選択的夫婦別姓LGBT

【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【LGBT・女性政策編】

  本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【LGBT・女性政策】についてです。

  中でも特に争点となっている1.同性婚 と 2.夫婦別姓 をとりあげます。はじめに同性婚からです。


1.同性婚とは

1.1 同性婚、の前にLGBTQとは

  同性婚について解説する前に、前提としてLGBTQに関する基礎知識を説明します。LGBTQとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)、そしてQuestioning(クエスチョニング、性自認や性的指向を定めない人)あるいはQueer(クィア、性的少数者の総称)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。(1)(2)(3) 電通が実施した2018年の調査では、LGBTQに該当する人は8.9%という結果が出ています。ざっくりいって11人に1人程度はLGBTQに該当することになります。(4)

  性について、考えるときには3つの軸があり、それを知ることでLGBTQの方々への理解が深まります。

・身体の性 性器などの身体的特徴の軸
・心の性 自分の性をどのように捉えるかという軸
・好きになる性(性的指向) 好きになるか、好きになるとしてどのような性を好きになるかという軸


  これらの組み合わせで、グラデーションとして多様な性が存在するのです。(1)

1.2 同性婚とは

  現在の日本の法律では、戸籍上の男性同士、女性同士の同性の間での結婚は認められていません。
  そこで、LGBTQ・性的マイノリティーの方々の結婚する権利や、結婚すると得られる権利・利益を守るため、同性間でも結婚を認めようというのが、同性婚導入の意見です。
  一方で、従来からの戸籍制度や家族のあり方を変えるものであるため認めることに反対の意見や消極的な声もあります。どう考えるべきでしょうか。

  憲法24条は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」すると規定しています。この両性とは、男性と女性を意味すると捉えて「憲法を改正しなければ、同性婚を認めることはできない」という学説があります。一方、憲法ができた当時には同性婚が想定されていなかったため同性婚は禁止されていないと捉えて、「憲法を改正しなくても、同性婚を認めることは可能」という学説もあります。
  いずれにせよ、「憲法あるいは民法を改めて、同性婚を認める」ことに積極的か消極的かで意見がわかれます。

  そのような中、電通が実施した2018年の調査では、同性婚の法制化には78.4%の人が賛成と答えました。(4)
  このような意見を受けて、各政党の間では同性婚を認めるという意見も広がっています。


1.3 各党の政策比較

▼同性婚を認める法整備を進める(立憲民主党、共産党、日本維新の会、社民党)
立憲民主、共産、維新、社民の4党は、調査で8割が賛成と答えたことも追い風に、同性婚を認めるべきと主張しています。

▼自治体パートナーシップ認定制度など自治体の取り組みを推進・拡充(公明、国民民主)
(公明)自治体パートナーシップ認定制度など自治体の取り組みを推進
(国民民主)パートナーシップ制度の拡充・法制化の検討
とそれぞれ述べています。同性婚の法制化には直接言及していないものの、LGBTQの権利をより認めていこうという姿勢を見せています。
  同性パートナー制度は、2015年に渋谷区が「パートナーシップ証明」を発行するようになったのを皮切りに、20以上の自治体で設けられています。(5)
自治体によって必要な書類や手続きは異なりますが、申請すると、宣誓書や証明書が発行されます。異性間の婚姻・結婚のような、法的拘束力はないものの、病院での付き添いを家族でないと認められない場合にこの証明書を見せると配慮をうけられる、などといった役割があります。
  一方で、同性婚を認めるべきと主張する立憲民主党などは、このパートナーシップ制度の拡充ではLGBTQの権利が十分に認められないと考えています。


▼言及なし(自民)
  自民党は、国政政党で唯一、同性婚・パートナーシップ制度に言及していません。
   朝日新聞が、参院選の候補者に同性婚の法制化について訪ねたところ、賛成は9%で、反対派が4割弱だったとのことです。(6) 回答の8割が賛成だった民間調査の結果とは大きく乖離があります。
  なお、過去の調査と比較すると、反対派は減少傾向にあるとのことで、今後、自民党がどのような方針を示していくかに注目が集まります。



次に、選択的夫婦別姓についてです。

2. 選択的夫婦別姓or旧姓使用

2.1 選択的夫婦別姓とは、そしてその背景

  現状では、結婚した場合男性か女性のどちらかが改姓をする必要がありますが、他方で別姓を使用する必要性を考慮し,選択的夫婦別姓制度の導入が検討されつつあります。
  選択的夫婦別姓制度とは、結婚した時に夫婦同姓か別姓を選択できる制度です。
背景としては、近年女性の社会進出が進んでいることがあります。慣習で女性が改姓を強いられることが多く、公的書類を変更する必要があるという不便、また職務上での不便があるため、男女平等に活躍できる社会のために制度を整えようとする動きとなっています。


