_balaclava_magazine

音楽を書いています。

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最近の記事

UFO

地球の外から、知らない存在が突如訪れる。 世界中の人々が固唾を飲んでTVを凝視するその時、人間は動物へと再び、回帰する。 じっと見つめるのだ。 森のざわめきに緊張する鳥のように。 衣擦れを捉えた猫のように。

    • 音楽日記#2 James Ferraro「Far side virtual」

      私がこの作品を思い出したきっかけはYves Tumorに関する記事を書くための調べ物をしている中で、過去にJames Ferraroと関わっていたことの発見にある。非常に驚いた。vaporwaveの重要作品である「far side virtual」と、現在のロックサウンドをグラマラスに着飾るyves tumorにかつて接点があったなど想像すらできなかった。 vaperwave関連の記事を読み直す中で「デジャヴ」というワード出くわしたが、これは新たな言葉を獲得したような気分で

      • 音楽日記#1 Emahoy Eigen Mariam Gebru「Spielt Eigen Kompositionen 」

        Emahoy Eigen Mariam Gebru 「Spielt Eigen Kompositionen 」 あの世がもしあるのなら、こんなピアノが鳴っていてほしい。エチオピアの女性ピアニストの1stアルバム(ep)。 「The homeless wonderer」という曲が素晴らしい。小回りの効いたダンスのようなフレーズはジャズのようでいて、エキゾな響きでもある。「homeless」という単語は彼女が修道女だった影響であろうが、ニューヨークの街角でパーカッションを鳴らすm

        • Louis coleのライブ。(2022/12/7)

          2022年12月7日。ルイスコールのライブに行った。 よくない癖だと思うのだが、「このライブを見て自分は何を感じ、そこから何を得て何を持ち帰れるのか」ということを考えながら観てしまう。つまらない雑念をかき消すためにライブ中はなるべく素面でいたくない。マリブコークは甘いです。 タワレコのポスター、坂本慎太郎の写真の下に「音楽で爆笑したい」と書かれていたのを折に触れて思い出す。ルイス・コールの帰りの電車の中でも思い出す。 音楽が引き起こす感情はいわずもがな多種多様で、「楽し

          スウェーデンにも、春が。 〜Daniel Ögren 『Annalena』(Fastingen-92)〜

           春。「Annalena」という曲を思い出す(といっても去年リリースの作品だが)。スウェーデンのジャズギタリスト、Daniel Ogrenが2020年にリリースしたアルバム「Fastingen-20」に収録されている1曲。ジャズギタリストという触れ込みではあるが、意外にもそれはストレンジなインストゥルメンタル・ポップスであったりする。  陽気なリズムに陽気なリフ。印象的なメロディーは歌声と管楽器的な響きのギター(あるいはギター的な響きの管楽器?)のユニゾン。それは人ではない生

          スウェーデンにも、春が。 〜Daniel Ögren 『Annalena』(Fastingen-92)〜

          【雑感】2月の陽気とyour smith「bad habbit」

           2021年の2月はとても暖かい日があり、不用意に冬の装いで外出してしまった日中、歩くだけでも汗ばんでしまった。冒頭から軽率に天気の話になってしまったが、話題に困ると天気や気候の話になってしまうのは、文字の上でも同じなのかもしれない。  無論、気候が変われば聞く音楽も変わる。なんとなくyour smithの「bad habbit」のジャケットを思い出して聴いてみる。あまりに眩い彼女の姿に心を釘付きにされ、頭の片隅に挿してあったブックマークしてあったのを、この暖かさで思い出す

          【雑感】2月の陽気とyour smith「bad habbit」

          純度100%のダンスミュージックで踊る〜Dan Kye「small Moments」レビュー〜

           tom misch、FKJ、alfa mistとのコラボ等、ジャズやネオ・ソウルのシーンで食い込みを見せるマルチプレイヤー・jordan rakeiの別名義こそがDan kyeであり、初のフルアルバムとなる。  jordan rakei名義の作品、例えば最新作「origin」では彼がルーツであると称しているソウルミュージックをベースに現代のモードに即したエクスペリメンタルなジャズやエレクトロの感触を織り交ぜて昇華しており、アフロも感じるグルーヴィーな演奏に加えて、クールでい

          純度100%のダンスミュージックで踊る〜Dan Kye「small Moments」レビュー〜

          ノイズの向こう側で描かれる、日本のあの世 〜幽体美人「幽体美人」レビュー〜

           「幽体美人」というアルバムを手に入れた。  2018年発売の7曲ミニアルバム。いつぞやからプレスがストップし、最高だったPVが消えてしまったことから、誰も語らないそのアルバムに好奇心がくすぐられていた。発売当初に決断できていれば4分の1の値段で買えていただろうが、時間を戻すことはできないのでメルカリの赤いボタンに指を落とし、今に至る。  本題に入る前に「the sky mata」についておさらいしておく。北海道を活動拠点とし、bandcampでも精力的にアルバムをリリース

          ノイズの向こう側で描かれる、日本のあの世 〜幽体美人「幽体美人」レビュー〜

          純粋なリスニング体験、2020年の空気、など。石原 洋「formula」レビュー

           図らずも2020年を切り取った作品、ある一つの観点として私は捉えられた。  amazonのレビューに非常に興味深い投稿があった。「もともと普通の楽曲として録音していたが、それを喧騒と合わせて長尺のトラックにしたのでは」という指摘だ。まったく異論なし、そんな感じがすると思った。  実際のところは少し違い、石原氏のインタビューでは2年前から本作の構想があり、リスニング体験における「遠さ」をテーマとしてこの曲を作り上げたという。解釈と妄想は紙一重ではあるが、つらつらと書いていき

