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朝日ウルルン滞在記〜ベトナム編〜EP4 ハノイ市民総暴走族化


リンの家で洗濯物を干し終わり、ナムとトゥンくんが迎えにきた。
あたりは暗く、オレンジの光で溢れていた。

バイクを走らせ、着いたのはアヒル料理屋さん(?)
出てくる料理はアヒル焼きと、アヒル蒸しと沢山の香草、サラダ、ベトナムのおこわ。
昨日の焼肉も、今日のお店もとにかく量が多い。それなのに、ひとり1000円いくかいかないか。この旅ではお金が全然減らない。

そして香草を沢山食べるため、肌がピカピカになった。東京の一人暮らしでは高くて食べられない野菜やフルーツを山ほど食べているため、フードファイター並みに食べてはいるが胃もたれしない。

リンの家にはルームメイトの男女がいる。8畳に3人だ。ナムに男の子がいて嫉妬しないの?と聞いてみた。リンは嬉しそう。
「あいつは俺より下だ!会ったことないけど。」
すごい自信である!ルームメイトの男の子は英語が話せて私とも沢山コミュニケーションがとれ、ニュージーランドにも留学していた。そんな彼を相手にもしない姿勢。

よく考えると、ナムは日本でいう地元のヤンキーみたいだった。フートを歩けばナムを知らない人はいないし、同い年とは思えない落ち着きが日本にいたころからあった。そして頭がいい。
ちょっと悪いキレるやつ。小柄ではあるが、今日ナムが仕事から帰った時の安堵は日本人の私ですら感じた。
そういえば、ナムのふくらはぎには大きな龍のタトゥーがある。ハノイにきてからはタトゥーをしている人が多くなったように思えるが、ナムのは見劣りしない。

比較的裕福なお嬢さまリンちゃんが惚れるのも無理はないなぁ。悪い男がかっこよく見えたりするよねわかる。


今日は夕食後、観光地の湖にいくはずだったのに、サッカーみるぞーと予定変更。
ちょっと残念。

と思っていたら、カフェの外にスクリーンを出してプチパブリックビューイング!地元のベトナム人が沢山集まって大盛り上がり!
サッカーはわかるので、私も一緒に盛り上がれました。たまに映像が途切れてしまうのが、これまたベトナムらしい。

ベトナム対マレーシア戦。
選手みんな転ぶ転ぶ。イエローカードを出したくて堪らない。なんかちょっとコメディみたい。

この試合、1対0でベトナムの勝利。わあ!良かったねぇ!くらいに思っていた。

がしかし、ベトナムのサッカー戦はこの後が本番であった。

「ドライブ行くぞ!」
ふむ。今日はサッカーの試合が終わり、ホテルへ帰るのかなぁと思っていたが、ドライブをしてくれるらしい。本当気が効くというか、私に気を遣って沢山のことをしてくれている。

バイクを走らせると、いつもより少しバイクの数が多い。常に多いので、より多い。

なんでだろうなぁと考えていると、道端でベトナム国旗や笛を渡そうとする人が沢山出てきた。

「これから祭りだぞー!」
ナムは並走しながら私にいう。祭り。


するとすぐに、国旗を背中に巻いたり、笛を吹いたりしたバイクが増えてきてあたり一面バイクだらけになった。
ぶおおおおおおおおおん!!と走らせるバイクの群れ。

まさに日本の暴走族である。

パララパラリラ〜がプオーン!の笛に変わっただけである。
大きなベトナム国旗を振りながら、ハノイ市街を猛スピードで走るのだ。

だが、日本と違うのは老若男女全員暴走族なのだ。赤ちゃんをかかえたまま3人乗りをしたり、子供がバイクの足場にたち、お父さんが運転したり、もちろんおじいちゃんおばあちゃんもぶおおんである。

暴走族のようにバイクで街を駆け抜ける未来なんて想像していなかった。
こんな日にあたるなんて運の良いベトナム旅。ベトナムのサッカー選手ありがとう。

ハノイ市街を網羅するように走るので、観光地の高級なホテル街や歴史的建造物の前を通った。観光客は、このバイクの群れを写真に収めたり、手を振ったりしている。
私もベトナム人のフリをしててを手を振ってみたりした。
ふふん。羨ましいだろう。私も観光客だぞ。
得意気になってみた。

風を頬が撫でていく。きらびやかなハノイと、みんなが世界を楽しいと感じている雰囲気。
なんだか、涙が出そうになる。
ああ、これが生活を、日々を、楽しむことだ。
渋谷のスクランブル交差点で騒ぐのとは違う。渋谷と同じように理由をつけて、騒いでいる人もいるのかもしれないけれど、群れを見ているベトナム人も楽しそうなのだ。
だれも迷惑そうな顔はしない。


朝すれ違った風俗嬢も今はこうやってバイクに乗っているのだろうか。

あの子たちも、笑ってこの時を過ごしていたらいいな。


ハノイの大きな橋を渡る。
バイクの群れから離れた私たちは、みんな黙って街の光を見た。


ヘルメットを外してみる。
東京で久しぶりに作った前髪も、今の私には必要ない。


次回へ続く。


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