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詩 夜旅


意味ありげに指をパチンと鳴らして
ほら、わたしを呼ぶから
午前一時に相応しい
艶やかな宵闇の緞帳を目の端でとらえて
子供の頃に読んだ古い本を開いた

分厚い表紙
黄ばんだ紙
湿ったにおい

ちいさく揺らぐ灯りの中でとつとつと

眠っていた言葉が動き出し
やがてよどみなく踊りだす物語は意味ありげに片まゆをあげる
宮廷道化師の差し金
姿を現してごらんなさい

ほら、ここ

行ったこともない異国の街で眠りにつく前の
侘しい灯が揺らぐ家々の窓を覗き込み
窓に映った物欲しげな顔は
まやかしを隠して首を振る

何が見えると思ったの?
楽しいの?

どうかしらね

ちいさな姿になったわたしの目はきっと
空の色が薄くなる前に
探し物をしていたことに気が付いたのだろう
それもきっと片まゆをあげた
宮廷道化師の差し金

寂しいの?

まさか

やがて東の空に目覚めが顔を出し
わたしは道化師を押し込めて
片まゆをあげながら子供の頃に読んだ古い本を

閉じた


前にも道化師を使って詩を書いた。そして画像の道化師は土曜絵画で描いたもの。

この道化師の絵

そのまま『麻呂』まで行ってもうたと言うオチ
だった。


#詩 #道化師 #土曜絵画に出したイラスト

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