          純粋なリスニング体験、2020年の空気、など。石原 洋「formula」レビュー

          あなたの壁も破壊する、自己表出の勇気 〜arca 「kick i」レビュー〜

           その衝撃的なビジュアルとノンバイナリーというポジションから、本作もまたarca自身のパーソナルな作品の一つと思われるかもしれない。しかし、それは違う。この作品はあなた自身の自己規定も同時に蹴破る、あまねく人々のパーソナルな作品にもなり得るからだ。  各所で評判のarcaの新譜「kick i」。彼女の前作、セルフタイトルの「arca」が彼女との初めての出会いだった。美しさと暴力性をオペラティックに歌い上げる新しいエレクトロは非常にショッキングだったものの、当時そこまで聴き込

          あなたの壁も破壊する、自己表出の勇気 〜arca 「kick i」レビュー〜

          【雑感】 「Sun Ra Exotica」に託す、失われる(であろう)2020の夏。

          こんばんわ。 今回はルーティーンとして書いてる音楽文よりは砕けた感じで書きます。普通は下調べや周辺情報のリサーチ、分析などをひぃひぃ頑張って、批評文的な構成を心がけているのですが、今回はエッセイ的な、やや垂れ流しに書いていきます。今後【雑感】みたいな感じでこういったものも書いていければと。ちなみに「Sun Ra」の発音は「サン・ラ」派です。切ったほうがかっこいいと思う。 Sun Raとの出会い?は2019年に行われた渋さ知らズオーケストラ主催のフェス「渋大祭」で出演したTh

          【雑感】 「Sun Ra Exotica」に託す、失われる(であろう)2020の夏。

          見た夢を思い出せないあの感じ、パンキッシュ・サウンドトラック。Wool & The Pants『Wool In The Pool』レビュー

           誤解を恐れずに言えば、本アルバムは全編を通してインタルード的である。日々耳に入る、あらゆる音と音の間奏だ。そこで言えば、音楽性は捻くれているようでも、そのジャケットはとても素直な看板となっている。喫煙という行為もまた、生活と生活のインタルードのようなものではないだろうか。  Wool& the pantsの『wool in the pool』が今回初CD化し、サブスクリプションでも配信が開始した。そのファーストインプレッションは、聞いてもその感触がすぐに消え去ってしまうよ

          見た夢を思い出せないあの感じ、パンキッシュ・サウンドトラック。Wool & The Pants『Wool In The Pool』レビュー

          懐メロ、80年代、クルマ。 〜TOPS 『I Feel Alive』 レビュー〜

          「ドライブに行きたい」   TOPSが2020年4月に発売した新譜『I Feel Alive』を聞けばふと感じるはずだ。思えば、「ドライブで流す音楽」というのは往々にして懐メロであったり、自分の体にしっかりとしみ込んだ曲を選びがちではないだろうか。少なくとも自分は、ロングドライブの一発目から出来立てほやほやの新譜を聞く勇気はない。でも、初めて聞くこのアルバムはもうドライブに持ち出したいと思っている。  前作「Sugar at the Gate」は空白を活かしたグルーブから

          懐メロ、80年代、クルマ。 〜TOPS 『I Feel Alive』 レビュー〜

          解けなかった呪い、その清算。〜The Strokes 「The New Abnormal」 レビュー〜

           The Strokesには解けなかった呪いがある。ご存知の通り「Is This It」だ。20年にも及ぶ長いキャリアを築きながら、その評価軸で多用されるのは未だにガレージ・ロックンロールの復権と称される衝撃の1枚目。その作品は彼らを伝説へと押し上げたが、長いタームで見ればむしろ苦しめることとなったのも事実だ。「Is This It=これなのか?」という、偶然にも問いかける形であったその呪いへの回答は「The New abnormal」で果たされるのだろうか。 1.これまで

          解けなかった呪い、その清算。〜The Strokes 「The New Abnormal」 レビュー〜

          女子とシューゲイザーのとある一瞬。 〜羊文学「ロマンス」レビュー〜

           羊文学のDRIP TOKYOのライブを見て「塩塚モエカの顔と髪型めちゃかっけー」とか「ドラムの性別わかんねー」とか思ってたら昔レビューを書いたのを思いだした。岡村詩野さんの講座で添削していただいたものである。  以下、昨年9月の文章です。 ---------------------------------------------------------------------------- ギター1本のシンプルなリフが、一気にイントロを振り切っていく潔さに耳を持っていか

          女子とシューゲイザーのとある一瞬。 〜羊文学「ロマンス」レビュー〜

          つまらないドラマを観るような、そんな気分〜Connan mockasin「Jassbusters」〜

           『Jassbusters レビュー』で検索。個人のレビュー(音楽ブログ)は1件しかヒットしなかった。そのブログの締めには「このグループに近い感じ」とkhruangbinのURL。マジかよ、と正直思うがkhuruangbinのタイ・ファンクに根ざした東洋的なアプローチとconnan mockasinの親日性?(アルバム『caramel』も東京でレコーディングされていた)がリンクしたのだろうか。いや、このアルバムを語るのには、非生産的な黄昏の話をした方がずっと面白いんじゃないだ

          つまらないドラマを観るような、そんな気分〜Connan mockasin「Jassbusters」〜