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曲作りの3つの落とし穴 - 国際作曲コンテストの審査員をして気づいたこと

毎年1-2月はなぜか審査員のご依頼をいただく月で、今年もがんばって大量の楽曲を拝聴して点数をつけをしていました … 汗。

私は音楽は「聖なる神様のしごと」だと思っているので、誰かが一生懸命作った神様のしごとに「点数を付ける」という行為が冒涜に思え、毎回冷や汗なのですが…でも、だからこそご依頼いただくとお断りしたくなくて、真剣に向き合っています。

たくさんの国際作曲コンテストで審査を経験した結果、作曲について深堀りするチャンスになり…見えてきたのですよ、作曲の3つの罠が! noteにはたくさんの音楽家がいらっしゃるようなので、少しでもお役に立てばと思い、シェアさせていただきますね!

1.ええ曲やな〜と感動する曲は、出だし30秒ほどで、すでに良い

音楽は感情を伝えるためのものです。だから、メッセージを伝えるために使う「ことば」の類似品だと考えて扱うと、とてもいい感じに扱えます。音楽には、明確に文法(グラマー)があるのです。日本語にも英語にも他の言語にもグラマーがあるのと、かなり似ています。

この文法をしっかり押さえた上で作曲をしているか、それともただ自分が言いたいことを投げつけて居るだけかは、開始10秒から30秒ほどであきらかに分かります。30秒で良いと思えなかったものは13分聞いても同じ感想でした。

この「音楽には明確な文法がある」、は良い曲を作るのに本当に大事なことです。でも、曲の作り手がそこを忘れてしまうことがあるようです。

怒りで我を忘れた人の話は頭に入ってこない

自分の感情に入り浸って「音楽はコミュニケーションであること」を忘れてしまったときに、この事故は起こりがちです。

文法を忘れた音楽は「好きな順に言葉を投げつけるだけの独りよがりなスピーチを5分聴かされる」という感じになります。

例えば「ああ、この人いいことを言うな」「聴けてよかったなこの話」と感じるとき、相手は、あなたのことを一生懸命に考えて話してくれているはずです。言葉を尽くして、あなたに伝わるように、大事なことばを前に持ってきたり、強く言ったり、日本語の文法の中で「どうすればよく伝わるか」を検討して、喋っているはず。

逆に自分のことしか考えていない人の話は、さっぱり心に響かないですよね。

我を忘れるほど怒っている人と会話をしたことはありますか?「怒っているな」は伝わりますが、伝えたいことはさっぱり頭に入ってこないはずです。怒りに任せているとき、人は文法を忘れるからです。

音楽ってそれと同じなんですよ。感情に任せすぎて文法を忘れると、一気になにも伝わらなくなってしまうんです。

2- 奇抜で変な音を使った「珍しいでしょう?素晴らしいでしょう?」には感動しない

コンテストや助成金などの一次審査では、だいたい審査員ひとりにつき20から50くらいの楽曲が割り当てされ、それを順に聞いてスコアをつけていき、数字が高かったものが二次審査に進みます。得点の高い低いについては通常、運営委員会側から審査基準が伝えられ、その審査基準に合わせた聴き方を求められます。審査員の好みかどうかは、関係ありません。

なので、毎回何十曲も連続して聞いていくわけですが「奇抜で変な音を使う」ことによって差別化を図ろうとしている曲が、いつもかなりの割合あり、驚かされます。今年審査したあるコンテストではおよそ40%ほども、そういった曲があり、とても驚きました。

奇抜にして目立とう!というのは、とても勿体ない戦略です。

あなたの作曲へのパッションが、聴き手に伝わりません。「ただ目立てばいいひとなのね」と解釈され、それで終わってしまいます。

不快な音は、不快な感情を表すために役立ちます。でもそれ以上でもそれ以下でもありません。奇抜な音は、奇抜さを表現するためには使えます。こちらも、それ以上にもそれ以下にも変化しません。

驚かせたら、その後ホッとする箇所を作りましょう。不快な音を作ったら、不快すぎて聴衆が会場を出てしまう前に、何かしらの快を聴いていただく構造にしましょう。友達を、ワッ!と後ろから驚かせて、相手がびっくりしたら、ごめんごめん、と笑顔で言うのと同じです。それを、曲でもしてください。

コンテストで目立ちたい、勝ち残りたい、という気持ちはとても分かるのですが、ぜひ他の芸術や商品とくらべて、考えてみていただきたいです。

  • カレー味のいちごパフェ

  • 出血シーンばかりが続く映画

  • 氷で出来たシャツを着て30分ファッションショーをしてくれと言われた

  • 清涼飲料水とパッケージにあるのに中身がトマトジュース

四種類ぜんぜん違う「奇抜」を並べてみましたが、これらと、きちんと聴き手への配慮があり、設計され、情熱的に演奏されている音楽を比べたときに、果たして奇抜が勝つでしょうか?

