公約2_2

【6年間の政権を振り返る】公約はいくつ実現されたのか? -中編-

 こちらの記事は、「【政治というお約束】6年間で公約はいくつ実現されたのか?(前編:実現された政策)」の続きの記事となります。
ぜひ、前編からご覧下さい。

2.実現されなかった、または、未達成な政策

2.1 自民党:農業

 この公約は、就農者の高齢化・後継者不足問題を解決し、持続可能なものにしていくためのものです。2012年4月に「新規就農総合支援事業実施要綱」が発表され、「(40歳未満の)青年新規就農者を毎年2万人定着させ、持続可能な力強い農業 の実現を目指す」という政策目標が記されています(7)。
 主な内容として、就農者を増やすための「新規就農者確保事業」と、就農者を様々な方面から支援する「農業者育成支援事業」の2つがあります。
 前者は、就農しようとする青年が就農前に、収入が不安定になることを予想して躊躇したり、実際に収入が得られずやめてしまうことを防ぎます。実際には個人に支援金を年間最大120〜150万円を、就農前の最長2年間、就農後の最長5年給付します。
 後者は、農業者教育を行う団体や、就農希望者への情報提供や研修を行う団体を、補助金給付という形で支援するというものです。他にも、農地確保のサポートや、機械や施設の導入に必要なお金を無利子で貸すなど、総合的に支援します。それまでも機械や施設の導入に対する補助金はありました(8)が、収入の不足に対する補助はありませんでした。
 この政策は、選挙前から実施され、2019年現在も同様な方針で運営されています(9)。しかしながら、2013年には1万440人だった新規就農者は、2017年 時点で1万4160人となっており、増加はしたものの約1.4倍増にとどまり、目標の2倍には達していません(10)。


2.2 自民党:科学技術

 「イノベーションランキング」とは、技術革新の度合いを世界経済フォーラムという機関が数値化し、ランキングにしたものです。イノベーション能力、科学研究機関の質、人口100万人あたりの特許出願件数などの7項目から選定されます(11)。このイノベーションランキングの他、11項目から、世界経済フォーラムは「国際競争力ランキング」を発表します。 つまり、自民党は日本の国際競争力を上げるために技術革新を盛んにしようとし、その到達目標としてこのランキングを選んだということです。
 政府は、2013年6月、「イノベーションの芽を育む」、「イノベーションを駆動する」、「イノベーションを結実させる」という課題を設定し、それぞれに3つの視点から取り組むことを閣議決定しました(12)。現状、直接的に結果に現れる政策は実施されておらず、また、2009〜2016年まで同ランキングでは4~5位にラインクインしていましたが、2017、2018年は8位と順位を落としています(13)。


2.3 公明党:原発

 日本では原子力発電所の運転期間を原則40年としており、この原則どおりに進めることを公約にしています。しかし、例外的に一度だけ許される運転期間の延長が複数の原発で認められています。
 国の目標に、原発が占める発電割合を2018年の4.7%(14)から、2030年に20~22%にするというものがあります(同年に資源エネルギー庁が発表したエネルギー基本計画より)。これを稼働中の原発を停止せず、再稼働させる原発を増やすことで達成しようとしています。
原発を新しく作ることはしていませんが、40年での運転停止の適用ができていないため、「未達成」という評価です。

出典元:http://www.japc.co.jp/atom/atom_1-7.html


2.4 公明党:エネルギー

 海底熱水鉱床等の商業化に向けた技術開発は官庁と民間企業の共同でおこなわれていますが、メタンハイドレートの商業化は、2019年度(平成31年度)時点でも達成されていません。
 なお、同じ公約内にはメタンハイドレードの商業化に向けた技術開発を2018年度めどに、と記載している箇所があり、商業化までは目標としていない可能性があるということです。しかし、予備知識なく読むとそのような読み取りは不可能であるため、文言の通り「商業化を2018年度までに」として評価しました。

 中編では「実現されなかった政策」について振り返りました。
 前編「実現された政策」後編「実施中、または、方針転換した政策」についても、是非ご覧ください。

▶︎【6年間の政権を振り返る】公約はいくつ実現されたのか?  後編「実施中、または、方針転換した政策」 はこちら

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参考文献
(7) 農林水産省「平成25年度予算概算要求の概要(新規就農総合支援事業)」http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/pdf/youkyu_02.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
(8) 農林水産省「新規就農定着促進事業」http://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_teityaku/pdf/pr.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
(9)農林水産省「農業次世代人材投資資金の交付要件や実施体制について」http://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/attach/pdf/roudou-84.pdf (最終閲覧日:2019年6月16日)
(10)農林水産省「新規就農調査」 新規就農者の定義を新規雇用就農者と新規参入者の総計としている。http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sinki/(最終閲覧日:2019年6月16日)
(11)みずほ総合研究機関 、「国際競争力後退の要因は何か」https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp160930.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
(12) 首相官邸、「科学技術イノベーション総合戦略 ~新次元日本創造への挑戦~ 」(平成25年6月7日 閣議決)https://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/06/20/20130607-01.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
(13)経済産業省 「WEF国際競争力ランキング(総合)の推移」https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/tech_research/aohon/a17_3_4.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
(14)特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所「2018年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合(速報)」 https://www.isep.or.jp/archives/library/11784(最終閲覧日:2019年6月16日)

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