見出し画像

私が「異世界転移モノ」の最高傑作を教えてさしあげます

・異世界モノのファンタジーで(キリトだ…)

・あちらの世界に行くと強い力を発揮し(キリトだ…)

・素敵な彼女と戦いのさなかに出会ったり(キリトだ…)

・世界の危機を救うために奮闘したり(キリトだ…)

・元の世界に戻っても彼女との絆は深く残り(キリトだ…)

・核爆弾の東京投下の阻止に奮闘する

エイサップ鈴木くんだ!!!!!!!!!!!

 先日から、異世界ものファンタジーの小説界隈が騒がしいですね(よくわかってない)。近年、異世界に転生や転移しては、力を得て無双する主人公が描かれる作品が多くみられているようです。そうか、そういったタイトルが若者に受けているのか。

 私も知っています。異世界転移モノの最高傑作。富野監督の『リーンの翼』っていうんですけどね!!!

 もう10年以上も前のアニメーションですが、今も色あせることなく、何度見ても「後世に残すべき作品だ」と私に思わせてくれるタイトルです。

◇◇◇

 主人公は、日本人と米兵のハーフ。とても実直で、視野も広く、好感の持てる青年です。常に自分の行いは自分の行いについて考え、苦悩もしています。

 そんなエイサップ鈴木の純朴さが認められてかは分かりませんが、彼は「リーンの翼」と呼ばれる靴に選ばれます。その靴は、神話のような世界「バイストン・ウェル」と現実世界を行き来できる特別なアイテム。まさに主人公アイテム! バイストン・ウェルで彼は、特別な生体兵器を操り、戦士として認められます(いいぞ、これは今、流行るヤツだ!)。

――そんなエイサップの住む周囲は、在日アメリカ軍が駐在し、それに反発する青年たちがテロを起こすなど、穏やかではありません。テロを起こした青年たちも、在日として迫害を受けていたり、軍の関係者を父に持つことで批判されていたりする、エイサップの友人たちです。きっと彼らは、差別される側として、お互いを身近に感じていたのだと思います。

 そんな時勢を背景に描かれたアニメです。ファンタジックな世界設定とは裏腹に、アニメとは思えない、リアルな世界。いや、10年以上前のアニメに、今の日本が追いついてきてしまった。こんな未来はあってはいけなかったのに。

 それだけ聞くと、なんだか難しい政治のようですが、私はそんなこと無視して、もっと「感情的」にこのアニメを見てほしいと思っています。

 テロの混乱のなか、東京湾には生体エネルギーを持つ巨大な兵器がバイストン・ウェルから突如現れ、米軍機や自衛隊と戦闘になります。そんな洪水のような展開のなかで、主人公・エイサップは運命の少女と出会う。

 その少女の父は、第二次世界大戦中に特攻兵器・桜花の乗組員だった男・迫水王です。「リーンの翼」はその男を選び、戦時中にバイストン・ウェルに連れ帰ってしまった。

 迫水王はバイストン・ウェルで一大権力を握りますが、一貫して「鬼畜米英」の概念に囚われた悲しい男です。迫水王の叫びはすべて、戦争で死を覚悟して死にきれなかった男の断末魔です。そんな男を簡単に物語上の「敵」と呼ぶにはあまりにも気安い。どんな背景をもって下記のセリフを迫水王が放ったのか、ぜひ作品を見て感じてほしいのです。

「沖縄に背を向けなければならない悲しさ、無念さ。それをわかれ、鈴木くん! 東京にいる俗物どもにも、わからせる」

「リーンの翼は、沖縄の命、大陸、関東からのその力をもって、武力をつかうものを成敗する!」

「天皇のいない東京天国など消せばいい!」

 リーンの翼の意思で、原爆や沖縄戦、東京大空襲の凄惨さを見せつけられた迫水王は、オーラ力を暴走させながら東京上空を舞台に無差別な戦いを繰り広げます。守るはずだった東京、国、天皇へ絶望して。こんなに悲しいことはない。けれど、彼の想っていた日本と今の日本は、きっとあまりにも違い過ぎる。高度経済成長期にみえる都市の変化は、彼の目には恐ろしく映ったでしょう。

◇◇◇

 と、ここまで書いて、何の手応えも正直ありません。あまりにもこの作品を批評するのは難しい。私は何度も本作を見返していますが、そのたびに、ただ茫然と、エイサップの純粋さやヒロイン・リュクスのたくましさ、そして迫水王の圧倒的な存在感やその言葉ひとつひとつに飲まれてしまって、何も言えなくなってしまうのです。

 人間は、力を持つとそれを試したくなる、駆使したくなる生き物です。それを富野監督は私に教えてくれました。本作においてもそれは描かれており、エイサップの友人は、無邪気に核爆弾を東京へ落そうとする。

「1千万人以上の人間を殺すことになる!」

「心配すんなって、それでも1億人はいるんだから!」

 そんななかで、エイサップはあくまで「力とは、未来を築くためにふるうものだ!」と言ってくれました。絶望があまりにも多い作品ですが、救いも多い。

◇◇◇

 富野監督作品ですから、慣れない人ははじめ、「何が起きているんだ!? 知らない単語だらけだし、展開がすごすぎて何がなんだか!?!?!?」と混乱することがあるかもしれません(笑)。ですが、まずはその波に飲まれてほしいと願っています。そして一息ついて、ゆっくりと反芻して、何を感じたか考えてほしい。

 「異世界移転モノ」ファンタジー作品として、これを超えるものを今のところ私は思いつきません。あ。『ダンバイン』好き。

 オーラ力を手に入れた主人公は強いし、聖戦士とか呼ばれちゃうし、かわいい女の子にめっちゃ惚れられて「離れている間、辛かった、あぁ!あぁ!」と縋るようにちゅっちゅされちゃうし、そのパパ(迫水王だけど)からは「婿になるか!」とか認められちゃうし、完全に「俺強い異世界移転モノ」ファンタジーなので、流行るべきだと思います。

 ちなみに、今なら(2018年6月現在)プライムビデオで見放題だし、6話で完結するのでお手軽! 見るっきゃない!

Amazonビデオ ~ 富野由悠季
『リーンの翼』: http://amzn.asia/3CzeNTs

ついでに、私の大好きな『キングゲイナー』も今なら無料で見れるのでリンク貼っておきますね!!!!!!!

オーバーマン キングゲイナー : http://amzn.asia/h3orofa