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【錦とあんず】初期プロット

ファイルを整理していたら、連載中の「錦とあんず」の初期プロットをみつけたので公開します。続きの15話も完成次第アップします。初期プロットの段階で、名前は違いますがユメが登場していました。杏野のキャラクターも少し違っています。もし興味のある方がいれば、読んでみてください。





杏野「今日は、晴れましたね~」
西澤「(掃除しながら)そうだね、昨日は雨降ってたしね」
杏野「やっぱり人間も光合成ってすると思うんですよね。太陽の光を浴びると、元気になるじゃないですか」
西澤「そうだね」
杏野「こうやって、おひさまに当たってると…なんだか幸せな気分になりますね」
西澤「…そうだね」
杏野「西澤さん、暑くない?」
西澤「暑くないよ 杏野は?」
杏野「ちょうどいいよ~」

女性客「あの…こちら、お手紙届けてくれるって聞いたんですけど…」
杏野「はい、そうですよ」
女性客「あの…死んだ人への手紙、なんですけど」
杏野「はい。ここは“あの世へのお手紙”をお預かりする窓口ですよ」
女性客「ほんとに…ほんとに届けてくれるんですか?」
杏野「お預かりしたお手紙は私が責任を持ってご本人にお届けしますよ」
女性客「……」
杏野「返事の手紙をもらってくることはできませんが…私がその人の様子を見てくることはできます」
女性客「あの…どうすれば」
杏野「お手紙、持ってきてます?」
女性客「はい」
杏野「じゃあ、宛先に、亡くなった場所と日にち・時間、生前の名前を書いてもらえますか?」
女性客「それだけで、届くんですか?」
杏野「はい。お届けします。送料は1000円です」
女性客、カバンから手紙を出し、亡くなった場所と日にち・時間、名前を書く。
女性客「あの…!」
杏野「はい」
女性客「手紙の中にも、書いてあるんですけど。私、この子の母親で…この子、1歳で亡くなってしまったんですけど。…この子の父親と別れることになって。今まで住んでいた家も処分することにしたので…もう、帰ってくる場所がなくなるんです」
杏野「そうですか」
女性客「ごめんなさいって…できることなら、あの世が楽しいのなら、もう帰ってこなくていいからって…私たち、親失格だったんです…あの子の帰ってくる場所まで無くしてしまった…」
杏野「わかりました。そう伝えておきます」
女性客「あの…」
杏野「様子、見てきてほしいんですよね。…そうですね、1週間後くらいにまたきてください。たぶん、お伝えできると思います。ただ…」
女性客「…」
杏野「あまり期待しないでくださいね」

西澤「準備できた?」
杏野「うん」
西澤「行ってらっしゃい」
杏野「行ってきます」

あの世(賽の河原)
杏野「ええっと…ホリタエミルさん…この辺かな」
駐在鬼「どうした杏野」
杏野「ねえ、このへんにホリタエミルさんはいる?」
駐在鬼「ああ、あそこにいるよ」
杏野「サンキュー     ねえ、あなたホリタエミルさん?」
エミル「はい」
杏野「あなたのお母さんからお手紙よ」
エミル「どうも」
杏野「しかし、相変わらずね。賽の河原」
エミル「ああ~…まあ、でもいいんじゃないですか? 寒くないし」
杏野「そうね。私もしばらくここにいたけど、静かで落ち着くわね」
エミル「手紙」
杏野「ああ、そうそう。はい、どうぞ」
エミル「どうも」
杏野「ほんとは手紙届けて終わりなんだけど。あなたのお母さん、離婚して家を手放すから、あなたの帰ってくる場所がなくなるって。もしあの世の方が楽しいなら、もう帰ってこなくていいって」
エミル「そう」
杏野「なんか反論あったら聞いておくけど?」
エミル「うーん…そうだな。あの人たち、勝手なのよ。あなたのことを一番に思っている~とか言って、自分の幸せ最優先でしょう。別にいいのよ、私はもう死んだのだし。近いうち魂は転生すると思うから。でも、自分が幸せになれない理由を、私が死んだからだと思い込んでいるのよ。人のせいにしないで欲しい」
杏野「そうよね。あなたが死のうは生きようが、あなたの母親の幸福とは別の問題よね」
エミル「いつまでも不幸面して私のせいにされるのはごめんだわ」
杏野「OK。じゃあ、そう伝えておくわ」
エミル「待って」
杏野「?」
エミル「そんなこと、あなたが言ったって、きっとあの人信用しないのよ。自分勝手に解釈するわ」
杏野「じゃあ、どうする?」
エミル「私ことは忘れて、さようなら、と伝えて」
杏野「いいの?」
エミル「どうせ信じないわ」
杏野「わかった」
エミル「よい週末を」
杏野「よい週末を」

