確認団体

【2019参院選】【確認団体公約まとめ 2/3】N国・労働者党・オリーブの木 編

 参議院選挙で候補者を擁立するのは政党だけではありません。選挙のときに一定の条件を満たした政治団体「確認団体」も、選挙区や比例区に候補者を擁立しています。JAPAN CHOICE (政策を比較する・投票ナビ)の主なコンテンツで扱っているのは政党だけですが、記事コンテンツでは確認団体についても取り上げてまいります!
候補者情報には、確認団体に所属する候補者も掲載しています。

★「確認団体」とは?

 確認団体とは、公職選挙法上の一定の要件を満たすことで、選挙運動を許可された政治団体のことです。法律では原則として、選挙期間中の政治団体の活動は禁止されているので、この要件を満たすことが政治団体にとって重要となります。厳密には届け出をした政党も確認団体に含まれますが、ここでは政党以外で公選法の要件を満たした政治団体とします。参院選の場合、比例区候補者を必ず含み10人以上の候補者を擁立すると、確認団体として認定されます。


 JAPAN CHOICEコンテンツでは、確認団体を扱っていません。日本は憲法が政党を前提とする統治システムとなっているため、必ず政党は取り上げないといけない一方で、確認団体は非常に数が多いこともあり、また、一部団体の公約はが政党ほど詳しくないために他のく、政党と平等に比較ができなかったり、数少ない主張が独特のものであだったりするためです。もっとも、だからといって軽んじているわけでは決してなく、少ない公約であってもきちんと各団体の主張を各党と比較し紹介するために、記事コンテンツのという形で取り扱っていきます。
 今回の選挙では6つの確認団体が、それぞれの主張を掲げて候補者を擁立しています。れいわ新選組、幸福実現党、NHKから国民を守る党、オリーブの木、安楽死制度を考える会、労働の解放をめざす労働者党です。

 本記事では、NHKから国民を守る党、労働の解放をめざす労働者党、オリーブの木を紹介していきます!

▶︎“【確認団体公約まとめ1/3】れいわ新選組編” はこちら

▶︎“【確認団体公約まとめ3/3】安楽死制度を考える会・幸福実現党編” はこちら

▶︎その他の政党の公約比較はこちら

まずは、NHKから国民を守る党を紹介します!

1.NHKから国民を守る党

1-1.NHKから国民を守る党とは?

 NHKから国民を守る党、略して「N国党」は、元NHK職員の立花孝志氏によって、2013年に設立された政治団体です。現在27名の地方議員を擁し、この参院選でもほぼ全ての選挙区に候補者を立て、法的な政党となる条件を満たそうとしています。
 立花代表は団体を立ち上げて以来、数々の地方選挙に立候補し、実際に船橋市議及び葛飾区議を務めました。小池都知事が当選した2016年の東京都知事選挙では、NHKが放送する政見放送で「NHKをぶっ壊す!」とにこやかに連呼し(1)、21人中8位につけました。知名度が上がった2019年の統一地方選では、全国で一挙に26名が当選し、現職13人と合わせて39名になりました。その後数は減りましたが、依然多数の議員を擁しています。公約はNHKに関するものだけの「ワンイシュー」団体、今夏の参院選には、全国的に候補者を擁立し、議席獲得を狙います。具体的な政策を見ていきましょう。

1-2.NHKから国民を守る党の政策

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 N国党が主張している政策はただ1つ、NHKに「スクランブル放送」を導入することです。国政政党では維新の会が同様の主張を行っています。

1-3 そもそもスクランブル放送とは何か

 現在の法律は、テレビやケータイのワンセグなどNHKを受信できる設備を有する者については、NHKと契約を結び受信料を支払わなければならない、と法律は定めています。しかしこの場合、NHKを見たくて受信料を支払っている人はともかく、NHKを見たくなかったり、そもそもケータイ・スマホでテレビなんて全く見ないという人にとっては、受信料を支払う個人的理由がないともいえますありません。さらに、NHKを受信できる設備の有無や受信料支払いを巡って、集金人と住民のトラブルも起きています。そうした中で、NHKを見たい人だけが契約し受信料を払うことで見る、という「スクランブル化」を行うべきだ、という声が上がっていました。
 NHKから国民を守る党はこれまで長らく、視聴者の側に契約の自由があるはずだ、と受信料支払い義務を巡って裁判を起こしたり、集金人を追い払う様子を撮影し投稿するなど、活動を続けてきました。その手法には批判も多いものの、一方で今春の統一地方選挙で多くの候補者が当選したことは、有権者の中にあるNHKに対する不満を示しているのかもしれません。
 NHKは、スクランブル放送を導入していない理由としてNHKは、視聴者を限定してしまえば、視聴率を気にして「見られる」番組に偏り内容が画一化し、公共放送の「社会生活の基本となる確かな情報や、豊かな文化を育む多様な番組を、いつでも、どこでも、誰にでも分けへだてなく提供する役割」を損なうから、などと説明しています。

