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大阪W(ダブル)クロス選挙まとめてみた【統一地方選挙×Mielka】

Mielka×統一地方選挙、今回は大阪W(ダブル)クロス選挙を取り上げます。

大阪について

 大阪は、言うまでもなく都道府県別人口で言えば東京・神奈川に次ぐ第三位の府(推計882万人)であり、西日本では最大の都市です。大きさは香川県についで二番目に小さいですが、46の基礎自治体(市町村)を有し、うち府庁所在地である大阪市とその南に位置する堺市は政令指定都市でもあります。
 犯罪発生率は長く1位の座を占めていますが、一方で2017年には初めて外国人観光客数が1000万人を突破するなど、経済的には勢いのある自治体でもあります。

大阪ダブル選挙について

 大阪の府知事選及び市長選は、かつては別の時期に実施されていました。しかし2011年11月大阪市長の任期が切れるにあたって、当時の橋下徹知事が任期途中で辞職し市長選挙に出馬する一方、後任の知事候補に松井一郎氏(今回の市長候補)を擁立したことにより、府知事・市長の「ダブル選挙」が行われるようになりました。
 橋下徹氏が大阪限定の地域政党「大阪維新の会」を結成し、大阪府・市を統合し二重行政の解消を図る「大阪都構想」を掲げて以降、大阪の選挙は基本的に都構想を推進したい維新と、都構想を阻止したい自民・民主系・共産といった勢力によるいわゆる「非維新」が争ってきました。これまでの大阪での「維新vs非維新」の戦いの結果を見てみましょう。

2011年大阪ダブル選挙

 先述の通り2011年の大阪ダブル選挙は、大阪市長の任期切れに合わせて当時の橋下知事が辞職することにより始まりました。大阪府知事選挙では、大阪維新の会幹事長の松井一郎・大阪府議が立候補する一方、非維新側は倉田薫・池田市長が民主・自民の支援を受け立候補し、共産党は梅田章二氏を独自候補として擁立しました。大阪市長選挙では維新の代表を務める橋下徹・大阪府知事が自ら立候補し、非維新側は橋下知事と対立していた現職の平松邦夫氏が立候補、民主・自民・共産が支援しました。
 選挙結果は、それぞれ以下のとおりです。

 府知事選挙では維新・松井氏が2位の倉田氏に大差を付け、全体でも過半数の票を獲得し圧勝しました。
 市長選挙でも、橋下氏が現職の平松氏に対し1.5倍弱の票を獲得し、こちらも圧勝しました。

2015年大阪ダブル選挙

 2015年の大阪ダブル選挙でも、大阪都構想が最大の争点となりました。
 選挙が行われたのは11月ですが、同年5月、橋下市長が自らの政治生命をかけた都構想の住民投票がありました。結果は僅差で否決、橋下氏は政界引退を表明し、非維新側が都構想の対案として掲げた「大阪会議(大阪戦略調整会議、府と市がバラバラに行動しないよう方針を話し合い決める会議)」設置案を呑みました。しかしこの会議で、維新議員や松井知事・橋下市長と、自民議員など非維新側の主張が噛み合わず、会議すら開かれなくなる機能不全に陥ると、維新側からは「都構想への再挑戦」の声が聞かれるようになりました。知事・市長の任期満了で迎えた2回目のダブル選挙は、一度否決された大阪都構想を再度議論してもよいかが、一つの争点となりました。
 大阪府知事選挙では、維新からは現職の松井一郎氏が、非維新からは自民党府議の栗原貴子氏が無所属で立候補、自民党の推薦と民主・共産の支援を受け、非維新系政党の候補を一本化しました。大阪市長選挙では、維新は都構想推進にあたって中心的な役割を担った吉村洋文・衆院議員を擁立、対する非維新勢力は、都構想阻止に大きく貢献した自民党の柳本顕・大阪市議が無所属で立候補し、こちらも自民党の推薦と民主・共産の支援を受けました。
 選挙結果は以下のとおりです。

 大阪府知事選挙では、得票率・投票率ともに前回を上回った松井氏が、栗原氏の2倍弱得票し圧勝、大阪市長選挙でも維新の吉村氏が柳本氏を1.5倍弱の得票で下し、維新が完勝しました。

2019年大阪Wクロス選挙

これまでの経緯

 なぜ今回、ダブル選挙が前倒しになったのか。そもそも大阪維新の会は府・市両議会において過半数を占めていません。都構想の是非を問う住民投票を実施するためには議会過半数の賛成で制定される「条例」が必要であり、そのために維新は他党、具体的には公明党の協力が不可欠でした。公明党はこれまで、衆院選で大阪府内の自分の選挙区に維新が候補を立てないことへの見返りとして、都構想の協議に協力してきました。しかし2018年度末から19年初頭にかけて、維新と公明が交わした密約のうち都構想住民投票の実施時期に関する文面解釈で対立するなど、2党の関係は急速に悪化。そんな中、早期に府民市民の判断を仰ぎ都構想への弾みにしようと、松井知事・吉村市長は公明との決裂が決定的になった3月に辞職、同時選挙に踏み切りました。
 では、なぜ松井知事が市長選に、吉村市長が知事選に「クロス」で立候補する必要性があったのか?もし今回、それぞれが今の役職の選挙に立候補し当選した場合、任期は新しく4年になるのではなく辞職する前のもの、具体的には2019年の12月までとなり、年内にもう一度選挙をする必要に迫られます。維新の側としても、早期にダブル選挙を行いたいが、一年に二度も選挙をするのは無駄であり不本意なことから、今回のクロス選挙に至ったのでしょう。公明党はじめ非維新側は今回の辞職・クロスしての立候補に対して、「無責任(自・黒田氏)」「極めて不誠実(公・土岐氏)」と反発しています。
 大阪維新の会は、代表を務める松井一郎・大阪府知事を市長選挙に、政調会長の吉村洋文・大阪市長を府知事選挙に擁立します。一方非維新陣営は、松井知事のもとで副知事を務めた経験もある小西禎一氏を知事選に擁立、市長選挙には前回吉村市長に敗れた柳本顕・前大阪市議が雪辱を期して立候補します。ともに自民党及び公明党大阪府本部が推薦するほか、立憲・国民・共産の非維新各党が支援します。

