見出し画像

【実録】故親友S ジャイアン級の暴君と24歳でのお別れ


俺達の最初の出会いは小学校時代

1人だけあきらかに巨漢の男がいた

小学生の時に中学生並の体格で
顔も強面の孤独な男

それがSだった

俺も経緯はよくわからないんだけど
よく喧嘩をしていたS

というより喧嘩をけしかけられてたのかもしれない

小学生の時なんて身体大きいや小さい
足が早いだの遅いだので
優劣をつけたりイジメに発展したりするもんで

Sは当時から身体が大きいってだけで
目の敵にされていた印象だった

クラスは違ったんだが
俺が目撃した最初の衝撃は
校庭でサッカーをしてたやつらが
急にもめだして
S対10人くらいの喧嘩に発展した事だ

俺は当時から空手をやっていて昼休みはサッカーとかスポーツに興味はなく
とにかく高い所にいたんだ
たとえば遊具の上

こういう横から見たら台形のネットの遊具のいちばん高い所や

教室の窓から外にでて、ヘリの所(写真で言うとエアコンの室外機みたいなのが置いてるとこ)に立てるんだけどそこに出て校庭を見てたり(かなり危険なので絶対ダメです)

そこから人間を観察してたんだ。

そんな時にその大勢の喧嘩が始まったんだ

1対多数の漫画のような構図

1人を真ん中にして10人くらいがそいつを円になって囲んでいた

そこで子供の喧嘩が始まったんだ

でも傍から見ててあきらかに1人だけ異質で
最強に相応しい程に圧倒的で
多数を完封していた男それがSだった

周りのちびっ子達はみんな吹き飛ばされて
数でも勝てないだろって感じの喧嘩だった

結末は圧倒的にSの勝ちで
もう周りが諦めて終幕したような感じだった

当時俺はSとは面識はあったけど別に仲良い程では無かったんだが、そいつの実家がその小学校から近くにある八百屋でそこの息子だった
この時点でマジでリアルジャイアンだったんだ

仲良くなったきっかけはよく覚えてないけど
その八百屋には駄菓子も売ってて
当時俺は金なんてもちろんないから
Sの八百屋から駄菓子を万引きしてた記憶がある

その時に八百屋に入るやいなやSを呼んで
遊ぼうぜって誘ってそのついでにうまい棒かなんかを持ってこさせてた記憶がある

確かSのお小遣いが50円で
うまい棒が5個買えるからそのついでにもう2つくらいプラスして持ってきてもらってた

なぜ仲良くなれたのは今となってわかるのは
多分アイツは目の敵にされてて多くからは怖がられてたから、自分から友達を作ることもできないし、ましてや相手から遊ぼうみたいに誘われることも無かったはずだ。

俺は昔からあまり人を色眼鏡かけて見ないから
周りの目とか印象とか全く考えないでいれた性格だった
だからSにも普通に話かけたんだけど
どっちかと言えば俺はお菓子が食いたいって圧倒的個人的に要求をSを利用して達成していたんだ。俺の方がヤバい奴だったんだ

でも子供だからそんな打算的ではなく
純粋な欲求でしかなかった

そこで一気にSと仲良くなり
そこからは学校が終われば駄菓子を盗み
一緒に食って公園で遊んだり
地元が山だったから山に登り秘密基地とかを作っていた
エロ本もその時に見つけて覚えたんだっけな

そうして行くうちに学校でも俺がSと仲良くしてるもんだから周りの奴らもどんどん仲良くなっていき、同学年では中心的存在になっていった

Sは発想も豊かで
子供の頃によくある替え歌とかを作って一緒に歌ったり、確かメリーさんの羊の替え歌を歌ったりて爆笑していた記憶がある(かわいい)

急に新聞を作ろうぜって2人で話で
新聞を勝手に作って発行し
各クラスに貼り付けたりしたな
内容は覚えてないけど
美味い料理の方法みたいので
駄菓子と駄菓子を組み合わせたら美味いみたいな
記事を書いたりしてた記憶がある

あとはその替え歌の歌詞とか書いてたっけ

そんな発想豊かに思い立ったらすぐ実践してた頃、また喧嘩が勃発した

これはとある1人の生徒が元々起伏が激しい奴だったんだけどなんかをキッカケにキレて
図工で使っていたノコギリを振り回して暴れだした事があったんだ

その時にその頃のSは正義感が強くなってて
体もデカいか果敢にそいつを取り押さえ
なんとかしようとしてたんだけど
そいつがあまりにも暴れてノコギリは手放したがSの背中に丸ノリし背中に噛み付いたんだ
今では本当に笑える話なんだけど
当時は子供だからみんな悲鳴の嵐で
Sに噛み付いところを更に俺が後ろから抑えて場を抑えた事があった。

そこからだ。
Sはその勇気をみんなに認められ一躍ヒーローみたいになって一気に人気者になっていったな。

その噛み付いた奴に関しては俺も仲良くなろうと思ってそいつの家に遊びに行ったりしてそいつの家でゲームした記憶がある

まだまだエピソードあるけど長くなるから次に進む
そこから中学生になり俺とSは別々の部活をしだす。
そこでそれぞれのコミュニティはできるけど
やっぱり仲良いから結構頻繁に遊んでて
思春期だから好きな子もできたりして、中学生なりの青春をしてた

