見出し画像

レクチャーに向けてのレジュメ・メモ Day1 イントロダクション

2014年 7月5日 正午に「船の本棚」がB&B(東京都,下北沢)に入港した。本日から13日の23:59まで、船はここで「移民する本」を待っている。

このnoteでは、主に7月13日 19時から21時のレクチャーイベント " 河村美雪×内沼晋太郎 「移民する本――migrating books」" のための準備考、メモを公開していく予定でいる。第一回目のnoteは、「移民」について考えだすまでの経緯を簡単に書いて、末尾に13日にレクチャーで扱うだろうトピックを箇条書きにする。

このイベントについて、B&Bのサイトでは、 " 実際の「移民する本」を使って「心の時間と感性の構造」を語りつつ、B&B店主の内沼晋太郎と、「本の価格、個人の価格をつけること」について対話 " と説明されているのだけれど、「心の時間と感性の構造」が、いったいどうして「移民」というキーワードと関係するのか?....わからない。不明瞭な説明である。なぜ不明瞭かと言えば、アーティスト河村美雪の中でも、"心の時間と感性の構造"と"移民"が「不明瞭なまま関係している」からにほかならない。

はっきりと確証はない。

だが、少なくともアーティストの心のなかでは繋がっている。そのような曖昧なものが、現代の東京で作品に成り得るのだろうか?そもそも。

この問いを自分自身にたてて、河村美雪は13日に向かっている。

「移民する本」は、100冊の中身の記載されていない本が都内にバラまかれるところから始まっている。このうちの何冊がB&Bにたどり着くかどうかは不明であり、それ自体を主な問題とはしていない。これは、ひとつの「仕組み」を立ち上げることにより開かれる(ことを期待した)思考への試みなのだ。(だが、おそらく上記の太字部分は検証する必要がある。覚えておくべきことかもしれない。)

この企画の発端を辿れば、約15年前にまで遡る。

河村美雪の高校時代に学校は違うのに仲のよかった友人が、卒業後数年してブラジルへ移住した。結婚したのだ。彼女が結婚した相手は、日系二世で、愛知県で働くために来日していた。

不思議だと思った。日系一世は「仕事を求めて」地球の反対側へ移民してゆき、その数十年後、今度は彼らの子供や孫達が「仕事を求めて」日本に渡ってきている。そして、また帰っていったり、日本に定住したりする。その時々により状況は変わり、人は流れに従うかのように動く。

この頃から、「所属が曖昧になることの周辺」に興味を覚えていったようだ。そして随分と時が経ち、本格的に大人になるにつれて「移民」はどうやら「所属が曖昧になる」というようなロマンティックな言葉で回収できるシステムではないことを多少は学び、そのような重い「移民」というトピックについて河村が考えるでもなくなった2013年、ある規模の大きなパブリックアートの公募が目に留まった。

ノルウェー政府が、2011年7月22日の「ノルウェー連続テロ事件」の追悼を目的として、公共芸術企画を公募した。結果的には、河村は応募することはしなかったのだが、これをきかっけに再び「移民」について考えるようになった。「ノルウェー連続テロ事件」は、「反多文化主義革命」を掲げる一人の32歳(当時)の男が、移民の受け入れを推進している労働党を標的として起こした大量殺人事件である。そして、2013年、東京では「ヘイトスピーチ」が問題になっていた。

なぜ、" 外部からの侵入に対して防御すべきオリジナルの私がいる "、或は" 私の領域がある " という感覚が人間に生起するのだろうか?わたしたちは、いったい何に「所属している」という感覚を抱き、頼りにしているのだろうか?

これが、「移民する本」がはじまるきっかけとなった疑問のうちのひとつである。この疑問は素朴だ。けれど、おそらく15年前の河村美雪自身には切実な問いではなかっただろう。たとえ「移民」でなくても、自身が拠り所としたコミュニティを失ったり、または新たに得たりする、そういった経験は個人生活のなかでは事件である。

さて、レジュメとしてキーワードをここに記す。順番は今後の何とも関係しないし、勝手に変更する可能性がある。

1.  構造と感性

2. オリジナルな私

3. 本

4. 価値を認められること、居場所を得ること

5. 内側に居て外から見る。


続きはまた明日以降。

もしくは、B&Bにて目撃されますよう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?