3. 肩書きと曲の良さは比例しない

最後に、作曲をがんばっている皆さまを励ます一言を書きたいと思います。

肩書きと、曲の良さは全く比例しないということがこの度改めて分かりました。あなたがもし、私と同じようにどこの音大にも行ったことがなくて、でも作曲を頑張っているとしても … 大丈夫です!肩書きは音楽の質とは比例しません。

コンテストでは応募者のプロフィールを読める場合と読めない場合があります。私は毎回、読まずに審査しています。どんな前提知識も入れずに音楽だけで審査をしたいからです。

うわ、なんだろうこの曲?!と思ってしまった曲が、何十年も大学で音楽を教えてきたという音楽博士の大学教授による楽曲だったり、まだ21-2歳の学生さんが書いた曲に胸が震える感動を覚える・・・ということが、今回もたくさんありました。(過去にもたくさんあり、今回も、です。)

学校名や賞の名前は、作曲活動に何のプラスにもなりません。そういったものが自分のプラスになると考えてしまう時期も、長い音楽家ライフの中にはありますが・・・折に触れて思い出してください。学校名も、賞の名前も、あなたが師事した有名作曲家の名前も、あなたの曲のクオリティには何のプラスにもなりません!

プラスになるのは作曲についてどれだけ真剣に学び、そのテクニックを使い、どれだけ書いてきて、演奏してみて、試してみるかーそれらをどれだけやってきたか、ここだけです。

ただし!

実際に社会で音楽家として活動していくときに、有名音大を出ていることは本当に役に立ちます。その音大からOBOGとして演奏や講演に招かれることがありますし、卒業生同士で仕事を分け合ったりすることも頻繁にあります。コネ、えこひいき、と感じるかもしれませんが、いやいや、自分にとって気が合う人で仕事現場を固めたくなるのは当たり前のことで、それって仕方ないことです。アメリカは私が予想していたよりも極度な学歴社会で、私はこれを知っていたらアメリカで大学院まで出てから活動したと思います。

知らなかったので、アメリカに来てから学歴のなさを覆すための努力がいっぱい必要で。大変ですが笑、恐ろしい分量の努力の結果(笑)、審査員まで何度もさせてもらえるようになってきたので、嬉しいことですね。

賞や学校や先生の名前よりも、誰に作曲を教わるか、が大事です。こころが震える曲を書いている人の門戸を叩いてください。その方が音大で教えるだけで個人的に生徒を取らないなら、その音大へ行ってください。でもね、海外の作曲家は直接メールしてお願いするとレッスンを快諾してくれる方が本当に多いです。だからまずは、アプローチしてみることです。(私はJim McNeely先生の個人的な弟子になり、ご自宅に通ってご家族とも交流できたことで、幸せな未来が来ました。)


最後に励ましの言葉を一つ引用しておきますね。ジャズの巨匠デューク・エリントンの言葉です。

"There are two kinds of music. Good music, and the other kind."-Duke Ellington 
この世には2種類の音楽しか無い。良い音楽と、それ以外だ - デューク・エリントン

良い音楽だけを、書こうじゃないですか!

ps- たくさんの反響をありがとうございます!頂いたご質問にお答えします。

●作曲のpodcast、はじめました!
宮嶋みぎわの「誰でも天才作曲家 略して だれてん!」です^^
 
10-15分聴くだけで、誰でも天才作曲家のような曲がかける。。。をテーマにしており、本当にそういう内容になっている自信があります。超初心者から中級者まで楽しめますので、ぜひぜひ!https://open.spotify.com/show/2Vi2Gz15tqwFIM153fVeT6

●作曲関連の記事はこのマガジンにまとめています
https://note.com/miggymigiwa/m/m63a3559e732c

●作曲のレッスン、やっておりますよ!遠慮なくお問い合わせください。lesson(あっとまーく)miggymigiwa.net です。初心者大好きで大歓迎なのですが、レッスン代がNY価格でお安くはないので、それにドキドキしてしまう方はまず、上の無料のものからEnjoyしていただくと良いかなと思います。

作曲・音楽好きのたくさんの方と繋がれれば幸いです。これからも発信がんばります♪

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