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midunoが考えるオススメのフィールド・レコーディング用機材(2021年10月/更新:2023年4月)

フィールド・レコーディングについてはその対象が無限に考えられるということもあり専門書等も多くない(しかも新しいものが無い)ように思います。
使う機材、録り方も人それぞれだと思いますので「私が使ってみて良かった機材」ということでリストアップしたいと思います。
音源も合わせて参考にしていただけましたら幸いです。
なお下記のリストは予告なく入れ替わります。どうぞご了承ください。


①-1 ハンディ・レコーダー ZOOM H2n

まずは初心者の方にもオススメZOOM H2n。
発売開始から結構時間が経っているモデルですが(2021/10現在)現行機種、軽量かつタフ、バッテリーの保ちも素晴らしいです。
私も5年ほど使用していましたがトラブルが起きた事は一度もないです。
PC/Macとの接続が最近ではあまり見かけなくなったminiUSBという点にご注意ください。また最近のレコーダーによくあるBluetoothでコントロールといった機能はありません(別売り有線リモコン有り)。
記録メディアはSDHC(32GBまで)が対応しているようです。

内蔵マイクは若干音の密度薄めな感じもしますが癖が無くて使いやすいです。XYステレオまたはMSステレオ、そして何とAmbisonics B-Formatでの収録(ただしZ軸は無音)も一応できます。
このレコーダーはプラグインパワー対応の外付けマイクで真価を発揮します。

<参考音源> ZOOM H2n内蔵XYステレオマイクで収録。


①-2 ウインドスクリーン ZOOM WSU‑1

ZOOM純正のウィンドスクリーンです。純正スポンジ風防の上から被せて使います。
これが無いとマイクが風に吹かれてボコボコというノイズが録れてしまいます。フィールド・レコーディングでは必須です。
風に対する効果は控えめ。


①-3 イヤフォン型バイノーラル・マイク Adphox BME-200

プラグインパワー方式のイヤフォン型バイノーラル・マイクです。
マイクで拾っている音を同時にモニター出来るので失敗が非常に少ないです。モニター用イヤフォンの音が籠もっていますがマイク自体はかなりリアルな音を拾ってくれているのでその点は心配要りません。
街の音を拾う時も収録している様子が目立ちにくい(恥ずかしくない)のでオススメです。

<参考音源>Adphox BME-200で収録。


①-4 無指向性ラベリア・マイク

プラグインパワー方式の安価なラベリア・マイク(モノラル)です。
声を拾う目的で設計されているらしく中域が強いバランスです。
何と言っても安価なので至近距離で収録したい音源(水回り等)に思い切ったセッティングで臨むことができます。※現在販売中止


①-4-2 ステレオ・ミニ・プラグ⇔モノラル・ミニ・ジャック×2 変換ケーブル

プラグインパワー方式のモノラル・マイクを2つ使ってステレオ収録する際に便利です。

<参考音源>OKWINT×2で収録。


②-1 ハンディ・レコーダー TASCAM Portacapture X8

32bit Floatで録れるハンディ・レコーダーです。XLRコンボ入力があるのがいいですね。ハイ・インピーダンスのパッシブ・マイクがそのまま接続できます。またマイク入力端子が4つ付いているので1次Ambisonicsマイクも繋げます(※4ch同時にゲインを調整できる機能がほしいです。>TASCAM様)
あと内蔵マイクが意外に良くてちょうどいい感じの指向性の狭さと質感の良さを備えています。風に弱い点だけ玉にキズという感じです。

特筆すべきはスマホのアプリ、非常にスマートに接続ができる上に録音開始後にもペアリングが出来るので急いでいる時にとても助かります(※要オプションBluetoothアダプタ)。


DAISO Nintendo Switch用ケース

Portacapture X8用に流用できます。


②-2 ウインドスクリーン Bubblebee BBI-WKSE-X8-AB

風に弱いX8ですがウインドスクリーンで改善されます。
効果の強さは「Bubblebee  BBI-WKSE-X8-AB」 >「TASCAM WS-86」>「TASCAM WS-11」という感じです。
吹かれノイズの帯域が低い音域にシフトします。ハイパス・フィルターと合わせることでかなり吹かれノイズを目立たなくすることができます。


②-3 コンタクト・マイク Verdant Weapons Contact Microphones(仮)

