いいから遊べよ!強引な『SEKIRO』レビュー #SEKIRO

 2019年3月22日に発売した、フロム・ソフトウェアとActivisionのコラボによるアクション・アドベンチャー『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(隻狼)』。フロムのゲームと言えば高難度のアクション性と、独特の世界背景が最大の特徴です。私はそのフロムならでは(と言っていいのか、宮崎さんならではと言うべきかわかりませんが)、そのどこか陰鬱で美しいデザインが大好きでした。例えば『Bloodborne』では、クトゥルフ神話を彷彿とさせるゴシックかつ、ホラーともオカルトとも形容し難い“何か”が淫靡に私の目には映り、そのビジュアルとテキストに私を含め多くの人が虜になったと思っています。

 さて、そんなフロムの新作は、忍を主人公とした、和風の世界を描く『SEKIRO』。ネット上ではよく「死にゲー! 死にゲー!」と揶揄されています。もちろん、雑魚敵相手にも気を抜けない骨太なそのレベルバランスは、まぁこれでもかというほどによく“死に”ます。でもそれは、決してゲームオーバーではありません。何度だって蘇り、何度だって立ち向かう。反骨精神こそが、本作でプレイヤーに求められる唯一のスキルです。

 古き良き日本らしさあふれる美しい世界を、ワイヤーアクションで駆け巡りながら、時には大胆に、時には忍び敵の背後をつき確殺する爽快感。1対1での手に汗握る剣戟による駆け引き……。そしていつの間にか、“この世にあってはならない何か”の世界にじわじわと足を踏み入れてしまっている、ただの「和風アクションゲーム」ではない世界背景を、ひとりでも多くの人に遊んでもらいたいと思っています。

■“私”を育てるゲーム、『SEKIRO』

 私は以前、ゲームメディアの編集部に勤めておきながら、ゲームが下手で下手で、それこそレベル上げをすればなんとかなるRPG、リズム感は悪いほうではないので、リズムアクション。このふたつしか、皆さまにお見せできるようなプレイはできません(笑)。悲しいかな、ゲームを愛せど愛されず。まさにフロムのゲームも、愛せど愛せど、振り向いてもらえぬタイトルばかりでありました。恥ずかしながら詳細に言うと、『ダークソウル』で最初の篝火(レスポンスポイント)に辿り着けなかった経験を持っています。私の最大の短所は、方向音痴、すぐに混乱する、反射神経が鈍い、という、まさにアクションに必要なものを母親の胎内に置いて生まれてきた申し子であります。(ただ一度だけ大昔に、『機動戦士ガンダム 連邦VS.ジオン』ではブイブイ言わせていました)

 そんな私が、「難しい! ゲームのうまい人でも必死になる!!」と煽られるフロムの新作『SEKIRO』を、こんなにも毎日楽しんでプレイしている! それはひとえに、遊ぶたびに、敵と対峙するたびに“相手に自分が育てられているのを実感できるから”といえます。本作はまさに“気付き”のゲームです。初見では、圧倒的な力の前になす術もなくやられてしまったとしても、何度か対峙することで「もしかして、こいつは私にこういった動きをさせたいのか? こういった動きも可能だと暗に教えてくれているのか?」という、気付きを与えてくれるのです。あとはそれに忠実に、体に叩き込んでいくだけ。数学で公式を覚えてしまえば、あとは応用が効くかのように。悩み、気付き、実験し、何度も何度も私は敵と対峙し、“死ぬ”のではなく、倒れるたびに私は“生まれ変わる”。そんな体験を味わえるタイトルだと感じます。すべての敵は、『SEKIRO』作中で敵は圧倒的な越えるべき存在でありながら、アクションというものを体に教えてくれる先生でもあります。

 ただ先生たちの多くは、「汚いなさすが忍者きたない」と罵られつつも(笑)、背後に回って忍殺で体力を削ることも可能です。それは、忍が忍として生きるのに重要なスキルですから汚いも何もないのですよ! その“してやったり”といった感覚も、本作の魅力のひとつです。

■戦術と戦略、ふたつの要素を兼ね備えるフィールドバトル

 義手忍具と呼ばれる装備品も、プレイの戦術の幅を広げてくれます。動きの速い敵に有効な手裏剣や、敵の持った盾を一刀両断にしてくれる斧など、種類はさまざま。それをいかに使いこなすかを思考することが、戦術的に相手を倒す楽しさとなっています。もちろん「この敵にはこれが有効」なんていうそれとないヒントもあるところが本作での優しいポイントであったりもします。私は犬のような素早い敵が苦手なので、主に手裏剣で倒します。汚いなさすが忍者きたない!

