明朝体8種類の感想を書いてみる

以前に出した同人誌「書体好きのエッセイ」で、好きな書体について書いた。けれど、そこでは組見本も示してないし、ちょっと感想としては内容が薄い気がしたので、このnoteというスペースを使って、本文向け明朝体8種類の感想を書いてみる。

こういうのこそ同人誌に書いたほうが良いんだけど、もう次はいつ発行できるか分からないので……。あと、肝心な組見本の画像がぼやけているんだけど、これはどうしたら改善できるんだろう? 画像をクリックすると拡大表紙されるのでぜひ。


リュウミンR-KL

最もよく使われており、最も無難な明朝体。縦組みでは凛とした表情を見せるほか、仮名がするすると流れていくような動きを見せるので読書がはかどる。そこそこ仮名が大きめなので、横組みベタで組んでも字間のパラつきが目立たない。先日書店で見た、原研哉さんがデザインしている「この旅館をどう立て直すか 瀬戸内デザイン会議」という書籍の本文書体に使われており、上品でものすごく綺麗だった。

難点を挙げるとすれば「面白くない」とか「見飽きた」ということ。使い方によってはすごい事務的に見えたりする。あと生真面目なサラリーマンみたいに思えたり。真面目なテキストではそれでも良いが、少し表情を付けたいときにはあまり似合わない印象。


リュウミン R-KO

「リュウミンオールドがな」と言われるのがこれ。築地体後期五号に出自を持つ仮名であるが、おそらく写研のMM-OKLを意識していると思う。筆者は上記のR-KLよりこちらのほうが好み。ツイートにも書いたが、以前MM-OKLを本文に使っていた「母の友」という雑誌が今この書体に変わったものの、全く違和感がなかった。あえて言うなら「な」の形があまり好みでない。やや湿気が強いので、大きく使うとそれが目立つかも。なんかおばあちゃんが話している文字のような安心感。


リュウミンR+游築五号仮名W3

游築五号仮名は元々、ヒラギノ明朝体との混植を目的として作られているが、雑誌などではリュウミンとの混植が圧倒的に多い。かつて、これより太いウエイトが、有山達也さんがADを務めていらした時代の雑誌「クウネル」に使われていたとおり、すごく淡くて優しい印象の強い組み合わせだ。ナチュラル系の本に多く、筆者は雑誌「リンネル」での使用例が好み。淡さが魅力と書いたが、今にも消えてしまいそうなくらいに儚い。それがちょっと不安になる。なので↓


游明朝体+游明朝体五号かなM

この組み合わせのほうが黒みがあり、どっしりとした印象が強いので安心して見ることができる。まだあまり本文書体としての使用例は多くないが、モリサワパスポートに入ったので、これから増えていくのだろう。仕事でも非常によく使う組み合わせ。


游明朝体M

普通の明朝体。普通ではあるが、手垢のついたリュウミンよりは個性を感じる。この書体からはなんだか生活感を感じる。家の台所の風景が脳裏に浮かぶ。やや苦労人かもしれない。だがそれゆえの奥ゆかしさがある。普通なのに物語がある。難点は奥ゆかしすぎて刺激が少ないので、読んでるとちょっと眠くなるところ。横組みベタのサイズもちょうど良いと思う。


筑紫明朝R

この書体のクセのある骨格を嫌う人もいるが、むしろ筆者は骨格は気にならなく、むしろ好き。最初に見たとき(2000年代中盤くらい?)の印象は「墨溜まりが気になるなあ」であった。ただ、よくよく観察してみると、自分が気になるその部分は「た」の最終画の最後の盛り上がりだけかもしれない。ひらがなで一番好きな文字が「た」なので、この文字にノイズがあると気になる。刺激が強いが、ときどき物凄く心が欲する書体でもある。元気なときにはこの刺激が心地よいし、弱ってるときにはつらい、そんな書体。緊張感が強く、ガラスみたいな書体だなとも思う。

ちなみに筆者が書店で手にとる〈内容が面白そうな本〉は大体、本文がリュウミンか筑紫明朝で組まれていることが多い。やや現代的な、難しすぎないライトな本が多いからかもしれない。


秀英明朝L

これも筑紫明朝と同じく、心がとても欲する書体だ。筆脈がありネバネバしているが、むしろそれが心地よい。が、使う立場になるとやっぱり筆脈が気になる。難しい。読点は大きめに作られているが、それがアクセントとなっており心地良い。游明朝体のところで「生活感のある書体」と書いたが、この書体にも生活感を感じる(そもそも游明朝体が、秀英明朝を参考に作られたものなので……)。

だが、筆者の読みたい本は、あまりこれで組まれていないように思えるのは気のせいだろうか。自分より年齢層が高めの人に向けた本で使われているという印象だ。


本明朝新がな

この書体を初めて見たのは、おそらく「無印良品」のカタログとかだと思う。仮名がすごく綺麗だと感じた。見てすぐ欲しいと思った。女性的な内容に似合いそう(というの、昨今のジェンダー感に合わないよね)。しかし一時期は苦手だった。曲線が多いので、本文に使われると、そのウネウネしたところが気になって仕方がなかった。だが最近克服した。不思議。これから仕事でも使うと思うけど、漢字がそれほど好みじゃないかな。


もうちょっと気持ちに余裕ができたら、PDF版もつくります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?