一般的なマイクとは異なり対象物の振動を直接拾うマイクです。ノイズの多い環境では有利ですが空気感や奥行きに欠けた音になる点は注意が必要です。
防水仕様ですがハイドロフォンではありませんので水中の音は録れません。

<参考音源> Verdant Weapons Contact Microphones ×2で収録。


コンタクトマイク KORG CM-300

クリップ式で取り付けが楽なこちらもオススメ。


②-4 ハイドロフォン JrF microphones STANDARD HYDROPHONE(仮)

ロンドン在住のサウンド・アーティストの方が手作りしているという、水中の音が録れるマイク(ハイドロフォン)です。ハイドロフォンとしてはかなり安い部類に入るかと思います。£55≒¥9,000弱
作りとしては薄い金属膜にコンタクト・マイクを貼り付けてラバー・コーティングしてあるという感じでしょうか?空き缶のような共振音が特徴的です。水流が直接当たるような場所では面白い音が録れるかと思います。

<参考音源>JrF microphones STANDARD HYDROPHONE×2で収録。

ちょっと特徴的な音がしますのでもう少し癖の少ないマイクの方が使いやすいかも知れません。

ハイドロフォン AQUARIAN AUDIO H2A-XLR Hydrophone


②-5 インピーダンス変換器 HOSA MIT-129

レコーダーに直接ハイ・インピーダンスのマイク(フォーンプラグ)をつないでも録音はできますが、より安定感のある音にしたい場合はインピーダンス変換器があると良いでしょう。

<参考音源> マイク直結とDI経由の聴き比べ

アクティブタイプのDIを使った方がより安定感が出ると思いますが外に持ってゆくには少々重いので‥


②-6 マイク内蔵XLRプラグ CURRENT CSP906

XLRオスのプラグと一体型になっている無指向性マイクです。無指向性マイクの特長ともなりますが意外と吹かれにも強いです。
極限まで荷物を減らしたい時にも役立ちます。コンデンサーマイクなのでファンタム電源が必要です。

<参考音源>CURRENT CSP906(ABステレオ)で収録。


②-7 モノラルマイクロフォン audio-technica AT9912(仮)

プラグインパワー対応の単一指向性マイクです。X8付属のマイクに比べると湿気と吹かれに強いので挿し替えて使っています。角度が変えられるのが良いです。レンジの広さはほどほど。


③-1 ハンディ・レコーダー H3-VR

Ambisonics対応のレコーダーです。4つのマイクで周囲360°の収録を行えます。
とりあえず全方向の音を収録しておいて後からステレオやバイノーラルに変換するという使い方ができます。そのため失敗が少ないレコーダーと言えるでしょう。
Ambisonicsマイクとしては恐らく最安の部類かな、というところで若干ヒスノイズが多い感じもしますが通常の使用方法であればさほど気にならない範囲かと思います。
どちらかというとオフマイクで使うよりはオンマイク気味で使った方がこのレコーダーの良さを活かせると思います。
バイノーラル変換に関しては付属のソフトではなくNovoNotes 3DXを使うことを強くおすすめします。ソフトウェア関係は別ページで簡単な紹介をしていますので、よろしければそちらもご覧ください。

<参考音源> ZOOM H3-VRで収録。

ZOOM VRH-8

レコーダーとマイクが別になっているZOOM VRH-8(とZOOM H8の組み合わせ)も使いやすくて良かったです。

<参考音源> H8+VRH-8で収録。


③-2 ウインドジャマー RYCOTE WJMNT4

RODE NT4用のウインドジャマーですがZOOM H3-VRにも使えます。
純正ウレタン風防の上から被せるとかなり風防効果が大きいです。


④-1 フィールド・レコーダー ZOOM F6

32bit Float対応のフィールド・レコーダーです。レベルの調整が(ほぼ)不要なのはありがたいですね。あとチャンネル数の割には異様に軽量。
ハンディ・レコーダーと違いマイクは別途用意する必要があります。
プラグインパワーに非対応なので後述の変換アダプタを使ったりします。

電源は単3電池×4本を使用しますがそれだけではあっという間にバッテリーが消耗するのでL型バッテリーの併用をお勧めします。


④-2 無指向性ステレオ・マイク SONY ECM-AC1

プラグインパワー方式の無指向性測定用マイクです。測定用だけに広い周波数レンジの音を拾うことができます。癖のない音で意外と悪くないです。
マイクが上を向いていることもあってか吹かれにもそこそこ強いです。