1-4 まとめ

 NHKの受信料問題というワン・イシューで戦うことについて、「NHKに関する制度を変えた後は何をするのか」という懐疑的な意見も少なくありません。これについて立花代表は、「ここまで党が大きくなると思わなかったし、公認した僕としても、このまま過激な思想のまま政治家でいるのは危険じゃないかと思う。我々は壊して更地にするだけのネガティブな政党。何かを生み出すわけではないし、スクランブル放送が実現されたら解党する」と述べたこともあり、政治組織としての将来的なビジョンが不明瞭な部分もあります(2)。
 NHKから国民を守る党は、NHKへスクランブル放送の導入のため、政党要件を満たすことを目指します。富山・石川・奈良・和歌山・山口・佐賀・宮崎・鹿児島以外の全選挙区に1名ずつ、比例区に4名の候補者を擁立します。

NHKから国民を守る党公式サイト
http://nhkkara.jp/


次は、労働の解放をめざす労働者党です。

2 労働の解放をめざす労働者党

2-1.労働の解放をめざす労働者党とは?

 労働の解放をめざす労働者党、略して「労働者党」は、2017年4月に「マルクス主義同志会」の後継団体として発足しました。現在議員である党員はいませんが、2017年の総選挙には神奈川県で候補者を擁立し、選挙を戦いました。マルクス主義同志会から更にたどっていけば、60年安保闘争時に結成された団体にまで遡ることができる労働者党。、さらに前身の一つである「社会主義労働者党」時代には、衆参の選挙に候補者を擁立したこともありますが、いずれも議席獲得に至っていません。党綱領によると、「労働の解放」とは基本的に社会主義と同義であるそうです。比例区と選挙区に候補者を擁立し、積年の夢である国会進出を目指します。
 労働者党は参院選向けの政治路線や政策を発表しています。見ていきましょう。

2-2.労働の解放をめざす労働者党の政策

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 労働者党の政策は、短く、具体的な提案が少ないので、他の確認団体記事とは違い、国政政党との比較は行いません。
 労働者党は、政策に関するものについては5つの主張をしています。

 まずはじめに、労働環境の向上。これは「労働者の政党としての根底的で原則的な立場や政策」としています。党名からしても、労働政策の主張があるのは当然と言えるでしょう。内容は安倍政権の働き方改革を口だけだと批判し、長時間・ブラック労働などの「搾取労働」と、男女格差ある「差別労働」の一掃を要求しています。
 2つ目に、アベノミクスの量的緩和を批判し、バラまきのない経済成長、借金なき健全財政を主張しています。 
 3つ目に、森友・加計問題の糾明。この事件が政治道徳を失墜させたと強い口調で非難しています。
 4つ目に、歴史の「修正」への反対。保守派による「朝鮮の植民地化や中国への侵略、米国との帝国主義戦争」といった「真実の歴史」を否定することは、帝国主義国家の再現につながると危険視しています。
 そして最後に、国民主権のを原理を徹底する改憲。安倍政権による「党利党略」の9条改正に反対するとともに、野党の唱える「立憲主義」も批判。国民主権を強める改正の代表例として、「あらゆる国民差別の〝象徴〟である天皇制条項の削除」を主張しています。

2-3まとめ

 労働の解放をめざす労働者党は、既存の野党とも一線を画した主張を掲げ、国会進出を目指して戦います。今回労働者党は、北海道・東京・神奈川・愛知・長野・広島に各1名、比例区に4名の候補者を擁立しています。

労働の解放をめざす労働者党公式サイト
http://wpll-j.org/index.html



最後に、 オリーブの木です。

3オリーブの木

3-1 オリーブの木とは?

 オリーブの木は、元衆議院議員の小林興起氏を代表として2019年5月21日に設立が発表されました(1)。結党メンバーには他に、元外交官の天木直人氏、市民団体代表の黒川敦彦氏、千葉県議の西尾憲一氏がいます。しかし公示前日の7月3日に小林代表は不出馬を発表(2)。黒川氏が代表に就任し、選挙戦に臨みます。
 恐らく多くの方が、この「オリーブの木」という一見変な名前に疑問を抱くことでしょう。オリーブの木とはどういう意味なのか。これは、かつて存在した海外の政治勢力の名前なのです。90年代のイタリアでは保守派が政権を担っていたのですが、中道左派勢力を中心とする反政権政党が、一人の首相候補のもとに集結し広範な政党連合として「オリーブの木」を結成、見事政権交代を成し遂げました。こちらの「オリーブの木」の名前の由来は、これが平和の象徴であり、かつイタリアの国章の一部を構成し国家の象徴でもあったことにあるから名付けたそうです。
 日本では、特に小沢一郎氏が長らくこの「オリーブの木」構想を主張してきました(3)。つまり、安倍内閣と対峙する野党が、民主党(民進党)を中心として「オリーブの木」連合を組み、比例代表でも各党別々ではなく一致団結して戦う、というものです。他にも「さくらの木」という日本らしい名称で同様のことを試みる案もありました(4)が、実現しませんでした。
 今回、結党メンバーたちはそれぞれが率いる政治団体の連合体という形で「オリーブの木」を結成し、各団体で合意した共通政策を掲げて選挙に挑みます。その共通政策の中身を、次に見ていきましょう。

