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【政党紹介2023】共産党ってどんな政党?

皆さんは日本共産党を知っていますか?「共産党」とも略されますが、実は日本最古の政党です。本記事では、共産党がどのような政党か、基本的な部分を抑えて解説していきます。


基本情報

共産党の基本情報を以下の表に整理してみます。[1] 

共産党の基本情報

共産党は、昨年2022年に結党100周年を迎え、党派の合流や党名変更をしてこなかった日本最古の政党です。いわゆる「左派」「リベラル」(※1)と分類されることが多い政党です。 共産主義(※2)政党でありながら、他国から干渉を受けない「自主独自路線」を貫き、武装闘争方針に反対する「平和革命路線」を持っていることが特徴です。

※1左派/リベラル:リベラルとは、「個人の自由や個性を重んじ、理性の力で世の中を理想的に変革できる」と考える立場。一般的にリベラルは「左派」とも呼ばれる。(「リベラル」の対義語として「保守」、「左派」の対義語すなわち「保守」の同義語として「右派」があります。)実際には単純な分類ができるというわけではないが、日本の政党におけるリベラル政党の代表例として共産党、立憲民主党、社民党が挙げられることが多い。[1]

※2 共産主義:共産主義とは、「農地や工場などを社会の共有とし、貧富の差をなくして、理想の社会をきずこうとする考え方」[2]のこと。

政党の変遷

100年の歴史を持つ日本共産党はどのような歴史を辿ってきたのでしょうか。年表形式で見てみましょう。[3][4][5]


共産党の変遷

共産党は1922年7月15日に、有志の8人が東京で結党した党です。天皇の権力が絶大だった当時、1925年に治安維持法が制定されたことなどを背景に、社会主義・共産主義への取り締まりが厳しくなり、共産党関係者の検挙や逮捕が相次ぎました。1945年の終戦とともに日本共産党として合法化された後は、当時のソ連共産党の武力革命方針の影響を受けず、他国からも干渉されないという方針を決定し、長い間野党として存在し続けてきました。1961年制定の綱領では「資本主義の枠内での民主主義革命」「議会を通じての改革」「統一戦線(※3)の政府」を掲げ、他の政党と協力する政治姿勢を明確にしました。

※3 統一戦線とは:社会の改革など一定の政治的な目的のための、思想・信条を超えた国民各層の協力・共同を指す言葉。[6]

主義主張

共産党は結党当初から戦争や覇権主義に反対の姿勢を貫いてきました。そのため、近年でも集団的自衛権の行使や憲法9条の改正、防衛費増額(軍事力増強)に反対姿勢を取っています[7]。
また、資本主義の枠内で「国民が主人公」の日本をつくる民主主義革命を直面する課題としつつ、人類の歴史を資本主義で終わりとする立場にたたず、資本主義を乗り越えて社会主義・共産主義社会を目指すことを党の大目標として一貫して掲げ続けてきた[7] 政党です。2022年版綱領の最後では、「二一世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることをめざして、力をつくす」と宣言しています。そのために国民の共同の力で社会変革を進め、社会主義・共産主義の社会を実現することが必要だと捉えているようです。
また、共産党は政党交付金(※4)や企業・団体献金を受け取っていない[8]ということも特徴的です。党費や「しんぶん赤旗」購読料、個人からの寄付など、党員や支持者等からのみ活動資金を得ています。この背景には、政党交付金は税金を各政党で山分けする仕組みで配分されるもので、国民の支持しない政党にも税金が配分されてしまうことが「思想の自由」を踏みにじる憲法違反の制度だと捉える考え方があるようです。
※4 政党交付金とは:議会制民主政治における政党の機能の重要性にかんがみて創られた政党助成制度の一環として政党に支払われるお金のことを指します。政党助成法(平成6年2月4日公布、平成7年1月1日施行)に使政党の要件や手続き、使途などが定められており、政党はその範囲内で政治活動に使うことができます。[9]  

特徴的な政策

実際に共産党はどのような政策を掲げているのでしょうか。
2022年参議院選挙政策 の中からいくつか特徴的な政策をご紹介します。

  1. 憲法9条改正反対
    いかなる覇権主義も許さないという姿勢から、日本が戦争できる国になることに反対するため、憲法9条の改正に反対しています。これに関連し、沖縄基地建設の中止と日米地位協定の抜本改定も掲げています。

  2. 新自由主義(※5)の経済に反対

    1. 消費税を5%に引き下げ、インボイス制度(※6)を中止する
      物価高騰から国民を守るために、消費税の引き下げと零細企業やフリーランスの事業者に大きな負担を負わせるインボイス制度の中止を宣言しています。

