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【2019参院選】【お金は嘘をつかない】予算でわかる政府の方針 -後編-

 この記事は、「【お金は嘘をつかない】予算でわかる政府の方針 -前編-」に続く記事です。前編も併せてご覧下さい。

後編の本記事でも、予算項目の解説をしていきます!(1)


2. ③社会保障関係費

 続いて、社会保障関係費について見ていきましょう。
 社会保障とは、” 私たちが安心して生活していくために必要な「医療」、「年金」、「福祉」、「介護」、「生活保護」などの公的サービス(3)”を指します。

 現在の社会保障関係費の内訳は以下の通りです。


・年金給付費:厚生年金、国民年金、福祉年金といった公的年金制度にまつわる費用。
・医療給付費:国民皆保険制度に基づく医療保険の適用にまつわる費用。
・介護給付費:介護保険制度に基づく要介護者が種々のサービスを受けるための費用(viii)。
・少子化対策費:少子化対策基本法に基づく、子どもを産み育てやすい環境をつくるための費用(ix)。
・生活扶助等社会福祉費:憲法25条(生存権の保護)に基づき生活困窮者を保護するための費用(x)。
このほか、保健衛生対策費、雇用労災対策費が含まれます。

 2015年以前は上記とは異なる内訳が定義されていました。変わった背景には、社会保障改革推進法に基づく社会保障・税一体改革があります。財源である消費税が、社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)それぞれにどれだけ使われるかを明確にするため、現在の内訳となりました。統計を見る際は、定義の変化にお気をつけください(xi)。

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 それでは社会保障関係費の変遷をみていきましょう。上のグラフから、この6年間増え続けていることがわかります。その背景には何が起こっているのでしょうか?

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 社会保障関係費は自然増が見込まれる予算です。自然増は、⾼齢化とその他要因(医療の⾼度化による増加分等)の2つによって起こります。現在の推計では、毎年6,000億円ほどの自然増が見込まれていますが、政府はこれを歳出改革努力によって抑えようとしています。その歳出改革努力は、社会保障関係費の実質的な伸びを「高齢化による増加分(平成 31 年度+4,800 億円程度)におさめる」という⽅針のもと行われています。


2.④公共事業関係費

4番目に解説するのは、公共事業関係費です。
 これは、”道路や港湾、住宅や下水道、公園、河川の堤防やダムなど、社会経済活動や国民生活、国土保全の基盤となる施設の整備に使われる費用” です(4)。

 詳しくは、下記の項目が含まれています。

・治山治水対策事業費:風水害を防ぐ工事をするための費用。
・道路整備事業費:道路の建設・整備をするための費用。
・港湾空港鉄道等整備事業費:港や空港の整備のための費用。
・住宅都市環境整備事業費:住宅建設などのための費用。
・公園水道廃棄物処理等施設整備費:公園・上下水道の整備のための費用。
・農林水産基盤整備事業費:農地や農道の改良のための費用。
・社会資本総合整備事業費:町の整備や住宅支援のための費用。
・推進費等及び公共土木施設等の災害復旧等事業費:当初予算では目的を定めず、必要に応じて使われる費用(xiii)。

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 6年間の変遷を見ていきましょう。
 特筆すべきは今年度の大幅な増額です。この背景には、「臨時・特別の措置」が計画されていることが挙げられます。
 具体的には、

・消費税率引上げに伴う需要変動を緩和するための取組(すまい給付金、次世代住宅ポイント):税率引き上げ直前に駆け込みで住宅関連の注文が増えたり、上がったのち暫く極端に減るといった事態を避け、住宅市場の安定化を目指す。
・「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」:重要インフラの機能維持のため、緊急対策を2018-2020年度の3年間集中的に実施する。
等が計画されています(xiv)(xv)。



2. ➄文教及び科学振興費

5番目に、文教および科学振興費を見ていきましょう。
 これは教育や科学技術の発展のために使われるお金です。内訳は以下の通りです。

・教育振興助成費:国立大学法人の運営、私立大学への補助、教科書の無償配布に使われる費用。
・義務教育国庫負担金:義務教育にかかる費用。教員の給料のうち3分の1もここから支払われている。
・科学技術振興費:基礎研究のほか、宇宙開発、海洋開発、ITの研究開発などの推進に使われる費用。
・育英事業費:日本育英会による奨学金に使われる費用。2017年より給付型奨学金制度を開始。
・文教施設費:公立の小・中・高校の校舎改築などの施設を整えるための費用。

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 グラフを見てください。今年度の大幅な増加に目を向けられる方が多いかと思います。その背景にはどのような政策があるのでしょうか?
 今年度の予算の編成にあたっては、財務省によると、以下の2点が重点として挙げられています(xvi)。

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 教育の無償化は昨今の選挙でも重要な争点となっていました。金額の変化に政策が色濃く反映されていることがわかります。

2.⑥ そのほか予算の一言説明

 今まで取り上げた7項目の他、主要経費別の分類には10項目が存在します。項目の内容をざっくりと掴めるように、まとめてみました!(xvii)(xviii)(xix)

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おわりに


 いかがでしたか。国家予算の増減を見てみると、国がどこに重点を置いているか・政策はどう実行されているのか、その全体像が見えてきませんか? ぜひ、本記事での解説を参考にしながら、JAPAN CHOICE「予算の使いみちを知る」に触れて、予算について関心を深めていただければ幸いです。



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◆脚注
(1)記事中の予算データは、「(一般会計+特別会計−重複額)で求められる純計金額」を使用しました。なお、記事内のグラフは全て100万単位での金額表記です。
(3)国税庁ウェブサイト 税の学習コーナー>学習・発展編>[国の財政] 歳出~社会保障関係費~ より引用
(4)国税庁ウェブサイト 税の学習コーナー>学習・発展編> [国の財政] 歳出~公共事業関係費~ より引用

◆参考URL
(viii)厚労省PDF 我が国社会保障制度の構成と概況 PDF版
(ix)内閣府ウェブサイト 第1部 少子化対策の現状(第2章 第1節)
(x)金融広報中央委員会「知るぽると」Ⅲ.公的扶助等
(xi)厚労省ウェブサイト 社会保障制度改革 何のための負担なの?
(xii)社会保障について 財務省 PDF版 2019月4月23日公開 27p-30p
(xiii)税庁ウェブサイト 税の学習コーナー 発展編 [国の財政] 歳出~公共事業関係費~
(xiv)財務省 広報誌「ファイナンス」 平成31年度公共事業関係予算について PDF版
(xv)首相官邸ウェブサイト 重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議
「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」について

(xvi)財務省ウェブサイト 広報誌「ファイナンス」 平成31年度文教及び科学振興費について PDF版
(xvii)日本経済新聞「防衛費とは GDPの1%以内が目安に」 2018年11月24日掲載
(xviii)財務省ウェブサイト 平成29年度決算の説明
食料安定供給関係費、エネルギー対策費、経済協力費、中小企業対策費、復興加速化・福島再生予備費
(xix)総務省ウェブサイト 恩給制度の概要
*前編からの通し番号となっています。

◆グラフに使用したデータはこちら
予算及び財政投融資計画の説明/付表11/歳出予算主要経費別純計表(一般会計と特別会計の合計) PDF版
2019年度
2018年度
2017年度
2016年度
2015年度
2014年度
*2017-2019年度データはJAPAN CHOICE「予算の使いみちを知る」と同じです。

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