そこから夜遊びもするようになって
学校に錬心舘って道場があるんだけど
そこに夜忍び込む訳だが
やり方があって

よくあるこういうすりガラスの空気を入れる用の窓があるんだけど、これを片方の窓枠ごと上下に外から揺らすと内側の鍵が振動でどんどん動いていくんだ、そうやって鍵を外から解錠して中に忍び込んでたんだ。

道場だから広くて畳張りで俺らからしたら最高の環境だった
そこで中学生ならではのバク転の練習とか逆立ちしながら腕立て伏せの練習とか柔道っぽいことしたりと、悪い事なんだけどそれが俺らの青春の1部だった

そこから俺はタバコを覚えて
タバコも吸うようになったんだが
Sはタバコだけは吸わなかったな

とにかく夜遊びにハマっていった
錬心舘侵入に飽きてきたら
次は中学校のプールに忍び込み
夜のプールを全裸で泳いだり
ガスコンロを持ち出し山の麓で
みんなで鍋や食材を持ち寄って
野良鍋をしたりした

その遊びに飽きてくると次は山を降りて
夜の街に繰り出すことになる

本当に田舎の人間は繁華街の事を
街って呼ぶんだけど(かわいい)

口癖は「街行こうぜ」だった

自転車を漕ぎ山を降りて
夜の街に繰り出す

行きは15分で街に行けるんだ

ただまだいっても中学生だから
本当の繁華街は怖くて数回しか行けなかったんだけど、繁華街の近くに公園があって
そこにたむろするのが楽しい時期になっていた

特にすることなんてないよ
ただそこに行ってくだらない話して
コンビニでレモンティーの100円1リットルパックを買ってストローさして飲みながら雑談するってだけさ

それがたまらなく楽しいんだ

その頃は千円くらいは持ってたから
近くの250円ラーメンってのがあってさ
そこにいつめ腹を膨れさせに行くんだよ

味なんて美味くないはずなんだけど
当時はこれが世界で1番美味いって思ってた

味なんてのはコショウの味しかしねぇけど
おじさんになった2023年の今でも
その味は覚えてるよ

ちなみにこの頃は2人じゃなくて5人くらいと行動をしてた

そこからちょうどハンディカム(手持ちカメラ)が流行りだした時代で
ビデオを撮れる楽しさに気付いて
いろんな動画を撮ってた

なんか今思い出して涙がでそうになるくらい
良い思い出

海も近くにあるからそこにみんなで行って
防波堤から海に飛び込む動画だったり
フェリーに乗って桜島まで行って
桜島の火山周りをチャリこいで回ったり
疲れたら海に入って近くの安い弁当食ったり
ゲーセン行っていろんなゲームしたり
また俺たちは自転車で地元の山に1時間かけて帰っていく訳さ

帰りの最後の急坂なんてキツイんだけど
そこを1度も自転車から降りないで登りきったり
キツイ帰り道でも俺たちにとっては遊びだった

そして高校生になり違う学校になるんだが


そこから事態はおかしくなっていくんだ。


俺はバリバリ体育会系の男子校に入学し
Sは私立の共学校に進んだ

高校生にもなると更に交友関係も広くなり
俺はもっと他校の不良達と仲良くなっていく
はっきり言って俺はまったくヤンキーとかではない
不良っちゃ不良なんだろうけど
ヤンキーみたいな不良にはならなかった

でも増えていく友達はそんな人たちばかり
暴走族に入るやつとか犯罪するような奴とかは友達にいたけど
俺はそっちには全く興味を示さず
ただ友達として楽しいやつとつるんでいた

一方Sは私立のそこそこ良い学校に行ったから
そういう不良みたいな奴はあまりその高校にはいなくて、普通の高校生活を送っていた

それでもたまにSと会って
いつもみたいに夜の街に繰り出しその頃からは
バイトもお互いしてたからもう250円ラーメンとかではなく、ちゃんとした飯屋に飯食いいったり
夜のクラブに遊びに行ったりして遊んでいた

だけどなんか少しずつ違和感を感じるようになった

なんだかSの奴の性格が変わったように感じていた

小学校時代からの暴君で強気で、でも心優しい男だったんだけど
高校生になってからなんか凄く内気になっていってたんだ

角がまったくなくなっていって
丸くなりすぎるほど丸くなっていた

俺もいろんなコミュニティができて
いつしかSと遊ぶ頻度は結構減っていってて
最後にちゃんと遊んだのは
どうだろう
多分高校3年生くらいの時にSの家で話したのが
最後だった気がするそんなレベルだ

内気になっていったSは高校で新たなコミュニティが作れていなかった訳ではないんだが
全部元々の中学が同じやつばかりだった
他校のやつは数人くらいしかいなかったな

そう。高校生になって
環境の変化についていけなかったんだ
それでも俺はそんな事に気づかずに
俺と会えばいつものように
昔のように
楽しい時間を過ごしていたし
俺にはそんな素振りは全く見せてなかった
だから俺も高校生活楽しくやってるんだろう
くらいにしか思ってなかった