西澤「おかえり」
杏野「ただいま、西澤さん」
西澤「どうだった?」
杏野「うーん、いつもどおりかな」

女性客「あの・・・すいません」
杏野「ああ、お待ちしていましたよ」
女性客「届けてもらえましたか?」
杏野「ええ、お届けしました」
女性客「どんな様子でしたか?」
杏野「そうですね・・・元気、でしたよ?とくに、なんの問題もなく」
女性客「そう・・・ですか」
杏野「お話されていた件、お伝えしました」
女性客「どう・・・でした?」
杏野「私のことは忘れて、さようなら。」
女性客「え?」
杏野「私のことは忘れて、さようなら、だそうです。意味は、まあ、あなたも大人だからわかりますよね」
女性客「うちの子が?」
杏野「はい」
女性客「・・・そんな」
杏野「・・・・・・。まあ、ここからは私の個人的見解なので、聞き流してもらって構わないんですけど。私は正直うらやましいですよ。ちゃんと親に葬ってもらって。あの世に逝っても心配してもらって。でも、親が幸せになれないのを娘の死のせいにしてたら、いつまでも同じところをぐるぐる回ってるだけなんじゃないですかね」
女性客「・・・!!!」
杏野「死ぬのも、嫁に行くのも、海外に移住するのも、そんなに違わないんですよ。娘が死んだから私は不幸だ・・・って、いつまでもそこにぶら下がっていたら、娘はどう思うでしょうね・・・」
女性客「あなたに・・・あなたに何がわかるの・・・? 勝手なこと言わないで!」
杏野「・・・だから、私にはわからないんですよ。私は親に捨てられた子なんで」
西澤「・・・杏野、もういいよ。すいません。お手紙は確かにお届けしました。お引き取り願えますか?」
女性客「あんたに・・・あんたに私の気持ちはわからないのよ!娘を亡くした親の気持ちなんて!」
杏野「わかりませんよ。でも、娘に悪いと思ってるなら、自分の力で幸せになってみたらどうですか?娘の死を言い訳に使わないで」
西澤「杏野!」
女性客「・・・わかりました。どうもありがとう。さようなら」
杏野「さようなら」
西澤「・・・・・・」

西澤「杏野。ダメだよ、私情を挟んじゃ」
杏野「ダメってことはないでしょう? 死者の考えを伝えるのだって、私たちの仕事じゃない」
西澤「伝え方ってのがあるだろう?」
杏野「いいのよ。ああいう人には、ちょっとパンチの効いた言葉を使わないと、いつまでも同じところぐるぐる回ってんだから」
西澤「・・・・・・杏野」
杏野「私、あの子の気持ちわかるわ」
西澤「僕も・・・わかるさ。でも、あの親の気持ちもわかる。生きてる者は、みんな未熟なんだ」


「錦とあんず」は、残り15話と16話で終わります。その後、電子書籍で販売するものと同人誌で販売するもの用に書き下ろしを描きます。真のエンディングは17話ですが、無料公開版は16話で終わります。続きを楽しみにしていらっしゃる方は、同人誌の完成をお待ちくださいm(_ _)m どうぞ、よろしくお願いします。

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