した。日本語で(訳してもらった)。

 そしたらなんと、日本から出向組の企画の人たちが「あ、Macならあるよ」「あ、俺、Performer持ってるわ」とか言い出して(何でだよ、君たちの仕事は企画とちゃうんかい)、そしたらアメリカ人のプログラマーが「家にあるRolandのキーボード明日持ってくるよ」とか抜かしだして(だからなんでプログラマーが…)、そしたら別の人(日本人)が「じゃあ、足りないものはこれから楽器屋に買いに行こうか」とか言い放って。日本人たち、君たちは私の味方ちゃうんかい。とちょっと恨んだ。いや、もとは自分が撒いた種なんだけど…。

 結局ですね、翌日、私の歓迎会とか言いつつ社内でプチパーティが始まって、その歓迎されるはずの私が下のフロアで残勉ならぬ残作曲をしてですね、なんとか2分のPV曲を完成させました。それがPC98+「MYU」からMac+「Performer」へ変わる大きなきっかけになったのです。ついでにそのまま『Parasite Eve』の作曲担当になるというオマケ付き。曲作れ、と言ったアメリカ人に感謝すべき…ですよね?

 どこに「ショパン」の話が出てくるんじゃい!?というところで、次回に続きます。

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