気づいてたのは内気になったな
くらいだった

そこから社会人になって俺は働き出すんだが
俺は稼がないと行けない理由があって
もうずっと仕事しか意識がなくなっていった

そこからタイトルにある通り
24歳のそいつとお別れするまで
俺はずーっと仕事をして20歳の頃には地元を離れ他県に行き
Sと遊ぶ時間てのは全くなくなっていった

たまーにSから俺に電話がきてた

最初の頃は昔話をして笑いあってたんだが
だんだん毎回の電話がその話ばかりになって
俺は違和感を感じた

俺はSの生活を聞いてると
いつもバイトしてるって回答だった
それがいつしかどっかに就職した方がいいぞって俺は話したんだけど
俺は気付いてなかったんだ

Sが極度の鬱状態になっていた事を

18歳から結構会ってなかったから
ちゃんと把握できてなかった
そしてそれに気づいてから1度地元に戻って
Sと会うことにしたんだ

数年ぶりに会うSは
髭面で身体も丸くなり
人相が少し変わっていた

それでも俺はおかしいと思いつつも
口には出さずにいつものように接して
一緒にラーメン食いに行った後
Sが今叔父の家に住んでるって言うもんだから
その家に一緒に行ったんだ

なぜ実家じゃないのか気になったが
いろいろ事情があるって言ってた

何とか俺はSを社会復帰させた方がいいと思い
いろんな仕事の事を教えて
これはこういう仕事でお前に合うんじゃないか?
今のバイトはどんな感じなんだ?
俺のその時できる全てのアドバイスをした

でも今となっちゃその時にSへのアドバイスは
あまり意味がなかったんだ

Sはやたら先の、未来の、面白い話をしたがってた

今度ここに行こうぜ
とか
海外のここが面白そう
とか
俺に話しかける内容は未来の話ばかりだった

あの時にそうだな行こうなって
当たり障りなく同調してやるのが正解だったのかもしれない今思えば

でも俺はそいつをどうにかしてやりたい気持ちが優先して
現実の話をしてしまったんだ

その未来を実現するために
今!こうしないといけない

半ば説教じみた事を話してしまった

Sはそうだね、俺頑張るよって
返事で終わっていった

俺はSを信じてたし
お前なら絶対やれるから大丈夫
がんばれ!って

鬱状態の彼には重荷になるような事しか
言えなかった

そして時は経ち
俺はその頃東京に住んでたんだけど
Sから久しぶりに電話がきた

その時のSの声は
喉に肉が付いたような声で
滑舌も良くなかった

俺は高田馬場の人気のいない路上で
Sと電話をしていた

その時もSは未来の話をしていた

俺は、前と同じだ…
と少しショックに近い感覚で
話を聞き続けた

なんて言えばいいのか正直わからなかった

わからないなりに
俺は

まず一旦金少し貯めて
東京に遊びに来い!と言った

飛行機代くらいはバイトでも大丈夫だから
それ以外は俺が全部出すと思っていた

Sは少し声色が明るくなった

遊びに行くよ!

俺とSとのその時の可能な限りを尽くした
未来の話は東京で会う事だった

多分お互いにそこに関しては
未来であり
現実であり
希望である落とし所だった

電話を切り

数ヶ月後


Sは死んだ


死因は臓器不全


鬱状態で家から出れなくなってて
内蔵がダメになり
24歳という若さで死んだんだ


その報告は共通の友人からだった


俺はその友人からの通知だけで
悟った


葬式は行かなかった


俺は日にちをズラし
葬式に行かず
後日、Sの実家に行った


懐かしい団地特有の湿っぽい匂い
ああ懐かしいって思った

数年ぶりにあがるSの家

そこには顔馴染みのSの両親と
Sの仏壇

俺は手を合わせ
涙は出なかった

両親にいろいろ状況は聞いた

バイトなんかしてなかった

そんな気はしてた

15歳高校での俺らの分かれ道

もし俺と同じ高校だったなら
なんて思ったりもした

両親も大変だったんだと思う
我が子だからな

俺は両親にSとの思い出を
親元を離れて遊び倒した話をできる限り
全部した

小学校の頃おじちゃんおばちゃんが作ってきた八百屋の駄菓子を万引きしてた事も知っていた

夜遊びの件は知らなかったけど
Sの親も知らない顔を知れて嬉しかったんだろ
とても喜んでくれてた

俺とSの両親
3人でのボロくて小さな団地の部屋での時間
今でも鮮明に覚えている

俺は両親が少しでも笑顔になってくれて
よかったと思った

帰りにSの親父に墓の場所を教えて貰うために
Sの親父の車の後を追って車を走らせた

ここだよ。と教えてもらい
親父と別れた。


あれから10年
俺いまだにSの墓には出向いない


行きたくないんだよ


まだどっかにいると思ってるからさ



ここに書いてない思い出や話はまだまだ
沢山ある
それをいつも少しずつたまに思い出しながら
話しかけてるよ

俺とSには約束した未来があるからな




























どっかで待っとけよショウタロウ


また遊ぶぞ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?