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簡単操作で音に存在感を与える魔法のツール

「簡単な操作で音に存在感を与える魔法のツールです」
この誘い文句に弱い。この手のツールは、
1:コンプ=パンチ感を出す。立ち上がり直後の音を強める。
2:サチュレーション=倍音を増やし、音が抜けてくる。
3:トランジェント=アタックとリリースの制御で、立ち上がりを強調。
の3種類の複合プラグインだ。それぞれ、単独のプラグインは所有しているが、コンプはローとアタックを維持したまま、もっちりさせたい時、適切なパラメーターにたどり着くのに手間。サチュレーションは、音が乾きがち。トランジェントシェイパーでは、もっちりさせるのが困難だ。

つまり、1~3で難しいのは「音を大きく変化させずに、もっちりさせる」ということ。EQ+コンプで詰めていけば可能なのだろうが、目的の音に最短で近づける「簡単操作で存在感」ツールがあるなら、こんなありがたいことはない。巷で人気のツール4つをデモして「もっちり」できるか、試してガッテン。

ドラムループをもっちり

*ポイントはスネアがもっちりするか、その際にキックとハイハットに違和感が出ないか。

Xfer Records OTT

EDM系アーティスト御用達のフリープラグイン。デフォルトで立ち上げると、めちゃくちゃパツパツな音。ただ、流石にシャリシャリするので、Depthを30%にすると、ローが聴こえるようになったがハイが強い。Timeはリリース、通常コンプ同様の動作で、In&OutのGainはオートゲインではなく、リミッターも入っていないので、かかり具合による音量差が大きい。中央部のスレッショルド&簡易EQで、調整するとハイが強いのが軽減される。下の2つのノブはUPWARD(スレッショルドより下がった音を、どの程度持ち上げるか)とDOWNWARD(スレッショルドを超えた音をコントロール)。UPWARDがこのプラグインの肝か。ただし、マルチバンドコンプレッサーの使いやすいやつで、簡単操作ではない。残念。

Sonnox Inflator

InputとOutputの他には、2つのフェーダーとボタン3つという潔い兄貴。EFFECTのフェーダーを上げていくと、ゲインを維持したまま、音の存在感が増す。CURVEフェーダーは、音圧のコントロール。上げるほど音圧が増す。CLIP 0dBでリミッティングできるのはありがたい。音の変化はほとんどないので、もっちり目的ではないが、「もう少し、この音大きくしたいなぁ」という時の夢ツールだ。操作は簡単。

BABY AUDIO I Heart NY

簡単コントロールのパラレルコンプツール。SPANKノブはコンプのかかり具合、中央のフェーダーでMIX。SOLOボタンを押すと、インサート動作。いわゆるコンプのパツンとした感じが、ノブ2つとスライダーで調整可能だが、もっちりではない。そもそも、もっちりの定義とはいかに。

Beatskillz  Slam2

8種類のノブで音をコントロールするプラグイン。
mud cut=不要な低域除去。やり過ぎるとやせる。
thump=低域を持ち上げているように聴こえる。
BOOM=サブハーモニクスの模様。もっちりする。
HEAT=サチュレーション。H1とH2で、H2の方がハイ寄り。
AIRZ=高音域のある帯域を持ち上げる。
Crush=Inflator的効果が、汚くかかる感じ。
POP=コンプのパッツン効果。深くかけると音は引っ込む。パッツン具合はI Heart NYのキレが悪い感じ。
WIDTH=ステレオイメージャー。モノラル方向も可。
ツボを抑えており、それぞれがワンノブなので、悩まず使える。

ベースのムッチリ

Slam2
Boomでもちっとさせられる。

I Heart NY
ダイナミクスをそろえることができる。音を引っ込ませることができる。

Inflator
音を少し前に持ってくることができる。微細なコントロール。

シンセの押し出し感

Slam2
AIRZとHEATが効く。

Inflator
音を変えずに音を接近させる神業。このプラグインの高評価の所以か。

I Heart NY
アタックが不明瞭な音で効果を出すのは難しい。

まとめ

Xfer Records OTTは、簡易的マルチバンドコンプレッサーだが、マルチバンドコンプ自体が簡易的ではない。ちょっと高域がうるさく聴こえ、派手な音。自分にはあまり合わなかった。

I Heart NYは、コンプのパンチ感に特化したプラグイン。使い所が限定されるが、パンチといえばNYという専門家感。ただ、サンプルベースで考えると、スネアの音色はパンチ感で選んでいる気もするので、再調整の機会がないような…

inflatorは、多くの人が高い評価をしているプラグインだったが、サチュレーション系は、複数所持しているので、いらないと思っていた。しかし、これは、ゲインや音を変えずに音を手前に持ってくることができる。それがワンフェーダーで可能という。

Slam2は、8種類のノブで簡単に音をコントロールできる。各ノブのイメージによる名付けは、どうかと思うが、機材的先入観を持たずに使えるのは良いと考えを改めた。下品に仕上げたいトラック(自分の場合は、曲の半分程度)に、重宝しそう。ただ、この手の処理は積み重なると汚れるので注意が必要。WavesのInfected mushroom pusher等のオールインワンは、プラグイン趣味の敵として、導入を避けていたが、一つ持っておくと、圧倒的な時短につながると痛感した。

Waves Infected mushroom pusher

ということで、デモしてみたのだが、OTTと同じでハイの感じが得意ではない音。「EDMに最適なやつ」とはちょっと相性が悪いのかもしれない。

Inflatorは、かなり衝撃を受けたが、手持ちのsoftube harmonicsで同じ効果が出るか、検証してみたい。自分の「もっちり」=サブハーモニクスということが、分かったが、サブハーモニクス専用プラグインは少ない。思い浮かぶのは、Leapwing AudioのRootOneだが、28000円という贅沢品。Slam2がセールで、1200円で売っていたので、期間ギリギリだったこともあり導入した(6月もセールやってる…)。多用しすぎないよう気を付けながら使いたい。


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