防災減災復興

【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【防災・復興編】

  本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【防災・復興】についてです。



1.復興

 政府は、発災直後の2011年7月に策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」において、復興期間を2020年度までの10年間と定め、復興需要が高まる2015年度までの5年間を「集中復興期間」と位置付けた上で、未曽有の大災害により被災した地域の復旧・復興に向けて、総力を挙げて取り組んできました。現状としては、仮設入居者数は減少し、仮設の次の受け皿となる災害公営住宅は約3万戸がほぼ完成しましたが、風評被害にもいまだに悩まされていたり、原発事故の影響を受けた地区は避難指示解除準備区域や居住制限区域として、今もなお存在しています。そんな中、今回の選挙では、時期が迫って来た2020年の復興期間終了に向けた各政党の復興に向けた立場が争点となっています。

自民党
・政府が設定した2020年までにやり遂げる
・基幹インフラを期間内に整備
公明党
・被災3県への「国営追悼・祈念施設(仮 称)」の整備を推進
・2020年までに東北への外国人宿泊者数150万人泊達成
立憲民主党
・復興・創生期間後も国が責任を持って被災地の復興を支える
・用地問題の解決をさらに進める「復興特区法改正案」と「土地等処分円滑化法案」の早期成立により、点在していたり、市町村が買い取りを進めてまとまっていたりする被災跡地を活用したまちづくりを促進
国民民主党
・被災地のまちづくりを支援する新たな基金を創設
・被災地の本格復興に向け復興特区制度の適用期間を延長
・用地問題の解決等をさらに進める新たな「復興特区法改正案」と「土地等処分円滑化法案」など「復興加速4法案」の早期成立
共産党
・原子力災害被災者支援は、すべての被災者が生活と生業(なりわい)を再建できるまで、国と東電の責任で行わせる
維新の会
・ハード偏重からソフト重視の復興支援策に転換
社民党
・災害公営住宅への家賃軽減の縮小や災害援護資金の返済猶予期間の打ち切りなど、公的支援縮小に反対し、負担軽減・減免措置の継続と弾力的運用を徹底


2.防災省設置などの体制強化・変更 

 現在、期限付きで創設されている復興庁の継続や、後継組織に関する政策が争点として挙げられます。復興庁は、一刻も早い復興を成し遂げられるよう、被災地に寄り添いながら、前例にとらわれず、果断に復興事業を実施するための組織として、内閣に設置された組織です。その役割は、(1)復興に関する国の施策の企画、調整及び実施、(2)地方公共団体への一元的な窓口と支援等を担うとされています。しかし、創設された当初の目的は、東日本大震災からの復興であったため、復興庁は、2021年3月に設置期限を迎え、廃止となります。そのため、復興庁廃止後の次の体制が注目されています。政府は、復興庁を内閣府の外局として存続させる方針としていますが、これに対して、災害の多い日本では、復興と防災についての体制に合わせて言及している政党が多く、共通して、体制強化を訴えています。
  さらに、今後30年以内に70%-80%の確率で、発生するとされている南海トラフ沖地震への対策など、2021年以降の防災体制の強化・変更が争点となってきます。
  防災体制に対する各党の主張は以下の通りです。

自民党
あらゆる災害に対応可能な常設機関(「日本版FEMA」*米国の連邦緊急事態管理局(FEMA)の日本版)の検討
公明党
・復興庁の後継組織として復興・防災庁(仮称)を創設し、防災専門人材の育成と緊急体制を整備
・大規模災害対策として首都東京の中枢機能 の代替バックアップ体制の強化、 中央省庁・自治体の機能維持に係る「BCP」や関連庁舎の耐震化
立憲民主党
・減災防災から復旧復興まで一貫して対応する防災庁(災害対策庁)を設置
・南海トラフ地震の予想域からも外れている地域に首都機能の一部を分散移転し、地方分散型統治国家モデル検討
国民民主党
・経験・ノウハウを持つ全国の自治体職員をより早期に被災自治体へ派遣可能とする仕組みを新設
・ノウハウを持つ各府省庁の担当者を現地自治体に早急に派遣するなど国が責任を持つ仕組みを整備
共産党
・観測体制の整備をすすめ、消防や住民を中心にした地域の防災体制を強化
維新の会
・西日本の大規模災害に対応可能な大阪消防庁の設置
・大災害対応は都道府県と国の出先機関の協議会を作り、トップを都道府県知事に


3.生活再建・インフラ 

インフラ政策において、大規模災害に備えた整備が求められています。大都市でのブラックアウトやインフラへの打撃は、極めて影響が大きく、人々の暮らしだけでなく、日本経済をも揺るがしかねません。そのため、「インフラ整備」としては、公明党は、2020年までに、全国各地の防災拠点(約3万カ所=整備済みを含む)に整備公衆無線LAN(Wifi)の設置を訴え、自民党が物流システムや緊急輸送ルートの強化を訴えています。
 また、生活再建において、争点とされているのが、「被災者生活再建支援金の対象範囲拡大」についてです。被災者生活再建支援金は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに制定されました。自然災害で生活基盤に著しい被害を受けた人に対し、都道府県が基金を活用して被災者生活再建支援金を支給することにより、その生活の再建を支援し住民の生活の安定と被災地の速やかな復興を目的として作られました。
 簡単にまとめると、自然災害によって家などを失った、もしくは大きな損害を受けた人を援助する法律です。原則として、10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村が対象となり、その破損状況によって、援助額が異なってきます。全壊、解体、長期避難、大規模半壊と4つの被害の程度が分けられています。
 野党側は、この分類では、半壊や一部損壊が支給対象外になっており、判断も行政に委ねられていることを批判しています。そのため、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党は、支援の適用範囲を「大規模半壊」から「半壊」に広げることと、支給金額の最高額を300万円から500万円に引き上げることを訴えています。

住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)
全壊→100万円
解体→100万円
長期避難→100万円
大規模半壊→50万円


3.最後に

 被災者・地域の復興はもちろん、災害に強い国づくりを各党が目指していますが、どこに力を入れて行くのか、どのような手段でおこなっていくのかは政党ごとの違いが出ているのではないでしょうか。争点としては、2020年という復興期間終了という一つのポイントに対して、どのような政策をとっていくのか、防災に対して、どのような体制をとっていくのかが挙げられます。
 今回は、防災・復興分野についての政策を比較しましたが、JAPAN CHOICEでは、様々な分野での政策比較ができます!ぜひ、ご自身が気になる分野で、それぞれの政党の違いに注目し、比較してみてください!


▶︎ シリーズ15の争点 他の記事はこちら



★この記事はJAPAN CHOICEと連動して各党の公約を分析したシリーズです。ぜひ他の記事・サービスもご利用ください。

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復興庁ホームページ
http://www.reconstruction.go.jp
内閣府防災情報ページ「被災者生活支援法」
http://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/shiensya.html
日本経済新聞「復興庁、期限後も存続へ 防災機能を集約 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42034930V00C19A3MM8000/
ふくしま復興ステーション 
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/cat01-more.html
FNN PRIME 30年以内の発生確率は約80% 南海トラフ地震のメカニズムとは
https://www.fnn.jp/posts/00045235HDK/202001281537_FNN_HDK
データでみる震災復興のいま 3.11企画 - Yahoo! JAPAN
https://fukko.yahoo.co.jp/graph/

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