2.2 最高裁での判決

 2015年には夫婦同姓規定が女性差別をもたらすものであり、憲法違反であるという訴えに対して、最高裁は夫婦同姓規定は合憲だと判決を下しました。
 理由として、最高裁は、氏名は人格権の一部ではあるが、憲法は名字の変更を強制されない自由までは保障していないと判断しました。
 ただし、その上で、「結婚及び家族に関する事柄は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況を踏まえつつ、総合的に判断して定められるべきだ」とし、国会で議論されるべきことだと述べました。つまり、現時点では合憲と判断すべきであるが、今後の国民の議論によってはその判断は変わりうるという司法府の判断が下されました。


2.3 各党の政策比較

  次に各党の公約を比較してみましょう。
▼民法を改正して選択的夫婦別姓制度を導入(公明党、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党)
  これは文字通り選択的夫婦別姓制度を導入するというもので、今回2019年の参院選では公明党、立憲民主党、共産党、社民党がこれを公約としています。なお、公明党は、「選択的夫婦別姓の導入の実現に向けて議論を進める」と、他の党よりは慎重な書き方をしています。

  メリットの一点目として、生活上の各種手続きがスムーズになるというのがあります。つまり、結婚しても改姓する必要がないので、パスポートや住民票といった公的書類及びクレジットカードや銀行口座なども変更する必要がありません。
  二点目として、職務上の不便もなくなります。会社の同僚や取引先の人に名字の変更を伝える必要もなくなりますし、名刺などの変更の手間も省けます。
  三点目としては、自分のアイデンティティとしての姓を変更する必要がないので、アイデンティティを保持できるという点があります。


▼旧姓制度の使用を幅広く認める(自民党,日本維新の会)
これは主に自民党・日本維新の会が提案しており、具体的には
(自民党)住民基本台帳とマイナンバーカードでの旧姓併記を準備、パスポートへの旧姓併記の拡大検討、銀行口座での旧姓使用に働きかけ
(日本維新の会)同一戸籍・同一氏の原則を維持、旧姓使用にも一般的な法的効力を
とそれぞれ、公約で述べています。

  これは、選択的夫婦別姓制度導入のデメリットを考慮してのことでしょう。
デメリットとしては、
一点目に、家族の中で姓が違うと、統一感が失われ、結果として家族の一体感や絆が失われるといった、伝統的価値観・家族観を重視した意見があります。子どもの姓はどうするのか、といった議論もあります。
二点目に、家族の中で姓がバラバラになることによって、外から家族として認知しにくくなるのでは、といった主張があります。


3.まとめ

  現在の結婚や家族の仕組みが憲法や法律に決められたとき、世の中では異性愛や専業主婦が当たり前で、法や制度はそれらを前提に作られました。
令和の時代を迎え、異性愛や専業主婦は当たり前のものではなくなってきました。そのため、制度は多くの場面で、令和の人々の価値観・思いやくらしに対応しきれなくなっています。
  一方で、今までの制度のもとで幸せな家庭を築いてきた人々、従来の家族のあり方に愛着がある人々にとっては、従来からの戸籍制度や家族のあり方を変えると大切なものを失ってしまうという抵抗感があります。
  価値観の問題は対立が根深く、それゆえ、じっくりと互いの思いを聞きながら議論を前に進める必要があります。この参院選がそのための1つの機会になればと願ってやみません。

▶︎ シリーズ15の争点 他の記事はこちら



★この記事はJAPAN CHOICEと連動して各党の公約を分析したシリーズです。ぜひ他の記事・サービスもご利用ください。

画像1

★本サービスの開発・運用はクラウドファンディングで支えられています。下の画像より支援ページにとぶことができます。応援してくださると幸いです。

画像2



(同性婚)
(1)東京レインボープライドHP https://tokyorainbowpride.com/lgbt/
(2)コトバンクより朝日新聞掲載「キーワード」の「LGBTQ」https://kotobank.jp/word/LGBTQ-1829264
(3)JobRainbow「【用語解説】LGBTQとは?LGBTQIAとは?【自分の性がきっと見つかる!】」
http://jobrainbow.net/whatislgbtqia#4
(4)電通「LGBT調査2018」http://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/0110-009728.html
(5)同性パートナーシップ制度がある、日本の自治体一覧【2019年最新版】https://lez-catch.com/japan1
(6)朝日新聞 「同性婚の賛成派、自民9%にとどまる 公明との違い鮮明」 7/3 https://www.asahi.com/articles/ASM7D5Q7SM7DUTFK01H.html
(夫婦別姓)
法務省「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について」http://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html#Q8
日本経済新聞 「夫婦同姓」は合憲 最高裁初判断 2015/12/16
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14H83_W5A211C1000000/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?