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【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【外交・安保-通商編】

  本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【外交・安保-通商】についてです。


1.戦後の国際体制

1-1 戦後の国際秩序と過去から現在の状況

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 第二次世界大戦後、国際社会では、集団安全保障、開放的な経済、自由貿易を基調としたリベラルな国際秩序が築かれていいきました。
 冷戦期はソ連とアメリカの勢力均衡による安定が世界にもたらされ、冷戦集結後は一強となったアメリカが世界の警察として深く他国に関与し、世界の安定を守ってきました。しかし、9.11後、アメリカによる平和(パックス・アメリカーナ)が大きく崩れることになります。
 また、世界的な財の市場統合、資本市場の統合が進みグローバル化が進む一方で、グローバル化の行き過ぎによる反動も見られるようになりました。ヒト・モノ・カネの移動が自由になった一方で、EUではBREXITとしてイギリス離脱の国民投票が可決され、アメリカでは保護貿易を掲げるトランプ大統領が誕生しました。さらに、戦後の国際秩序の基礎とされたリベラルな体制を全面的に国内で受け入れていない中国などの国が肥大化し世界で第二位の経済大国になったことで、これまでの国際秩序の価値が揺らいでいます。

2.安全保障

2-1.日本の安全保障とは

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 戦後日本は米軍による統治から始まります。そもそも、米国の日本占領の任務は①非軍事化、②政治面の民主化、③経済復興の3局面からなり、1947年には①と②は終わり③は占領軍の手に余る問題だとして、早期の講和が求められるようになりました。さらに、1950年の朝鮮戦争によって、日本が軍備化(警察予備隊を創設)し、朝鮮特需によって経済復興も遂げることができました。そして、この戦争によってアメリカに対し日本は存在感を高め、極めて有力な戦略拠点として意識されるようになります。そうした中で、アメリカは日本を西側陣営の友好国として育成するという政策を取り始めます。そして、1952年に日本はサンフランシスコ講和条約の締結とともに、日本側からの米軍の駐留を前提とした日米安全保障構想の提案による「極東における国際の平和と安全の維持」と「日本国の安全に寄与するために使用することができる」という防衛の確実性が失われる形での日米安全保障条約が結ばれることになり(日本側は行政協定で様々な特権を与えたので、形式的に対等性を欠いている)、独立を果たしました。
 そして、その後は吉田路線といわれる「経済力をつけて国民生活の安定を図ること」を最優先とした政策が国づくりの基本となりました。

2-2.安保条約改正の歴史

 初期の安保条約には内乱条項(日本の内乱に米軍が出動できるとする規定)が含まれ、さらに基地使用に制限がないこと、条約に期限がないという欠陥、そして、日本のアメリカに対する基地提供義務は明文化されているのに、アメリカの日本防衛義務はされていないという問題があったため、岸政権時の1958年に安保条約の改正交渉が正式にスタートし改正されました。新条約はアメリカの日本防衛義務を明文化し、条約に期限をつけ、内乱条項を削除し、日米間の協議の必要性を認めさせることができました。しかし、日本国内では国会前で大きなデモが開かれるなど内政が混乱しました。また、日本は海外派兵の義務を負いませんでした。しかし、1991年の湾岸戦争の勃発で日本は130億ドル(当時の日本円の価値に換算して1兆4000億円)を拠出したものの、海外派兵をしなかったことで批判を受けることになりました。厳しい国際世論を受け、日本政府は、ペルシャ湾岸の機雷除去のために湾岸戦争終結後になって自衛隊を派遣しました。
 1997年には、冷戦期の米ソの対立を想定して作られた日米ガイドライン(1997年規定)が改正されました。さらに、1999年には周辺事態法が成立し、日本の自衛隊は後方地域(戦闘が行われていない、活動中に戦闘が行われることがないと認められる地域)での米軍の支援が出来るようになりました。
 さらに、戦後国際体制の転換点でもある2001年の同時多発テロではテロ特別措置法を成立させ、自衛隊の活動範囲を拡大したと共に、日本に加え外国領域での支援活動を認めるなどより広域にわたり自衛隊が活動できるように改正されてきました。
 さらに、2014年には自衛隊発動の三要件の見直しを安倍政権が行ったことで、集団的自衛権の行使が認められることとなりました。さらに、これまで認めていなかった、日本に対して直接影響がない地域であっても国際社会が一致して対応すべきと一致した場合に限り自衛隊を派遣できるようにも改正され、地球上のあらゆる地域に自衛隊を派遣できるようになりました。