④-2-2 ステレオ・ミニ・ジャック⇔モノラル・ミニ・プラグ×2 変換ケーブル

マイク出力がステレオ・ミニ・プラグの場合、モノラル・ミニ・プラグ×2に変換するのに使います。


④-2-3 モノラル・ミニ・ジャック⇔XLRオス 変換アダプタ

48Vのファンタム電源をプラグインパワーで使える電圧まで落としてくれる便利なアダプタです。
入力はモノラル・ミニ・ジャックです。モノラルなのでステレオで使う場合は2個必要です。


④-3 MSステレオ・ショットガン・マイク SENNHEISER MKH 418-S

ショットガン・マイクの定番として有名なMKH 416のMSステレオ・バージョンです。Midカプセルが同じ仕様なのでモノラルで使用すると416と同様に使えます。
やや高価なので簡単にお勧めはできませんが音質と耐久性を兼ね備えていて高いクォリティでの収録が出来るマイクとして信頼できる一品です。
音量が小さい音源に対してはSideのS/Nが気になるかも知れません。
Sideはマイクに対して横方向の音を拾いますので遠くの音をステレオで録りたい場合はショットガンマイク2本で収録した方が良いです。
ステレオ化に際してはMSデコーダが必要となりますのでご注意ください。

<参考音源>SENNHEISER MKH 418-S + SONY ECM-AC1で収録。


④-3-2  フルウインドシールドシステム RYCOTE Modular Windshield WS 4 Kit (XLR-5F)

マイクに付属しているようなウレタン素材の風防では「多少マシ」という程度で、風がビュービューと吹きつけるような場所ではほとんど効果がありません。そんな時はRYCOTEのウインドシールド(通称:カゴ)が威力を発揮します。

ウレタン風防+カゴ風防+ファー風防の組み合わせであれば扇風機程度の風であれば全く問題なく収録できるようになります。決して安価ではありませんが価格相応の働きはしてくれます。特に失敗が許されないプロの現場では必須アイテムかと思います。

<参考音源>SENNHEISER MKH418-S + RYCOTE Modular Windshield WS 4 Kitを使用。


④-4 Ambisonicsマイクロフォン RODE NT-SF1

ZOOM H3-VRの上位的に使っているAmbisonicsマイクです。H3-VRに比べると鋭い音の立ち上がりまで収録できる印象です。また遠くの音までよく拾えますが、逆に言えば不要な音まで拾ってしまうので録った後の処理が重要になります。

※収録時にマイクのポジションをメモしておかないと後処理が面倒なことになります‥


<参考音源> RODE NT-SF1で収録。


⑤-1 インイヤーモニター ワイヤレスシステム

レコーダーのライン出力を2.4GHzワイヤレス伝送で飛ばしてモニタリングする用途で使っています。マイクから離れることで衣擦れなどのノイズを防ぐことができます。
Bluetoothで飛ばすのとは異なり遅延も少なく良い感じです。
ただしレコーダー本体に近づけると誘導ノイズ(?)を拾うのでできるだけ離し気味に使いましょう。
レコーダーがノイズを拾ってしまってダメです。他のを使いましょう。


⑤-2 カナル型有線イヤフォン final E500

ちゃんとしたモニター用にはヘッドフォンを使うのをオススメしますが、荷物が増えるのとよく忘れるのとで予備に持っておくと安心です。
特にモニター向きの音質という訳ではありませんので悪しからず。


⑥タイムコード・システム ATOMOS UltraSync BLUE

Bluetooth経由でタイムコードを同期させるものです。複数台のレコーダー、ビデオカメラを使う時もケーブル無しで全ての機器がサブフレーム単位の精度で同期するため後の編集がかなり楽になります。
ZOOM F6(BTA-1)、TASCAM Portacapture X8(AK-BT1)、MAVIS Pro Camera(iPhone)で使用しましたが完全に同期しました。

iPhone用カメラアプリ
タイムコードの同期ができます。


【おまけ】THE NOMINEES+(完璧版)/ miduno

宜しければ私が配信しているアルバムも聴いてみてください。

Podcastもやってます。

【おまけ②】sound-scape 音風景 / miduno


)新しいものが無いと言っていたところ、出ました(2022年4月)。

「フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う」著:柳沢英輔


柳沢さんの機材紹介の方が詳しいと思いますのでリンク貼っておきます(とここまで書いておいて最初からそれで良かったような気もする‥)。


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