今回の候補者(ともに届け出順)

大阪府知事選挙

(大阪を再生する会HPより)
名前:小西 禎一(こにし ただかず)
出身:兵庫県加西市
年齢:64歳
党派:無所属(自民党、公明党府本部推薦)
新旧:新
当選回数:0回
キャリア:東京大学法学部→大阪府公務員→大阪副知事→府社会福祉協議会長

(吉村洋文公式サイトより)
名前:吉村 洋文(よしむら ひろふみ)
出身:大阪府河内長野市
年齢:43歳
党派:大阪維新の会(政調会長)/日本維新の会
新旧:新
当選回数:0回
キャリア:九州大学法学部→弁護士→大阪市議→衆院議員(維新の党)→大阪市長

大阪市長選挙

(大阪を再生する会HPより)
名前:柳本 顕(やなぎもと あきら)
出身:大阪府大阪市西成区
年齢:45歳
党派:無所属(自民党、公明党府本部推薦)
新旧:新
当選回数:0回
キャリア:京都大学法学部→関西電力社員→大阪市議→大阪市長選挙候補者→自民党参院選公認候補者

(Ichiro Matsui Official web siteより)
名前:松井 一郎(まつい いちろう)
出身:大阪府八尾市
年齢:55歳
党派:大阪維新の会/日本維新の会(代表)
新旧:新
当選回数0回
キャリア:福岡工業大学→電力会社勤務→大阪府議→大阪府知事

これまでの維新vs非維新の戦いの結果まとめ

 これまで府知事・市長の両選挙で得票数・率がどう推移したか、可視化してみました。

▼大阪ダブル選挙・得票数変遷

(2011年府知事の非維新は、倉田・梅田両氏の合算)
 市長選挙は2011年と15年の間で両陣営ともに得票数を大きく減らしていますが、その差はともにおよそ2万票とほとんど変わっていません。府知事選挙については、維新候補は11年、15年ともに安定して票を得ている一方、非維新陣営の候補は一本化した15年の方が得票数は大きく下がっています。

▼大阪ダブル選挙・得票率変遷

(2011年府知事の非維新は、倉田・梅田両氏の合算)

 市長選挙は11年、15年ともに大きく得票率は変化していません。府知事選挙の方は、既に見たように非維新候補の得票が大きく下がったことを反映し、得票率も大きく低下しています。

まとめ

 今回の選挙も、「大阪都構想」をどうするかというところが最大の争点となってきます。当然ながら維新の2候補は「推進」を掲げる一方、非維新の2候補は「都構想を終わらせる」と気勢を上げています。もちろん他にも、維新市政が達成した市営地下鉄の民営化や、役所を縮小させ無駄を省こうとする維新的な改革の是非、あるいは大阪の経済・教育などの将来についても争点になってくるでしょう。
 これまでの選挙との最大の違いは、中立をずっと保ってきた公明党(大阪府本部)が非維新候補に推薦を出したことです。これによって非維新候補がどれだけ勢いづくことができるか、どれだけ票に影響が出てくるのか。統一地方選挙の多くで主要政党が対決を避ける中、大阪の与野党が激突する大阪Wクロス選挙は多くの注目を浴び、今後の中央政界の動きも左右しうるものです。同時に行われる大阪府議・市議選で維新が過半数を抑えられるか否かも含めて、大阪の一大選挙イベントに目が離せません。

文責:京都大学法学部 石原 諒人

【参照】
・2011年ダブル選挙について
日本経済新聞「大阪ダブル選投票率、市長選は40年ぶり60%超える」(https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2702B_X21C11A1CC1000/?nbm=DGXNASFS2700W_X21C11A1EE8000)2011年11月28日

・2015年ダブル選挙について
産経新聞「迷走する大阪会議 背を向けず利害調整を」(https://www.sankei.com/west/news/150911/wst1509110016-n1.html)2015年9月11日
産経新聞「『大阪会議はポンコツ会議』橋下氏挑発 自民は『都構想は党抗争』と揶揄」(https://www.sankei.com/west/news/151110/wst1511100012-n1.html)2015年11月10日

・2019年ダブル選挙について
朝日新聞「大阪知事と市長、辞職意向 都構想協議進まぬなら同日選」(https://www.asahi.com/articles/ASLDS4RRXLDSPTIL00L.html?iref=pc_ss_date)2018年12月24日
朝日新聞「大阪府知事・市長今きょう辞職届 『クロス選』意向表明へ」(https://www.asahi.com/articles/ASM377VT4M37PTIL03B.html)2019年3月8日
読売新聞「大阪市長辞職、議会不同意へ…『ポスト私物化』」(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190313-OYT1T50172/)2019年3月13日

【参考資料】
Ichiro Matsui Official web site(http://www.gogo-ichiro.com/)
吉村洋文 公式サイト(http://www.gogo-ichiro.com/)
新しい大阪に向けて 大阪再生の会(小西・柳本両候補合同サイト)(http://saisei.osaka/)
大阪府選挙管理委員会(http://www.pref.osaka.lg.jp/senkan/)
大阪市選挙管理委員会(http://www.city.osaka.lg.jp/senkyo/)
大阪府HP(http://www.pref.osaka.lg.jp/)

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