 また何より、鉤縄(ワイヤー的な)アクションによって、高所からフィールドを見渡すことが可能になり、マップ表示の存在しない本作のなかで迷子の可能性を必要な限り防いでくれるのもうれしいポイントでした。かつ、落下攻撃によって敵を確殺するといった、立体的な立ち回りも楽しめるようになっています。まずは相手の位置を把握し、戦略的に雑兵たちを次々と薙いで行く快感……。もちろん、そのパズルを組み立てること自体も試練となっていますが、うまく思い描いたように敵をバッサバッサと切り倒して行けた時の多幸感はひとしおです。また、ある程度「ここのフィールドの敵は覚えたな」と感じたら、鉤縄を駆使して駆け抜け、倒したいボスに向かって一直線に走ることも可能です。これによって、繰り返し戦うべき相手とすぐに対峙できるというルートが完成し、再戦するストレス値がだいぶ軽減されているように感じます。

■対峙すればするほど、愛着のます敵キャラクターたち

 私が最初に「これは敵わないかも知れない……」と爪を噛みながら毎日手に汗握って戦った敵が、多くの人を悩ませたであろう“まぼろしお蝶”です。お蝶は過去の記憶を描いたフィールドのボスで「裏からまずは忍殺!」といったお得意のプレイが叶いません。一度倒しても蘇り、新たな攻撃パターンをもってプレイヤーに素早い攻撃を仕掛けてきます。そのスピード感に初めは慣れず、攻撃を防ぐこともできず、防戦にすら持ち込めないばかりでした。破れるたびに「まだまだ子犬よのぅ……」と囁かれ、何度その言葉を聞いたかは数え切れません。

 対峙すること、正確には覚えていませんが、最低16時間くらい。毎日コツコツと彼女と戦うたびに、ひとつづつ彼女の動きが“見える”ようになっていく……。戦うたびに、その荒々しい連撃と、たまに見せるセクシーな所作から、彼女の若いころは一体どんなであっただろう、と夢想するようになっていきました。彼女は、主人公の幼い頃と因縁のあるキャラクターでもあります。ちょっとした言葉の端から、主人公への愛情を感じられる気もして、倒した時には切なさが残ります。敵との戦闘は、そのキャラクターとの対話でもあります。作中では、何かに対して強い“想い”をもったキャラクターが多いことも印象的で、倒した後はもちろん激戦後の爽快感もありますが、なんともいえぬ感傷が残るのです。

■弦一郎、倒すぞ。お前、絶対倒すぞ

 本来であれば、私はある種ひとつの区切りである“弦一郎”を倒してからこのレビューを書こうと思っていました。問題は、毎日毎日戦っていますが、まだまだこりゃぁ敵わない(笑)。けれども、今まさに本作をプレイしていて「楽しみ方がまだわからない!」といった方や、「買おうかどうか悩んでいる」人に、早く伝えねば……! という使命感のようなものを感じ、PCに向かいました。弦一郎は、今まで私が戦い、そして教えられた数々の経験を生かすために存在するような敵です。かつ、ただそれだけではなく、新しい攻撃手段を駆使してくる敵です。まさにテスト。私はこのテストをクリアーしなければいけないと、ゲーム側から提示されています。

 毎日3時間だけと決め(嘘、もっと遊んでいる時もある)、こつこつ弦一郎戦をプレイしています。敵ながら、やはり憎めない彼。しかし、私には守るべき主がいます。その“子ども”はとても芯が強く、しかし彼だけの持つ大きな悩みに心を乱されており、そんな彼を守らねばならないと思わせてくれる、愛すべき主です。主のために、私はどれだけ時間が掛かっても、弦一郎を倒さねばならない……!

 ただ毎日毎日、飽きもせずに負けてばかりいます。しかし、毎日毎日“次のステージに行く確率が上がっている”、“この攻撃の対処方法が体に染みついてきている”、“この攻撃を上手に対処できるようになれば、ダメージの少ないまま進行できる”など、私自身の成長と気付きを日々得ています。きっと、倒すのも時間の問題でしょう。ハッハッハ(ただし、何時間かかるとは言っていない)。

 今より次のプレイのが絶対に私は上手にできるはずだ! だから、もう一戦、もう一戦だけ……! と心が急くのを毎日感じています。ただプレイするにあたって、本作は集中力を必要とします。ですので、対処法が見つからないと感じたら、もうその日は終わりにして、体と心を休ませるのが最大の攻略であるとも思っています。

■いいから『SEKIRO』しようぜ!

 一点、切ないポイントを挙げるとすれば、本作はとても“ゲームライク”です。「落ちたら即死。だって普通に考えたらそうでしょう?」といった、フロムの今までにあった生々しい要素はそぎ落とされているように感じました。それによって、テンポのよいゲームバランスを生み出しているようにも思います。ただ、フロムのアクション初心者ゲーマーにとっては、ありがたい調整であることは間違いありません(笑)。

 前述の通り、私はゲームが下手ですが、とても楽しく毎日プレイさせていただいています。本作はオンラインプレイを排した完全オフライン制となりますが、それがまたプレイヤーをゲームに集中させる新しいおもしろさを生んでいるようにも感じます。オフラインならではの楽しみ方もあり、それこそYoutubeで上手な方のプレイを見て勉強することも楽しみ方のひとつです。また東京の家にはゲームのうまい人間がいるので、攻略方法を聞いたり、隠し通路を教えてもらったりなど、古き良きかな、“ゲームがコミュニケーションのツールのひとつ”にもなっています。

 こっちの水は甘いぞ……。ゲーム好きよ、こちらの世界へいらっしゃい。もしクリアーできなかったとしても、そこに至るまでで十分にあなたはよく学習、訓練された“ゲームプレイヤー”へと育て上げられているでしょう。トロフィー情報を見ると、2019年4月11日現在、まぼろしお蝶をの撃破率は49%、弦一郎の撃破率は38.6%です。この数字を一緒に越えてください。私は毎日、この数字が更新されていくのを苦々しく、けれどうれしい思いで見ています。私を越えていく人がいる。ならば私も、早く前に進みたい。そんな気持ちで、毎日PS4を立ち上げています。


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ミゲル

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ミゲル

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