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「SOU.CUTE!」

皆さんこんにちは、水口です。
今回は、「自分の価値観に一番影響を与えた出来事と、そのエピソード」について書き綴りたいと思います。

さて、早速なのですが、価値観と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?

僕がこの言葉を聞いて一番によぎる事は、
「愛されるキャラでありたい」という事です。

かなり抽象的なので具体的に言うと、
「他者への思いやりを持って接する」「人が嫌がる事をしない」「他人を承認する」「利己に偏らない」などです。
他にも、もっとたくさんあるかも知れません。

僕は、この「愛されるキャラ」を持ち合わせているかどうかが、何よりも大事だと思っていますし、僕自身大切にしているものでもあります。

どんなにスキルがあっても、知識があっても、仕事をこなす事が出来ても、この要素が無ければ、人に恵まれない。
言い換えれば、この要素があれば、多くの事に恵まれます。
人としてちゃんとしてるか。

僕の中にこの価値観が形成されたのは、最初の就職先での出来事でした。

豪雨突然晴れ

僕の最初の勤め先はホテルでした。
その時の上司とのエピソードです。

1日数百人前の料理を作る忙しい職場で、昼夜を問わず仕事をしていました。
睡眠時間は平均2-3時間、ひどい時には30分寝てまた働くと言った状況で、盛り付けをしながら夢を見る程だったのを覚えています。
忙しかったのも大変でしたが、僕にとっての一番のストレスは当時の上司でした。

僕の上司は、海外の料理のコンクールで賞を取ったり、某有名ホテルの料理長を務めたとこもある程、経験と実績に富んだ人でした。
仕事の要領もよく、凄い件数をさばいていたのを覚えています。

ただ、気分の起伏が激しく、気に食わない事があると道具や食材を投げるをか、手を出す事も厭わないそんな人でした。
いわゆるパワハラです。

失敗を叱られるのは仕方ない事と思っていましたが、問題は出来上がりを気分で判断する事でした。
同じ仕上がり、作業にも関わらず、叱責され仕事から外されることは多々ありました。
また、誰かを責めると他の誰かに極端に優しくなると言った具合に忖度もし始めます。

僕は、この業界に入る前、「厳しい世界」と色々な方から聞いていたのである程度覚悟は出来ていましたが、仕事の仕上がりこそが職人の所以であり、真髄であると思っていたので、大変なショックを受けました。
また、道具や食材を投げるなど、、、、。

就職前、3軒もの飲食店でお仕事をさせてもらいましたが、そう言った状況をされるはおろか、見た事がありません。

落胆している僕に、「お前悪くないぞ、ホンマ何に怒ってるのかわからんな。」とよく先輩方が声を掛けてくださったのを覚えています。

当然そんな環境なので、同期、後輩、皆んな蒸発して居なくなりましたが、僕は「絶対に辞めない。自分がしたくて始めた仕事を他人の力でやめるなんて、死んでもありえない」と心に誓い仕事に励んで居ました。

そんなある日、事態は動きます。
総料理長から突然、全員召集され、「上司が依願退職する事になった」と告げられます。

突然で、あまりにも呆気ない終わりでした。

後で知った事ですが、
傍若無人な振舞いが他部署の方にまで目に付き密告。
内定調査の後、懲戒解雇か依願退職かを迫られた上の結果だったそうです。

これだけのキャリアの人がこうも簡単に地位を失う事に衝撃を受けました。

その後は、悪評が周り再就職に悪戦、やっとこさ地方のシティホテルに落ち着いたそうです。

嫌いな上司でしたか、この事に喜びは無く、なんだか考え深いものでした。

「発見! SOU.CUTE!」

それもまた突然やってきました。
僕のいたホテルに有名なシェフが来てディナーショーをすると言うのです。

その方は、日本フランス料理界の重鎮で、数々の本を出筆、料理の教本に載っているほどの人物。
いわゆる正真正銘の「巨匠」でした。

えっ、そんな人がうちに⁉︎
そんな機会滅多にありません、一緒に仕事ができるのかと期待半分。
ハタマタ不合格の烙印を押されないかと恐怖半分。

迎えた当日、心臓とダンスしそうなくらい緊張して萎縮。
なるべく目立たないように仕事に努めていたら、全員に、一人一人順番に挨拶。

僕緊張に震える僕にひと言、「料理は好きですか?」と優しく聞いてくださいました。
質問に驚いて震える声で「す、すす好きです!」と答えると「そうか」と笑顔で答え去って行きました。

もちろん笑顔だけでは無く、出来栄えや仕事の仕方について「これはよくない」、「お客さんのこともっと考えて!」と檄を飛ばす事もありましたが、全て職人としての観点から見た料理への真剣さから来る物でした。

怒涛のディナーショーが、終わりを迎えた頃、「全員集合」の掛け声が上がります。

ステージに上がるように促され、恐る恐る。

巨匠が壇上に立ち、来てくれたお客様に挨拶に感謝の御礼を延べ終わると、「今日、皆さんの料理を作ったのはこの方達です!」とひと言述べると会場から拍手喝采。

「自分が作った」と自慢するわけでも無く、自尊心に浸る訳でもないその謙虚な姿勢に心打たれました。

もっと驚いたのは、遠く長崎や東北から巨匠の料理を食べに来ているお客様がいらっしゃった事でした。

正直なところ料理自体は古典的な物で、流行りの味でも、革新的な料理でもありません。
そんな料理を食べる為だけにわざわざ足を運ぶ人がいる。

その時思ったのです。
料理の味では無く、彼に会う為に、来たのだと。
これは、彼のキャラに惹かれた、彼を愛するファンの集いだと。

僕も彼のファンになりました。
そこから、僕は彼のように、愛されるキャラに、人になりたいと思いました。

最後に

とてつもない経歴がある二人。

一方は、自分の尊重を追求した結果、それが原因で没落した僕の上司。

一方は、人を尊重し、その姿勢から人に愛されファンに囲まれている巨匠。

相反する二人、陰と陽に出会えた経験が僕の価値観である「愛されるキャラでありたい」として形成されました。

ただ、愛される事とは受け身ではなり得ません。
他人に尊重し、愛を与える人にしか、その資格はありません。

僕も、道半ば。
理想の愛されるキャラ「SOU.CUTE!」を目指し、日々励んで行きたいと思います。

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