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朝日ウルルン滞在記〜ベトナム編〜EP5 ハノイナイト

ハノイ滞在4日目。ベトナム人の雰囲気や仕草、街の匂いや空気に慣れてきた私は、ナムとトゥンくんが仕事の間、ホテルやリンの家で過ごすことが自然になっていた。

前日のサッカー勝利の暴走族化で疲れ果てていたため、ランチをした後リンの家で軽く仕事を済ませ、うとうと寝てしまった。
日本では絶対に出来ないマイペースな生活。日本に帰ったらダイエットだなぁと二の腕をつまむ。

ナムリンは絶対に私を一人にはさせなかった。そこまで危険かしらと思ってひとりで出歩きたいというと、ついて来てくれてしまう。なんだか申し訳ない。

リンはよく眠るので、私が昼寝から目覚めた後も引き続き夢の中だった。

うーむ。これはチャンスかもしれない。
と、私は鍵を持ちひとりで街を歩くことにした。ひとりでコンビニに行ってみたい!頭の中ではじめてのおつかいのテーマ曲が流れる。

アパートの入り口は南京錠。必ず閉めないとバイクなど物が全て盗られてしまうらしい。
かちゃかちゃと開けて外へ出る。
4日目にして、ようやく一人旅。それも何百メートルかだ。一人でベトナムに来たとはいえ、甘々ちゃんだ。
怪しい路地を進んでみる。物を持たずに、2万ドン(100円くらい)だけ握りしめて出たため、スリには襲われない。

意外と平気なものだった。顔は確かに日本人だし、キャットコールはたまにあるものの、睨めば怯む。道端に座る人たちにまじまじと見られるが知らんぷり。

無事タバコを買って帰還した。
リンチャーン!ひとりで買い物して来たよー!と子供のように報告。
寝ぼけまなこで「何やってんだおまえー」と怒られた。

今日は金曜日。華金の夜だ。ハノイにきてから金曜はバーに行こう!とナムはずっと張り切っていた。
ずっと私たちと行動を共にしてきたトゥンくん。ナムは、彼と私をくっつけたくてたまらない。だが、英語も通じなければお互いの言語も話せない、ボディランゲージや簡単な英語でもコミュニケーションが取れない。ましてや、熱い視線で会話したりボディタッチをするようなプレイボーイでもない。ただただ優しく微笑む彼とのロマンスは無理があった。

二人でバーへ行かせようとしていたナムも今日が近づくにつれて、その様子に俺もいく、といい出した。
4人かと思いきや、ナムの友達2人も加わり6人で行くという。いや、バーって。こんな人数で行く?

バイク三台で向かった場所は、ムーディーなバーではなく、華金のターヒエン通り。浅草のホッピー横丁の外と中の概念を消し、人の数を10倍にした感じ。バイクは一切通れなくなり、歩行者で溢れる。ホコ天だ。
観光客もわんさかいて、キャッチをするベトナム人は私に「コンニチワ〜」「アイシテル〜」と声をかける。観光客に慣れているようだ。

その人混みには、フルーツを売って歩くおばあちゃんや、ホットドッグみたいなものを売るおじさんがいたりとお祭り騒ぎだった。

そんな騒がしい夜が大好きな私はテンション爆上げであった。海外の夜を堪能できる〜と張り切った。

まずは、格安25円くらいのビールを飲む。おつまみと色々な種類の瓶ビール。
乾杯をしていると、ある男性が私の方へ近づいてきた。
年老いて痩せた男性は、私をみると右腕を前に出した。
腕が無いのだ。ナム曰くベトナム戦争で腕を無くしたらしい。他のみんなの顔を見ると私の手を触り首を振った。
「何を売ってるの?私買ったのに。」
というと、ナムは
「ただ貧乏だから金をくれって言ってるんだ。同情しちゃダメだ。」
と言った。私は思わずお金を渡したくなった。
でも、観光客の同情を引きお金をもらう、それは簡単なことであり、手が無くても仕事はできる。
同情して与えたお金など、その日の足しにしかならない。そのお金はきっと私のエゴだ。


ビールを飲み終わると、
店のとなりにある"1900"というクラブに行こうと言い出した。観光名所にもなってる半分ベトナム以外の人が集まるクラブ。

六本木のクラブとはまた違い、吹き抜けになったでかいはこで、イメージは新木場AGEHA。
踊ったり騒いだり、日本人のクラブのイメージ"男女が口説き口説かれる場所"というよりみんなが音楽を聴き踊り楽しむクラブで、日本人の駆け引きのような雰囲気の無いこの場所はとても楽しかった。
色々な国の人と話し、踊り乾杯をする。クラブって音楽を楽しむ場所だよね本来は!

様々な国の人と話すと、それぞれの人種に特色があった。ベトナムにいるのに、ベトナムを下に見るアイルランド人。日本人だと話すとめちゃくちゃに仲良くしてくる。親しみやすいのが韓国人。政治でごちゃごちゃしてるけど私たちには関係ない。フランス人はかっこいいけど、あまり話してはくれなくて、アメリカ人は日本のクラブで会う人と変わりない。

と、盛り上がっていると、

ナムリンは照れ臭そうに手すりに寄りかかっていた。
リンは騒がしいのが好きじゃないことは知っているが、ナムは身体を恥ずかしそうに揺らすので、一緒に踊ってみると俺はいいよ〜ミハル行ってきなよ〜と促す。

他のみんなを見てみると、どうやら頑張って盛り上がってくれていたようだった。聞いてみるとナムリンはクラブにはじめてきたらしい。
私を楽しませるために無理してくれたんだね。
ごめんよ。と、外に出た。

「心臓に悪いぞ〜。」と胸を抑えるナムと、頭をわしゃわしゃするリン。
そして、実はちょっと楽しんでいた後の3人。

バイクを走らせてなぜか聖ヨセフ大聖堂の前についた。観光名所に連れて行かねば!というみんなの心意気だ。
トゥンくんと、ナムの友達2人は写真をパシャパシャ撮って、日本人となんとなくコミュニケーションを取れることに笑みが溢れ始めた。
ナムリンのツーショットを撮り始めると、照れたようにふざける。ラブラブだ。
一応今回のみんなの目的、トゥンとミハルをくっつけるミッションを果たすべく、手を繋がせたり抱き着かせたりした写真も撮った。

夜中の大聖堂前は、涼しく、月の光が煌々と輝いてた。


クラブで騒ぐより、私はやっぱりこっちが好きだ。ナムリンが笑顔でふざけあってる時間が。


バイクを走らせナムリンを「ナムちゃん、リンちゃん」と呼ぶ私の真似をする仲間たちが愛しく思えた。


次回最終回。
帰りたくないよ〜!

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