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【政党解説2023】 社民党ってどんな政党?

 皆さんは社民党をご存じですか?昔の社会党は知っていても、現在の社民党が掲げる政策や党の歴史については知らないという方も多いかもしれません。今回は、そんな社民党について詳しくまとめました。


基本情報

社民党の基本情報を以下の表に整理しました。

参考文献[1].[4]を基に作成

初代の党首はご存じの方も多いはずです。眉毛が特徴的な元内閣総理大臣の村山富市氏です。第2代の党首は、1989年の第15回参院選でマドンナ旋風を引き起こし、「山は動いた」とのフレーズで一躍、時の人になった土井たか子氏。そして、第3代党首に福島瑞穂氏が就任しました。10年間務めた後に辞任し、吉田忠智氏・又市征治氏がそれぞれ第4代・5代の党首を務めました。2020年に福島氏が再び党首に就任し、現在も務めています。通算在任期間は13年を越え、社民党といえば福島党首を思い浮かべる方も多いと思います。
[1].[2].[4]

党の変遷

 現在の社民党の源流はかつて55年体制(※1)の一翼を担った日本社会党に遡ります。1955年に右派と左派の社会党(※2)が合流し結党された日本社会党は1993年まで続いた自民党政権の対立軸として存在感を発揮しました。1993年には衆議院の議席数で過半数を下回った自民党に代わって非自民・非共産の連立政権が発足し、社会党もこれに参加します。1994年には社会党党首の村山富市氏が国会において首相に指名され、村山富市政権が発足しました。村山政権は1996年まで続き、退陣後の1996年1月に社会民主党が結成されました。以下に現在の社民党にいたるまでの変遷をまとめました。

連立政権についてはこちらの記事をご参照ください。

参考文献[1].[2].[3].[4]を基に作成

 社会党は、1989年の第15回参院選以降特に躍進し、1994年には首相を輩出しました。しかし、一貫して対立してきた自民党と連立を組んだことで村山政権退陣後に結党された社民党は党勢が低迷し、他党に合流する議員も増え影響力を低下させていきました。また、社会党は長年、非武装中立(※3)の立場をとり、自衛隊は憲法9条に違反していると主張してきました。しかし、社会党の村山委員長が首相就任後に自衛隊は合憲であると国会で答弁し、これまでの立場を転換させました。これにより支持層の離反を招いたとされています。そして、現在に至るまで衆議院・参議院ともに党勢の低迷が続いています。2021年の衆院選では1名の立候補者しか当選せず、得票率が2%を下回りました。2022年の参院選では得票率が2%を上回り政党要件(※4)を辛うじてクリアしましたが、今後も厳しい選挙戦が続きそうです。

(※1)保守・革新の2つの勢力が1955年にそれぞれ自民党・社会党に結集し、以降は政権は自民党が単独で担うも、野党第一党である社会党は3分の1程度の議席を有し、憲法改正に必要な3分の2以上の議席を自民党が獲得できない状態が長らく続きました。この状態を55年体制と呼びます。

(※2)社会党は、サンフランシスコ講和条約の調印に際し、
右派:西側諸国(アメリカや西ヨーロッパの資本主義国)とだけの講和(片面講和)を主張した勢力
左派:東側諸国(ソビエトや東ヨーロッパの社会主義国)も含めた講和(全面講和)を主張した勢力
の2つに分かれていました。

(※3)日本の再軍備・日米安全保障条約に反対し(非武装)、アメリカにもソ連にも与しない(中立)立場。

(※4)国政政党と認められるためには、国会議員が衆参両院で5人以上または直近の衆院選か参院選で有効得票率の2%以上という要件のどちらかを満たす必要があります。社民党は現在所属議員が3人しかいないため、得票率2%以上という条件を満たす必要があります。

[1].[2].[3].[4]

(参考)社民党結成後の国政選挙獲得議席数推移


参考文献[4]を基に作成


 参考文献[4]を基に作成


政党の主義主張

<社会民主主義>
社会党は、アメリカとソ連による冷連終結後、”競争最優先の市場万能主義に立つ新自由主義、強大な政治・経済・軍事力を背景に特定の価値観を押しつけようとする新保守主義が台頭している”とし、”社会の公正や連帯を掲げ最も厳しく対峙しているのが社会民主主義である”と主張しています。また、日本における社会民主主義の理念として”平和・自由・平等・共生”を掲げており、”アジア諸国を侵略・植民地支配した加害者としての歴史、そして人類初の原子爆弾による被爆国としての歴史を踏まえた時、あらゆる権利の実現に際し、その前提に位置づけるべき平和。そして、人々が自らの目標を定め、実現していく自由。一切の差別を否定し、すべての人々に社会参加の機会と権利を保障する平等。人間が人間らしく生きることを社会全体で支え、アジアや世界の人々との共存、自然環境との調和を目指す共生。私たちは、これら4つの理念を具体化する政策の実現に全力を挙げる”としています。