 このように、日本は自衛隊の活動できる範囲を広げてきましたが、そもそも自衛隊は憲法に明記されておらず、立場が曖昧であるとの意見もあります。さらに、日本には憲法9条で平和主義について述べられており、解釈が様々です。その結果として、上記のように解説した自衛隊の活動範囲の拡大が合憲であるのかについては疑義があるという批判も少なくありません。また、憲法問題とは別に、日本の安全保障に関して、現在の水準まで自衛隊の活動範囲を拡大する必要性はあるのかという批判もあります。あるいは、これまでの政権による安全保障関連法案の成立手続が強硬的にすぎるという指摘も後を絶ちません。
 国際政治の視点からみると、これまで世界の警察としての責任を負ってきたアメリカが1970年以降の国力の低下によってこれまでのような役割を果たすことが難しくなってきており、同盟国のアメリカ依存を減らそうとした行動がみられるようになっています。その結果、日本は安全保障体制を強化しなければならないと整備を進めてきたのが政府の立場ですが、野党は日本を取り巻く環境が変わる中においても、憲法の平和主義を貫き、専守防衛に徹することを基本にし、国際人道支援を積極的にすべきだとして、それに反対しています。また、集団的自衛権の行使は、他国への武力攻撃を言い訳にして、別の国に先制攻撃を行うことも可能になりえるとして反対しています。
このように日本を取り巻く安全保障の問題は複雑を極めていますが、真に必要とされる安全保障のあり方、憲法との関係、さらに立法過程の問題といったそれぞれの段階で国民世論が割れ、しばしば対立を起こしています。

2-3.各政党の立場

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3.通商交渉 

戦後日本は自由貿易を基軸とするリベラルな国際秩序の中で豊かな経済発展を遂げてきました。しかしながら、近年では世界的に保護主義化の動きがみられるようになりました。

3-1.近年のアメリカの保護主義的な動き

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  ここ数年、米国が多国間交渉に対し見直しを迫るなど保護主義的措置を取っているため、リベラルな国際秩序の支えとなっている自由貿易体制が瓦解の危機に直面しています。アメリカの保護主義の背景には第一に米国の一部の産業における雇用の確保、第二に中国による情報技術などの最先端分野における急速な発展に対する警戒心というものがあります。
 また、中央集権的な政治体制ながら経済では自由主義の恩恵を受けてきた中国は「中華民族の偉大な復興という中国の夢」の実現のために、経済・軍事・文化など幅広い分野において建国100年の2049年までに米国と並ぶパワーを持った国になることを目標に掲げ、経済分野では、先端領域の発展を中心とした戦略や、一帯一路構想による中国中心の新たな経済レジームの構築などを進めていいます。このような中国の動きを、アメリカは戦後のリベラルな国際秩序への挑戦だとみなし、中国への強硬な姿勢をとる動機の一つであると言われています。
 保護主義の経済に対する負の影響が表出すれば、米国と中国の経済だけでなく、グローバル化が進んだ現在においては世界経済に深刻な影響を及ぼすこととなるため、経済規模として世界第三位の日本がどのような行動を起こすのかは非常に重要です。

3-2.近年の日本の通商外交の動き

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 日本は保護貿易化の流れも見え始めた世界の中でこれまでのリベラルな価値観である多国間交渉の価値をより強固にするための取り組みをしてきました。2018年には米国離脱により先行きが不透明だったTPP(環太平洋パートナシップ)に関し、米国を除く11か国によるCPTPP(TPP11)が締結し、交渉の過程において日本は中心的な役割を果たしました。また、2019年には日EUでEPAを結ぶなど自由貿易だけでなく知的財産などより広義における経済連携を各国と強めています。
 現在、EPAとFTAは18の国と枠組み(EU、ASEAN、スイス等)で締結、4つの交渉(RCEP、日中韓、トルコ等)を行っています。
 自由貿易は、関税撤廃によって日本の主力工業品である電子機器や自動車などを輸出しやすくなる一方、輸入の面において問題が残ります。自由貿易交渉の過程において、大量生産を行っている海外からの野菜が安く入ることによる小規模農家への影響や食料自給率の低下、日本では認められていないポストハーベスト農薬などの日本の食の安全基準の低下が問題となります。

3-3.政党の立場

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最後に 

 今回は、外交でも安全保障や通商についての政策を比較しましたが、JAPAN CHOICEでは、その他の争点化を様々な分野で政策を比較できます!ぜひ、ご自身が気になる分野で、それぞれの政党の違いに注目し、比較してみてください!


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【参考文献】『リベラルvs力の政治-反転する世界秩序』 ニアール・ファガーソン/ファリード・ザカリア 東洋経済新報社『国際レジームと日米の外交構想-WTO・APEC・FTAの転換局面』大矢根聡 有斐閣『国際紛争―理論と歴史』ジョセフ・ナイ/ディヴィッド・ウェルチ 有斐閣『戦後日本外交論』有斐閣アルマ「民主党が抱える「安保法制の問題点」とは?」https://toyokeizai.net/articles/amp/77309?page=2 東洋経済オンライン 2015年7月16日

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