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お呼ばれ本

「社会生活者としての外観を保ったまま、堂々と遁世しよう。」
常日頃憧れているその状態。高村友也著『僕はなぜ小屋で暮らすようになったか: 生と死と哲学を巡って』の中の一文。
この本には呼ばれた。自分独自の用語なのだが、「お呼ばれ本」という分野がある。これはそういう本。
新刊案内を見ていてどうにも気になった本があった。『存在消滅: 死の恐怖をめぐる哲学エッセイ』。本屋で立ち読みしてみようと思ったが見つけられず、まずは同じ著者の過去本を読んでみようと思い図書館で借りた。
自分が幼少の時から現在まで脳内で繰り広げていた思考をなぞるような読書であった。的確な文章化に感謝しながら一気読み。自分がやりたくてやってこなかったことを実際にやっている人のことを読み、羨望と希望が。
しかもこの著者は私の愛用図書館の愛用閲覧席を利用していたことが書かれていて、「ああー、もしかしたら隣にいたのかもなー」などと思う。
昼休みに弁当を買いに行く道すがら、街路の植え込みにいい感じの空間があると目が吸い寄せられたりする、社会適合者のフリが上手いだけの中年女に降ってきた恩寵的一冊。