石原みどり🍶奄美黒糖焼酎語り部

島酒取材・執筆/奄美群島と黒糖焼酎蔵めぐりの本『あまみの甘み あまみの香り』(西日本出…

石原みどり🍶奄美黒糖焼酎語り部

島酒取材・執筆/奄美群島と黒糖焼酎蔵めぐりの本『あまみの甘み あまみの香り』(西日本出版社)/鹿児島県酒造組合奄美支部認定 奄美黒糖焼酎語り部第7号 http://www.ishiharamidori.com/

最近の記事

トゥジたちの焼酎造り

かつて、家庭の焼酎造りは女性の仕事だった。明治以降の産業化に伴い、九州では黒瀬や阿多の男性杜氏集団が台頭したが、奄美の島々では現代まで多くの女性杜氏が活躍してきた。 奄美の焼酎蔵で最老舗の朝日酒造は、大正5年に喜界島で初代杜氏・喜禎ハツエ氏と夫により創業された。同年喜界島で石川酒造(現・喜界島酒造)を創業した石川すみ子氏は、酒造が免許制となり集落単位で焼酎造りを行う島民たちに、沖縄から移り住み技術を教えたと伝わる。 大正11年弥生の月に大島で弥生焼酎醸造所を創業した川崎タ

    • アオサを摘みながら

      徳之島から沖永良部島へ向かう予定だった船が欠航し、ポッカリと予定が空いてしまった、ある日の午後。雨上がりの浜でアオサ海苔を摘むことにした。 早春の海岸に降り立つと、潮の引いた岩場は一面緑色のアオサに覆われ、苔がむしたように見える。緑の浜辺でアオサ摘みに励む人々の姿は、奄美の春を感じさせる風物詩だ。 潮溜まりの淵にしゃがみ、水中で揺れるアオサに狙いを定め、一株ずつ手で引き抜いていく。海水に浸したザルの中で、砂や細かなゴミを洗い落とす。太陽に照らされて温まった潮の香りと、海藻

      • 焼酎の島

        「プチ…プチ…」焼酎蔵の片隅で囁くように泡立つ、飴色をしたもろみに近づくと、柑橘や花の蜜を思わせる不思議な香りがした。 2018年11月中旬、伊豆諸島の八丈島から9人乗りのヘリコプターに乗り、サツマイモの収穫時期を迎え、焼酎造りの始まった青ヶ島を訪ねた。 青ヶ島には女性たちが愛する男性のために代々醸してきた自家製焼酎がある。昭和59年に造り手たちが合資会社を設立し、焼酎を島の特産品として販売するようになった。現在は代替わりが進み、各家に伝わる伝統の製法と味を大切に、女性杜

        • 「長雲」の蔵

           私が初めて奄美大島龍郷町の山田酒造を訪ねたのは、2011年の初秋のことでした。光にあふれた記憶と、手元に残る、山田さん親子が半袖を着て写るその日の写真から、南国の残暑の日差しが強い汗ばむような日だったと思います。  その年、私は奄美の酒造組合で一年間の契約スタッフとして奄美黒糖焼酎の蔵を取材して記事を書く仕事にありつき、奄美群島の各地で黒糖焼酎造りに取り組む造り手さんたちの取材に取り掛かったところでした。  山田酒造の蔵がある大勝(おおがち)集落は、蔵の代表銘柄「あまみ