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「死ぬのをやめた日」

2020年6月4日。 トモにとっては、今日はとっても気持ちの忙しい日だったようです。現場からお届けします。 -------- おはようございます。 今日は私の仕事は休み、トモは在宅勤務。思えばトモの在宅勤務も、もう4ヶ月目に入りました。見えにくいトモには、まだまだ上手くいかないことが多いです。 いそいそ着替えて出てくると、サッカー日本代表ユニフォーム。もう私には見慣れた光景になりましたが、お家でユニフォーム。なかなかのものです。 「おーい」と呼ぶので向かうと、うち

    • 散歩を嫌がる犬の気持ち

      ✳︎ 実家の犬は、散歩の時間が近づくとマイマイ回ってアピールをする。散歩を心待ちにしているようだ。 犬が散歩好きなのは、「当たり前なこと」でも「そうあるべきこと」でもないかもしれないけれど 「犬はきっと散歩が好き」だと、経験的に思いつきやすいだけに 散歩に行きたがらないワンちゃんを見ると、「ふふっ」とふきだしてしまうことがある。 前足でブレーキをかけて、リードがビーーン!なってる時の、ワンちゃんの必死な顔は、なんとも愛らしい。 「苦手なもんは、苦手だよねー。」 さ

      • 光になれるとすれば

        ✳︎ 数年前、トモのライフストーリーを記事にしてもらいました。見出しはこう。 次は僕が「希望の光」になる番 キラキラした一文。同時に、この一文を読むと、口元が引き締まります。 本気で、誰か一人の光になりたいなら、相手の「今」をみとって、見せつけでなく、一つずつ、背中を押すことが大事だと 色んな人たちに教えてもらいました。 ---------- 病気の話をします。 トモが発症したのは、「レーベル遺伝性視神経病」というミトコンドリア病です。 この病名から察するべき

        • マックス

          ✳︎ 「5パーセントの奇跡」(原作は、Mein Blind Date mit dem Leben)という映画に、こんなシーンがあります。 ---下記は作品の内容を含みます。--- 主人公は、網膜剥離により視力が著しく低下したサリーという男性。意中の女性・ラウラとの食事の日を控えています。 自身に「見えづらさ」があることは、ラウラに伝えない予定。 そんなサリーに、同僚のマックスはこんな助言をします。 “この店なら、ニョッキを頼むといい。” スプーンで食べやすいメニュー

        「死ぬのをやめた日」

          「わかる」の基本は「区別」

          ✳︎ 「ん?何か変な感じがするな。」 こんな、ささやかな「違い」を感じとった時、 私たちは自分の体に注意を向け、見回し、時には鏡を取り出して、そしてハッと…。 ほっぺでちゅうちゅう血を吸う蚊がいた! なんてことが、「わかる」のでしょう。 私たちは、視覚や聴覚、体性感覚(触覚などのこと)といった知覚に支えられて、 私たちは「(いつもとの)違いが分かる」ことができています。 つまり知覚の大事なはたらきは「何かを区別する」ことであり、 「わかる」の基本は「区別」とい

          「わかる」の基本は「区別」

          関係性の中で振る舞いは変わる

          ✳︎ 『ウサギとカメ』の童話は、きっと多くの人が知っていることでしょう。 じーちゃんばーちゃんの家には、たくさん絵本があって、小さい時は繰り返して読んでいました。 貫くカメと、過信するウサギ? 『ウサギとカメ』を読んでいた子どもの頃、双方をどんな人物と捉えていたんでしょう。 「子どもは小さな大人ではない」ですから、今の私に知る由もないです。きっとその時なりの捉え方があったでしょう。 知れるものなら知ってみたい。 同じ頂上まで競争したウサギとカメですが、でき

          関係性の中で振る舞いは変わる

          偽物が考えたこと

          ✳︎ 芸術の秋、スポーツの秋、ですね。 運動会や文化祭の盛んな時期となりました。職場でも、諸々準備に取り組んでいるところです。 私たちは時折、会を進行するための「ナレーション」なるものを、行うことがあります。 決まった台詞を録音して流していく訳ですが、これがどうも、鳥肌を立たせています。 自分の声を録音したはずなのですが、流れてくるのは、思いもしなかった甘ったるくて甲高い声で。 自分でようやく「こんなんなんか…」と気づき、ガッカリしたというエピソードです。 こうだ

          偽物が考えたこと

          共通の先生

          ✳︎ ロービジョン者となったトモは、節目のたびに、眼科に通います。 求めているのは「治療」ではなく、自分を信じなおして、また次の目標に向かうこと。 トモとパートナーとして歩み出して 一番驚いて、一番嬉しかった出来事は、 「トモの主治医から講義を受けていた」と知ったとき。 東京生まれのトモが藁をもすがり、よく分かんなくなった見え方のまま、福岡まで出てきて出会った眼科医。 「俺こんな遠くまでこないといけない病気なのか」と気持ちをフツフツさせていたトモの、背中を最初に押