    2. 最低賃金を時給1500円に引き上げ、非正規から正規雇用への転換をすすめる。中小企業支援、すべてのケア労働者の賃上げも図る。

  3. 年金削減を中止し、社会保障と教育を拡充する

    1. 75 歳以上の医療費 2 倍化を中止

    2. 教育費無償化をめざし、学費を半減、入学金廃止、給食費は無料にする

  4. 気候危機の打開
    原発即時ゼロ、 石炭火力からの撤退で純国産の再エネの大量普及でエネルギー自給率の向上を目指しています。「2030戦略」では、気候・エネルギー問題に関する具体的な政策を発表しています。

  5. ジェンダー平等をあらゆる分野で貫く
    男女の賃金格差の是正、働く場でのジェン ダー平等を目指すほか、選択的夫婦別姓、同性婚、LGBT 平等法 など多様性が尊重される社会の実現に尽力する方針です。意思決定の場に女性を増やすための政策として、議会での男女同数をめざす「パリテ」の実現を掲げています。

※5 新自由主義:国家による福祉・公共サービスの縮小(小さな政府、民営化)と、大幅な規制緩和、市場原理主義の重視を特徴とする経済思想。[10]
※6 インボイス制度:「インボイス」とは「適格請求書」という書類のことで、事業者間で取り引きするときに従来の請求書や領収書に「登録番号」や事業者の氏名や名称、税率ごとに区分した税額などを記載したもの。2023年10月より導入されたインボイス制度により、以前は事業者登録(と消費税納税)を免れていた年商1000万円以下の事業者の登録が義務化された。[11]

他の政党との関係性

多くの場合、自民党とは対決姿勢を取っています。特に憲法改正に対する姿勢やインボイス制度、消費税率等では顕著に反対の姿勢を取っています。(自民党の記事(https://note.com/mielka/n/na81e1a37d645 )も合わせてご参照ください)
他の野党とも、長い間基本的にはあまり協力することはありませんでした。しかし2015年以降、改憲に反対する立場同士で協力する「野党共闘」を決意し、過去4回の野党共闘を行ってきました。2021年の衆院選では立憲民主党と共闘しました。この共闘については、立憲民主党の強い支持母体である連合が反対をしており[12]、結果は振るわず、2022年の参院選での共闘はかなり限定的になったようです。

支持層の特徴

共産党は政党交付金を受け取っていないだけでなく、企業や団体からの献金も受けていません。ですから、直接的な支持母体が業界にあるわけではありません。
一般支持層について、JNNが2021年衆議院選挙の際に行った出口調査をもとにした分析[14]によると、地域別で見ると東京での支持率が高く、年代別で見ると主に60代、70代の支持が多いようです。

共産党の地域別の支持率
共産党の年代別の支持率

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本で一番長い歴史を持ちながら、戦後の合法政党としては大きな路線変更や分離・合併をせず一貫した主張を持って活動してきた政党である共産党について、ご理解いただければ幸いです。結党100周年を迎えた今、特に気候やジェンダーの面でSDGsとの親和性も高い政策を掲げる共産党の今後に動きに注目です。

参考文献

[1] 横内正昭 (2023) もう迷わない!どの政党に投票すればいいか決められる本 ワニブックス (NPO法人Mielka監修)
[2] 「共産主義」. 市川孝ほか.『三省堂現代新国語辞典』第三版. 三省堂,2008,p.301.
[3] 日本共産党中央委員会.“あゆみ” 日本共産党 https://www.jcp.or.jp/web_jcp/history.html 
[4] 日本共産党茨城県南部地区委員会. “日本共産党の歴史” 日本共産党茨城県南部地区委員会応援サイト http://ibanan.jcpweb.net/history.html 
[5] 日本共産党中央委員会. “共産党のキホンのキホン”. 日本共産党https://www.jcp.or.jp/kihon/ 
[6] 日本共産党中央委員会. “統一戦線についての党の立場は?”. しんぶん赤旗. 2007年11月29日掲載https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-11-29/ftp20071129faq12_01_0.html 
[7]日本共産党中央委員会. “日本共産党の歴史は、今に生きる力を発揮している――党創立100周年にあたって”.  日本共産党. 2022年7月15日掲載https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/07/post-923.html  
[8]日本共産党中央委員会. “政党助成金なぜ受け取らない?”. しんぶん赤旗.  2020年12月7日掲載 もっと日本共産党/政党助成金なぜ受け取らない?/国民本位の政治貫くため (jcp.or.jp)
[9] 総務省. “政党助成制度”. 総務省https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/naruhodo02.html 
[10] 日本総研. “新自由主義”. 日本総研 https://www.jri.co.jp/column/medium/shimbo/globalism/ 
[11] NHK. “インボイス制度とは わかりやすく説明します”. サクサク経済Q&A. 2023年09月06日掲載https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/20230906/611/ 
[12] 読売新聞. “共産党と共闘する立憲民主党の候補者を「連合は推薦できない」…芳野友子会長”. 2023年10月15日掲載. 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20231015-OYT1T50094/ 





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