<護憲>
また、社民党は新保守主義の潮流と呼応するかのように戦後日本社会の礎となってきた憲法を改悪しようという動きも保守支配層によって頂点に達し、社会の存続そして人間の歩みに深刻な影響を与えている” とし、 戦争を放棄し戦力を保持しないとした憲法を変え、日本を再び「戦争のできる国」へと回帰させることを否定し、憲法の理念が実現された社会を目指すとしています。
[1]

他の主要政党との関係性

社民党は結党以来、自民党への対立姿勢を鮮明にしてきました。現在は、自民党だけでなく連立を組む公明党とも憲法・社会保障・経済・外交・安全保障など幅広い分野で異なる立場をとっています。一方、立憲民主党や共産党とは市民団体を介して、「市民と野党の共闘」を行い、参院選や衆院選での候補者調整による野党候補の一本化に尽力しました。ただ、野党の中でも日本維新の会や国民民主党とは選挙協力はせず、”自民党政権の補完勢力”と批判するなど、国会における法案ごとの協調に留まっています。
[2].[3].[7]

特徴的な政策

社民党は2023年統一地方選における政策集で
①いのちと健康、安心の福祉社会
②格差・貧困の解消と地域経済―非正規社会からの脱却
③地球環境と人間の共生―持続可能な農林水産業
④自治体こそ人権保障の砦
⑤戦争反対! 自治体を平和と民主主義の砦に!
の5つを政策の柱に掲げています。

このうち、特徴的な政策をいくつか取り上げます。

緑の分権改革 
豊かな自然環境や再生可能なクリーンエネルギー、安全で豊富な食料、歴史文化資産など各地の地域資源を最大限活用する仕組みを自治体と市民、NPO等の協働・連携により創り上げ、地域から人材、資金が流出する中央集権型の社会構造を分散自立・地産地消・低炭素型に転換し、地域の自給力と創富力(富を生み出す力)を高める社会を構築する。

教育予算GDP(国内総生産)5%水準の実現
対GDP比3%前半という他の先進国と比べて低い水準の教育予算を、世界標準といえるGDP5%水準(OECD平均)に引き上げるために教育予算の拡充をはかる。

パートナーシップ制度を推進
多様な性を尊重する共生社会を目指して「パートナーシップ制度」を推進する。あわせて自治体から「LGBT(性的マイノリティ)理解増進法」の制定を求めていく。
[1]

支持層の特徴


出典:参考文献[5]

 支持層の特徴として、若年層では相対的に支持が低く、50代以降は年代が上がるにつれて支持が高くなっていることがわかります。また、国政選挙における得票数の地域分布では社民党は九州に強く、特に大分県での支持が際立っています。要因としては大分県が社民党初代党首で元首相の村山富市氏の地元であり、地盤が強いことがあげられます。
[5].[6]

まとめ

いかがでしたでしょうか。55年体制の一翼を担った日本社会党でしたが、1996年に社会民主党として再出発した後は党勢の低迷に苦しみました。そうした歴史に加え、本記事では一貫して社民党が掲げてきた理念や政策も取り上げました。こうした政策が実現できるかは選挙の結果に大きく左右されます。その意味では今後、社会党が政党としての要件を維持できるかに耳目が集まりそうです。

※これまで議席順で政党紹介記事を投稿してきましたが、議席数が少ない社民党を先に投稿しました。れいわ新選組の記事は後日投稿する予定です。

参考文献 


[1]社民党.”社民党 SDP Japan”.社民党
https://sdp.or.jp/(参照2023-12-09)
[2]宮川 友理子、並木 幸一、佐久間 慶介 .“社民党は消えてしまうのか”.NHK政治マガジン
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/48247.html (参照2023-12-11)
[3]佐々木 森里 .“どっこい!ふんばった社民党政党要件維持も崖っぷち”. NHK政治マガジン
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/85760.html (参照2023-12-12)
[4]NHK選挙WEB "衆議院・参議院 選挙の歴史" NHK選挙WEB
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/history/ (参照2023-12-10)
[5] TBS NEWS DIG“.「10代と20代は圧倒的に自民党?!」「れいわを一番支持するのは東京の40代?」〜データから見えてくる選挙の意外なリアル、投票する前にちょっとのぞいてみませんか?~”.TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/88854?page=2 (参照2023-12-14)
[6]日本経済新聞 .“政党の得票率、あなたの市町村は?”.Vdata 日経
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/shuin2021-party-poll-votes-map/  (2023-12-10閲覧)
[7]日本経済新聞 “市民連合、野党4党と政策合意 次期衆院選へ連携強化”
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA073MY0X01C23A2000000/ (参照2023-12-14)



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