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朝日ウルルン滞在記〜ベトナム編〜EP3 首都ハノイのカオス


ナム家出発後、1時間程車を走らせるとフートの名所フン寺についた。
ここでのエピソードは、番外編として後に綴るとしよう。
(とても濃密であり、お寺は好きなのでちゃんと書きたいのよん)


フン寺はまさに修行であったため、ハノイに向かう車の中はみんな爆睡。ヘトヘトであった。運転係のトゥンくんごめんなさい。

車の中ではCamilaのHavanaが延々と流れる。トゥンくんが好きなようだ。いい子守唄。たぶん日本の夢を見た気がする。

がくん。という車の揺れで目が覚めた。車内は暗くなっている。寝過ぎた!夕方に!夜眠れなくなっちゃう!と飛び起きた私の目に入ったのは、ハノイ市街。到着したノイバイ空港を過ぎ、市街地に着いていたのだ。
先程まで滞在したフートと同じ国とは思えないほどのネオン。カラフルなのは変わらないけど、とにかくビルも店もネオンに溢れている。
LOTTEの文字や、SUSHIと書かれた看板。光る橋。ハノイの夜は賑やかだった。

寝ぼけた目が段々と覚め、隅々までよく見てみると、やはりベトナム。路上に人は座っているし、ゴミも沢山。バイクはハノイの5倍の数が走っていた。

うわー!すごーい!という興奮した私の声にナムリンは起こされた。
もうちゅいたのか。だるそうにナムは日本語でいう。
ナムは"つ"が下手くそ。ベトナム人は大体言えない。かちゅれちゅ。という。可愛い。

 
「今日からホテルだぞ。嫌な感じだったら明日は変えよう。」
ナムやリンの家で大丈夫なのに。わざわざホテルを取ってくれた。

ホテルへ続く道は少しずつ私の不安を煽った。フートにいた人々を少し柄悪くして、同じように路上販売をしていたり、看板は煌々としているのに、中は薄暗い。
ただただ怪しい雰囲気になっていく。風俗街のような場所。そしてとにかくホテルが多い。

「これラブホ?」

ちっげぇよ。と言われても思わず聞いてしまうほどの怪しい匂い。

到着したホテルはやはり、薄暗くてぼろぼろのラブホの入り口にあるカーテンを潜り抜けたフロントであった。部屋に入ると、壁に穴が空いていたり、バス・トイレの隅からヤモリが顔を出す。

これは予想通りだったし、高級なホテルに泊まりたいわけじゃない。穴もヤモリも、虫も平気。そんな人間に生まれてよかった〜と実感するも、ちょっとビビる。

たばこを買いにフロントへ降りると、コンドームを渡された。違う違う!

フロントのおばさんには通じたようで、
ああ、わかった!とコンビニへ連れて行くと言われ肩を組まれた。
なんだこのコミュニケーションは。信じていいのか。通行人が私の顔をまじまじと見る中、ふたりで歌いながら水溜りが沢山ある道を歩く。
売られたらどうしよう。リンちゃんとくれば良かった。泣き。と不安でたまらなかったが、無事たばこを買ってホテルに戻った。
カムーン!!で堪らない私は、ナムのお母さんからもらったフルーツをプレゼントした。
このホテル。間違いないじゃん!

リンちゃんとおしゃべりしているとナムとトゥンくんがバイクで迎えに来た。
夕食へ向かう。

「ハグしてね!笑笑」のナムリンのにやけた顔に従い、トゥンくんに掴まった。
ハノイのバイクは数が多いので、フートと同じようにはいかない。しっかり掴まり、ヘルメットを装着。れっつらごー!である。


まるで、ホットロードの能年玲奈、のんちゃんの気分だ。ネオン街を猛スピードで走るのはフートの気持ちよさとはまた違う。一昨日知り合ったばかりで英語も通じないトゥンくんと背中で会話する。ああロマンティックが止まらない。

夕食はなぜか韓国料理。ベトナムにきて焼肉だ。私が奢ると言ったからだ。たぶん。

夕食後、「お茶するぞ。」という、ナムについていくと、そこは路上であった。プラスチックのテーブルを並べ、沢山の人がお茶をしている。カフェになんて入らなくても、ひまわりの種を摘みながらおしゃべりするだけでベトナム人は楽しめる。日本でいう、公園でワンカップ大関かストロング缶てところだろうか。

日本にいる時の話をした。
ナムは借金があり日本に出稼ぎにきた。リンちゃんは家計を助けるため。あの頃はふたりとも疲れ切っていて笑顔が少なかったのに、今はこんなにも楽しそう。

「日本人は忙しいでしょ。仕事の国。お金が貯まる頃にはおじいちゃん。ベトナムは、お金のない国だけど、みんな楽しいよ。あんまり仕事しないけどね。」

ナムはそう言ってすだちのジュースを飲む。
言われてしまった。日本に暮らす私でさえ、日本の窮屈さを感じているのだから、ベトナムで生まれ育ったこの子たちはどれだけキツい思いをしただろう。働いても働いても物価は高いし、税金も取られる。満員電車に揺られ、深夜まで働いて稼いでいた二人を思い出すと、なんだか寂しくなった。
ミハルもベトナムに住もう、そんな言葉に気持ちが揺らぐ夜だった。


次の日の朝。ナムとトゥンくんは仕事のため、今日は女子ふたりでショッピングの日。夜はふたりと合流して観光地の湖へ行く予定だ。

リンちゃんは日本にいた時、口数が少なくて私に慣れるのも時間がかかったけど、この旅では恋バナも冗談も沢山話した。
モールでアイスを食べ、路地を入り、ぱちもんの服を見たり、興味本位で風俗街を歩いたり。

ハノイは、人も街も都会と田舎をごちゃまぜにしたカオスな場所だった。

ひとりじゃ絶対に回れなかった現地の人が生活する場所。リンちゃんに感謝だなぁ〜。

眠りから覚めると16時。1時間のお昼寝。

リンは洗濯物をしようといい、リンの自宅へ一度だ行くことになった。
タクシーのバイクを呼び、ハノイの街を進む。
だが、昨日の夜回った市街地やホテルの周りとは雰囲気が違った。
ハノイの生活がそこにあった。
密集するアパート。どこもかしこも裏路地。バイクは潜り抜けるように進み、商店の前へ止まった。
リンの住むアパートは、まるで映画に出てくるような、スラム街によくあるアパート。5階まで上がると踊り場のすぐのところに鍵の意味があるのか分からないような入り口。
中へ入れば、8畳ほどのスペースに物が置かれ、窓を開けて下をのぞけば路地を走る子供の姿があった。
洗濯物は手洗いで、屋上に干す。スレスレに木の骨組みでアパートを建設中だった。

これがハノイだ。私はそう思った。
これが東京だ。に少し似ている。
フートは田舎だけど実家がある場所であり、住みやすい暮らしがある。でも、若者が都会で暮らそうと思えば、こんな狭くて、フートとは違うにおいで溢れた場所にいなければならない。
度合いは違えど、東京に住む若者と実家に住む家族を重ねてしまった。どこの国にいても、都会に住むことは苦労を強いられるのかもしれない。そして、ベトナムの都会で裕福な生活をすることは限りなく夢に近い話なのかもしれない。

それでもリンちゃんは、清潔な日本にいたころより綺麗になった。


次回へ続く。

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