予算前

【2019参院選】【お金は嘘をつかない】予算でわかる政府の方針 -前編-

はじめに

 「政治とお金」というと、よくないことを連想する方もいるかもしれません。しかし、国のお金の使いみちは、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。そこで本記事では、今回私たちが投票を通して選ぶ国会議員の仕事の一つ、「行政予算の決定」を取り上げます。行政予算とは国がその年に何に、どのくらいのお金を使うかという計画です。予算が成立する過程と、過去6年間の金額の変遷を項目別に解説します!この記事を読めば、国のお財布事情が見えてきます。

まずは、予算がどのように決められていくのかをみていきましょう!

1.そもそも予算はどうやって決まるの?

 2019年の予算成立までの流れをまとめました(1)。

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①今年の予算をどこに重点を置いてつくるか等、政府が大まかな方針を決めます。
②各省庁に、「あなたの省庁は上限いくらまでなら予算を使っていいですよ」ということが知らされます。
③各省庁が予算を決め、財務省に提出します。
④財務省が審議した予算をもとに、政府案が閣議決定されます。
➄政府案が国会で審議され、成立します。
⑥当初予算の成立後、予算が不足すると考えられた場合には、補正予算という形で補います。

どうでしょうか?予算がどのようにして決められているのかをつかめましたか?
では、次は過去6年間の予算の変遷をみてみましょう!


2.予算はこの6年間、どのような変還をたどったの?

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 過去6年間(2014年度から2019年度)の予算の変化をグラフにしました。全体の金額と内訳を確認することができます。予算全体の金額は若干の推移はありつつ、大きな変化はありません。項目別に見ていくと、国債費が半分以上の割合を占めていることがわかります。続いて社会保障関係費、地方交付税交付金、その他の事項関係費、公共事業関係費の順となっています。

 なお、本記事で歳出予算を解説するにあたり主要経費別分類という分類を用いました。主要経費別分類とは政府の施策に着目した分類です。国債費や社会保障関係費、文教及び科学振興費など17項目に大別されます。

 歳出予算の分類には主要経費別の他、目的別分類と性質別分類があります。
 目的別分類は、主要経費別分類と似た分類方法です。明治初期から同じ基準で分類しているため、長期的な分類が可能です。使途別分類は、経済的性質による分類です。人件費や旅費、物件費など7つがあります(i)。

 予算の全体像を理解できたところで、主要経費別分類のうち金額の大きい下記5項目の予算について、概要とこの6年間の変化を詳しく解説していきます。
①国債費
②地方交付税交付金
③社会保障関係費
④公共事業関係費
⑤文教及び科学振興費

 この記事と、JAPAN CHOICE「予算の使いみちを知る」を使えば、あなたも行政予算の達人!「国が使うお金」という新しい視点で政治を見ることができます!


2.① 国債費

 まずは国債費からです。国債費とは、国の借金とその利子を返すためのお金のことです(ii)。 

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 現状、国が1年に使うお金は、税収とその他収入だけで賄うことはできていません。そこで、不足分を公債(国が発行する国債という債券と、地方公共団体が発行する地方債という債券を指す)を発行することで補います。公債は毎年発行されており、したがって、その元本と利子を返すためのお金(=国債費)も毎年の予算に計上されています。
 正確には、国債費は「債務償還費・利子及割引料・国債事務取扱費」から構成(iii)(iv)されています。それぞれの定義は下記の通りです(v)。


・債務償還費(公債等償還/借入金償還):借金(国債)の元本返済にあてられる費用。
・利子及割引料(公債利子等/借入金利子/財務省証券利子):国債(借金)の利子の支払いにあてられる費用。
・国債事務取扱費:公債の発行及び償還に関する事務取扱いに必要な事務費(vi)。


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 上のグラフからもわかるように、国債費はこの6年間減り続けています。
この背景にあるのは、2016年2月から現在まで続く日銀のマイナス金利施策です。先ほど説明した国債費の構成の中に、「利子及割引料」が含まれていましたよね!この利子は、想定金利を算出の根拠としています。想定金利が日銀によって引き下げられたことにより、利子も減額されることとなりました。
 歳出予算全体から国債費を除いた経費のことを、基礎的財政収支対象経費と呼びます。国の借金以外、つまり政策によって変化する経費だと思ってください(iv)。


2.②地方交付税交付金

 次に、地方交付税交付金について説明します。

 地域の経済状況などによって、それぞれの地方公共団体の財政力には違いがあります。それでも、地域ごとに提供する公的サービスに格差が生じないようにしなくてはなりません。そこで、国が地方公共団体の財政力を調整するために支出するのが「地方交付税交付金等」です(2)。

 総額は予算編成時に、地方財政計画によって決定されます。その後、94%は普通交付税、6%は特別交付税として各地方自治体に配分されます。普通交付税額は、基準財政需要額から基準財政収入額を引いた、財源不足額を基本として交付されます。特別交付税とは、普通交付税の算定に反映することのできなかった具体的な事情を考慮して交付されます。例えば災害などの緊急時に交付されることになります(vii)。

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 地方交付税交付金の6年間の変化は以上の通りです。この増減には各地方公共団体の財政状況が関係しています。2019年度の都道府県/市町村ごとの算定結果は7月に決定します。あなたの住む地域はどうでしょうか?

 歳出予算全体から1.国債費に加え、地方交付税交付金等を除いた経費を「一般歳出」と呼びます。地方交付税交付金「等」とは、地方交付税交付金と、地方譲与税剰余金、地方特例交付金のことです(vi)。
 地方特例交付金と、地方譲与税剰余金の説明は以下の通りです。


・地方特例交付金:個人住民税における住宅借入金等特別税額控除の実施に伴う地方公共団体の減収を補塡するための費用。
・地方譲与税剰余金:国税として徴収し、地方公共団体に譲与する税。地方公共団体の財源とされているが、徴収事務を国が代行している。


 いかがだったでしょうか。後編では、残りの予算項目の解説をします。是非、後編もご覧下さい。

▶︎【お金は絶対嘘をつかない】予算が教える政府の狙い -後編- はこちら



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◆脚注
(1)記事中の予算データは、「(一般会計+特別会計−重複額)で求められる純計金額」を使用しました。なお、記事内のグラフは全て100万単位での金額表記です。
(2)国税庁ウェブサイト 税の学習コーナー>学習・発展編> [国の財政] 歳出~地方交付税交付金等~ より引用

◆参考URL
(i)財務省ウェブサイト 用語の解説
(ii)国税庁ウェブサイト 税の学習コーナー 発展編 [国の財政] 財政のしくみと役割
(iii)財務省 平成31年度予算のポイント PDF版
(iv)財務省 日本の財政関係資料(平成30年10月)我が国財政の現状 PDF版
(v)財務省ウェブサイト 平成31年度財務省所管予算概算が決まりました
2018年12月21日掲載
(vi)財務省ウェブサイト 日本の財政を考える>用語集
(vii)財務省 地方財政について PDF版

◆グラフに使用したデータはこちら
予算及び財政投融資計画の説明/付表11/歳出予算主要経費別純計表(一般会計と特別会計の合計) PDF版
2019年度
2018年度
2017年度
2016年度
2015年度
2014年度
*2017-2019年度データはJAPAN CHOICE「予算の使いみちを知る」と同じです。

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