3-2 オリーブの木の政策

 オリーブの木は、以下に掲げる5つの共通政策を掲げています。

①対米自立(普天間基地の辺野古移設反対、地位協定の見直し、専守防衛等)

②官民格差(1.6倍)是正

③ベーシック・インカム(政府が生活費を国民に配る。当面は低所得層が対象)

④消費税を5%に戻し景気を良くする

⑤原発即時ゼロ

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 ①外交と⑤原発政策は、野党共闘に参加している既存政党と共通する政策です。一方でベーシックインカムや消費税減税などは、既存政党のほとんどが主張していない(前者は国民民主党が政策集に検討事項として掲げる)政策となっており、オリーブの木の独自性が出ています。
 オリーブの木は、「今の政治は、安倍自公政権はもとより、野党共闘も国民のための政治を実現することができず、何とかならないかという声が高まる一方です。その声に応えるべく(略)オリ-ブの木という党利、党派を超えた、いわば緊急避難的な、国民の声に従った政党が立ち上がりました。」とHPで説明しています。政策的には与党よりは野党共闘側に近いですが、野党にすら期待していない、現状に批判的な層の声をすくおうとしているようです。

3-3 まとめ

 オリーブの木は、与党はもちろん、野党にも支持できない飽き足らない有権者をターゲットに、現状打破を目指し議席獲得を狙います。東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡に各1名と、比例区に4名の候補者を擁立します。

オリーブの木公式サイト
https://oliveparty.jp/


 本記事では、NHKから国民を守る党、労働の解放をめざす労働者党、オリーブの木を紹介してきました。ぜひ他の確認団体の公約も他の記事でご確認ください!

▶︎“【確認団体公約まとめ】れいわ新選組編” はこちら

▶︎“【確認団体公約まとめ】安楽死制度を考える会・幸福実現党編” はこちら



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<NHKから国民を守る党>
N国党紹介AbemaTIMES「『ここまで大きくなるとは思わなかった。ぶっ壊した後は危険なので党を潰す』NHKから国民を守る党・立花孝志代表」(https://abematimes.com/posts/7000910)2019年4月24日・スクランブル放送についてJ-CASTニュース「NHK、なぜスクランブル放送にできないか 最高裁判決3日前の『新聞投書』」(https://www.j-cast.com/2017/12/06315849.html?p=all)2017年12月6日NHK「よくある質問集 なぜスクランブルを導入しないのか」(http://www.nhk.or.jp/faq-corner/2jushinryou/01/02-01-08.html) (1)J-CASTニュース「NHKで『NHKをぶっ壊す!』政見放送 元職員の都知事候補者が主張したこと【都知事選2016】」(https://www.j-cast.com/2016/07/22273330.html?p=all)2016年7月22日(2)AbemaTIMES「『ここまで大きくなるとは思わなかった。ぶっ壊した後は危険なので党を潰す』NHKから国民を守る党・立花孝志代表」(https://abematimes.com/posts/7000910)2019年4月24日
<労働者党>
労働者党「労働者党の基本的な政治路線や政策」http://wpll-j.org/gikaisennkyotousou/sennkyotousou-5.html#39
<オリーブの木 文中注>
(1)産経新聞「小林興起氏が新政治団体、参院東京へ 比例に2人」(https://www.sankei.com/politics/news/190521/plt1905210052-n1.html)2019年5月21日(2)小林興起FB投稿(https://www.facebook.com/koki.kobayashi/posts/2476839189076827)2019年7月3日(3)例えば、朝日新聞「『オリーブの木構想なら野党結集』 生活・小沢代表」(https://www.asahi.com/articles/ASHB25FD3HB2UTFK00D.html)2015年10月2日(4)日本経済新聞「亀井静香・元国民新党代表『オリーブの木で新しい野党連合を』」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO99391840X00C16A4000000/) イタリアの「オリーブの木」については、コトバンク「オリーブの木」(https://kotobank.jp/word/オリーブの木-880762)

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