          共通の先生

          生活を整理して「違い」を知る

          ✳︎ トモがロービジョン者ということは、外見で分かりにくいとは思いますが 生活の中で、「見えにくい人」なんだということを思い出す仕草・振る舞いはあります。 トモは出会ったロービジョン者の中でも、見えてないんだなと感じることが多く、 トモの仕草・振る舞いが、ロービジョン者の大半に当てはまることはないと思いますが、 「違い」を知るには、生活について整理するのも良いのかなと思いました。 さて、トモの一日は、こんな感じで流れます。 朝。目覚めて一番にすることは、Bluet

          生活を整理して「違い」を知る

          サポートの量と質を高める

          ✳︎ 「白杖もたないの?」 「もたない。」 4年続いたこの会話、先日変化しました。 さて、発症率の極めて稀な「レーベル病」ですが、出会った発症者の数も、気づけば二桁になりました。 共通しているのは、10代〜20代で発症しているということ(私の経験の話で、この年代に限りません)。 この時期には、その人に起きた「悲劇」など何も待ってくれることなく、人生における節目が迫ってきます。 トモは、「レーベル病」を理由に26歳で、就いたばかりの職場を離れました。そして、これから

          サポートの量と質を高める

          見えるようになったらなあ

          ✳︎ 「見えるようになったらなあ」と思わないわけではない。 さて、私の実家は田舎なこともあって、ちょこちょこお家にお客さんが来てました。 かべちょろやら、コウモリやら(めっちゃヤダ)、すずめやら。。。 そういうときは決まって父が外へ連れ出してくれてました。 (お父さんありがとう) 実家を離れて一年目。 夜蒸し暑くて、窓を開けてしまったのがまずかった。 小さい厄介者が割と大勢いらっしゃいました。 羽アリ。 気づいた時には照明にすごい集まってしまっていて、

          見えるようになったらなあ

          「見惚れる」経験

          ✳︎ 4年前の中秋の名月は、今でも覚えてる。 勤務先からの帰る途中に、いつもよりずっと地平線に近くて、馬鹿でかい満月が見えた。 茹でて濃くなったピカピカのとうもろこしみたいな色で(伝わるだろうか、、、) 思わず立ち止まって写真を撮る人が多かった。 「見惚れる」って、素敵な経験。 さて、ちょうどその頃「見えにくい人の見え方」を想像することが、自分の中でのブームになっていた。 (ロービジョンの当事者に会い始めた時期で火がついていた) 「見えにくい人は、○メートルより先

          「見惚れる」経験

          一律から多様へ

          「茅乃舎だし」シリーズご存知でしょうか。福岡育ちということもあり、すごく好きで。焼きあご、野菜、昆布、極み、鳥、、、いいですよね(笑) 福岡へ帰る際は、東京駅の茅乃舎に寄ったりもします。色んな種類のだし(その他も)が、ずらーっと並んでいて、人におすすめはしたいけど、「どんな味?」と聞かれると説明しづらい。 「百聞は一見しかず」といいますが、そういうとき、試飲・試食があると助かりますよね。少量で一気に解説してくれて、「なるほどね」「いいたいこと分かった」となり、とてもありが

          一律から多様へ

          情報や刺激のない世界?

          ✳︎ 「情報の約8割以上は、視覚から得られている」と、よくいわれますよね。 数年前、急激な視力低下が生じた時、私のよく知るロービジョン者は、今まで得られていたはずの情報とか刺激を、掻っ攫われたような気持ちにいたんだろうなあと。 ただ、視覚のほとんどを失った彼が今でも、「情報とか刺激のほとんどない世界に生きている」と表現してしまうのは、妥当? 少なくとも彼の生活を内からみるようになって、彼が豊かな世界に生きてるなー、と実感することが多くなってきました。 先日、買い物の

          情報や刺激のない世界?

          服探しに人探し

          ✳︎ 視覚障害のある彼(トモ)との買い物は、すごくシンプル。 店舗ガイド(があれば)をザッと読み上げて、「ココ」と言ったお店に案内する。 着いたらフラフラ〜と一人店内を散策して、早々と店員さんと思しき人(ここの嗅覚がよい)を見つけ、「すみません、シャツってどの辺ありますか」的な会話で行き着く。 探さないし、待たない。 トモとは、ウィンドウショッピングはほとんどしたことがありません。 目と紙の幅3センチで文字を読むトモが、本気でウィンドウショッピングするとなると、首か

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          のっぺらぼうなんだそうで

          ✳︎ 視覚障害のある彼(トモ)にお世話になってから、早いもので4年が経ちます。 周囲にはよく「( 私の顔は )分かるの?」と聞かれるのですが、のっぺらぼうなんだそうで。 お付き合いが始まった後、LINEで写真を送って、「どうも、こんな顔です」と挨拶しました( 手元で拡大すると分かるので )。 とはいえ、拡大されるとなると「どんな反応するんやろ」と、緊張もしますよね。。。 (笑) さて先日、『顔がない女の子』という漫画を見て https://mobile.twit

          のっぺらぼうなんだそうで