忘れらない音

今はもう聞けなくなった音がある


それは、町工場の機械音


私の実家は、小さい町工場をしていた


毎日、毎日、同じ音でスタートする


「ギュウ〜ン」

「カラカラ〜」

「ギーギー」


年季の入った機械たちが音を奏でる

まるで、朝の挨拶のように


「ギーギー」

「カラカラ」


おじいちゃんがネジを作っている


お父さんが図面を書いている

シャーシャーと定規と共にボールペンが

まるで生き物の様に動いてる


職人さんたちが、おじいちゃんに指示を仰いでいる

ワーワーと大きな声で

ああでもない、こうでもないとみんなで話している

もう、二度と聞くことが出来ない

懐かしい音


今は、私の記憶の中にしか、存在していない音


だが、その音は確かに、そこにあったのだ

もう、聞けない音


出先で町工場を見ると私は、思い出さずにはいられない

懐かしく、愛おしく感じる音


ツライ朝も、嬉しい朝も、悲しい朝も

どんな時も


その音は励ましてくれた


その音は応援してくれた


その音が、私を目覚めさしてくれていたのだ


もう、二度と聞けない音


誰にも伝えられない音が

今は、私だけの音になって

これからも、私の中で奏でていくのだろう


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