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本紹介

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芥川賞を取った作品は、読んでおこうと思ってしまう。まんまとやられている。なんだか消化不良というか、もやもやが止まらない。
人生の最後に読んだ小説がコレになったらイヤだな…とか思ってしまった。

ワイルドな先輩方

ワイルドな先輩方

1年前に書いていた感想文。
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60代半ばから女性ひとり森に暮らした記録、内藤里永子著『限りなく繊細でワイルドな森の生活』。
最初とっつきにくかった文章が、だんだん染み入るようになってきて、ときどき泣きながら溜息をつきながら読みました。
去年読んだ平野恵理子著『五十八歳 山の家で猫と暮らす』より具体的ではなかったけど、心象がグイグイくる。
圧倒的な孤独。だけど沢山の生に囲まれ

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お呼ばれ本

お呼ばれ本

「社会生活者としての外観を保ったまま、堂々と遁世しよう。」
常日頃憧れているその状態。高村友也著『僕はなぜ小屋で暮らすようになったか: 生と死と哲学を巡って』の中の一文。
この本には呼ばれた。自分独自の用語なのだが、「お呼ばれ本」という分野がある。これはそういう本。
新刊案内を見ていてどうにも気になった本があった。『存在消滅: 死の恐怖をめぐる哲学エッセイ』。本屋で立ち読みしてみようと思ったが見つ

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歯医者にて

歯医者にて

歯医者の治療椅子に座ると、道を挟んだ向こう側に秀和のマンションが見える。
今日の青空は秀和の水色の屋根との境目がわからない水色であった。

治療椅子が倒され目を瞑って口を開けるとあとはされるがままの無力な肉体。
なぜか歯の治療中は主に宇宙の始まりとか神などの壮大な哲学的なことが頭を占める。でも今日は人の営みの健気さなどについて思い、涙が一筋ツーっと出たりして、「あ、いえ、痛いから泣いているのではな

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若い人たちの平和生活を祈りたい

若い人たちの平和生活を祈りたい

町屋良平×ショパンコンクールかー、おもしろそう!と迷わず手に取った『ショパンゾンビ・コンテスタント』。意外にも「ヌメリ」ゼロ!逆にそれ故に相当にいやらしい女子描写がリアル。

ピアノコンクールが主軸の話なので、否が応でも『蜜蜂と遠雷』がチラついてしまう。あちらはどうにも昔の少女マンガっぽくて最初読むのをやめそうになりつつもそこはやはり恩田陸さんの力量で結局グイグイ引き込まれて泣いたりしたが、こちら

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私たちがしていることを

カズオ イシグロ『クララとお日さま』読了。
ジワジワと心が苦しい。しばらくは悲しみの澱が心の壁に貼り付いて消化しきれないだろう。
イシグロ作品のなかでは『わたしを離さないで』感が強かった。
「献身」という言葉がずっと浮かんでいたが、それが自分の中で「献心」と書き換えられていった。
人間が動物や子どもに対して施している様々なことや、ちょっと先の未来を見せつけられているような気がした。
いいも悪いもな

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久しぶりに

久しぶりに

久しぶりのお腹いっぱい感。
何度も途中で読めなくなって、放っておいたオーウェルの『一九八四年』をやっと読了。カバーもどこかへ行ってしまったくらい長期間あっちこっちへ携行してた。

終盤の、オブライエンの「権力」についての語りには、気づかされることが多かった。いろんなことが腑に落ちた。
大きな声では言えないが、特定信仰に溶け込むことによって得られる感覚を的確に言い表しているなぁ、と感心

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買ったのは黄金色の火曜日でした

買ったのは黄金色の火曜日でした

家にこもることの効用は、とにかくよく本を読むということ。週に3冊くらい読んでいる。傍に猫。沈潜力倍増。
みうらじゅん氏が提唱していた「グレート余生」という言葉が浮かびます。
最近は「やっててくれてありがとう!」の気持ちを込めて「やってる本屋」までテクテク散歩しては本を買う。
一昨日衝動買いしたのがリチャード・ブローティガン著、藤本和子訳『西瓜糖の日々』(河出文庫)。

先週末のオンライン飲み会でビ

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考えさせられすぎる

考えさせられすぎる

『春にして君を離れ』(早川書房) 読了。著者はアガサ・クリスティーですが、発表当時は身分を隠しメアリ・ウェストマコット名義で出版されています。アガサ・クリスティー名義で出すと「なんじゃこりゃ〜!」と本をぶん投げる人が続出する懸念があったのですね。確かに今でも「ちょ、なにこれ!」という人もいるかも。

ミステリー成分がゼロ、中年女がモヤモヤモヤモヤウダウダウダウダ考えまくるだけの(笑)、そして発

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魔女のともだち

魔女のともだち

心が疲れているときは児童書を読むことにしている。『クローディアの秘密』でおなじみカニグズバーグの 『魔女ジェニファとわたし』(E.L. Konigsburg 著, 松永 ふみ子 訳,岩波書店)を読んだ。

↑ お値段間違ってます

「ぼっち上等。私はあんたらフツーの人間とは違う魔女なんだし」みたいに超然としているジェニファ(実は私も高校生くらいまでこんなスタンスで生きていました笑)。
そんなジ

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デストピア小説なのだろうか

デストピア小説なのだろうか

胸ぐらをつかまれて揺さぶられたようなショック。
「あなたが生きているのはこんな世界ではありませんか?」って言われて「え、ああ、まあそのうちにそんな感じになるのかなあ、あははは、はは…」と力なく笑うのかオレ。

多和田葉子著『献灯使』(講談社文庫)を読みました。
いま、いまのこのときに読んで余計にグラッときました。

それにしても言葉の使い手としての力量がすごいですね。
実は多和田作品を初めて読みま

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ハッシュタグ読書会

ハッシュタグ読書会

Moiの岩間さん主催、第1回「ハッシュタグ読書会」@ツイッターが開催されます。
今回のお題はトーベ・ヤンソン著、下村 隆一 訳『ムーミン谷の彗星』。
ムーミンシリーズは穴が開くほど読み、息子が幼い頃にはせがまれて寝る前に繰り返し読み、雨の日はパペットアニメDVDBOX(最初にリリースされた岸田今日子の語り版)で子育てしたようなものです。その甲斐あってか(?)、大学生になった息子は小説家志望…。

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逃避先はやかまし村

逃避先はやかまし村

多少の差はあれども、誰しもメンタル参ってますよね。
私は、「自分が悩むべきではない領域のこと」も悩んでしまうタチで、五輪開催か延期か中止かを検討している人たち及び関連イベントの主催者ならびに出場選手のことを考えると泣きそうになります。
そして、医療現場で命懸けで働いている人々や死にゆく人々のこと、その関係者、マスクやトイレットペーパーなどの買い占め及び転売、朝イチで並ぶ高齢者などのことも考えると胸

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