MusicFMを使っている高校生が大人になっていく。

高2になって最初のホームルームの自己紹介、私は一か八かで、

「バンドが好きです。
ASIAN KUNG-FU GENERATION、とか、好きです」

と言った。あえて略さず言った。
なんだそれ知らねーwといった具合にちょっと笑ったやつがいたので、そいつの顔は一生忘れない。
(※大人の皆さんへ※ 現在の高校生でアジカンを知っている人は多くないよ!)

「ねえねえ、アジカン好きなんやね!」

その後の自由交流タイムのときに、そう話しかけてきた子がいた。彼女も自己紹介で「バンドとかよく聞きます!」と言っていた。挙げていたのは、どれも若者を中心にヒットしているバンドばかりだったけれど。
私はアジカンを知っている高校生に出会ったことに衝撃を受け、
「えっ、アジカン好きなの!? まじで!? 何の曲が好き!? アルバムは!?」とまくしたてた。

「ごめん、リライトしか知らないw かっこいいよね、リライト!」

あー、はいはいはいはい。おーけーおーけー。リライトかっこいいよね!わかる!
私は自分を落ち着かせつつ、笑顔で頷いた。

「こないだの○○(某ジャニーズがMCの音楽番組。私も好き)で紹介されてて、かっこいー!と思って。すぐMusicFMに入れたもん!」

んーーーーーー?
お嬢さん、今なんて言ったかなーーーーーー?

「えっ……それって違法のやつだよね?」
彼女は何も驚いた様子を見せず、「うん、でも全部無料で聴けるよ!」と言った。

いやもう、アジカン一生知らなくていいからそのアプリでだけは聴かないでくれ、マジで。

私は自分を落ち着かせつつ、
「うーーん、バンド好きって言うなら、あんまりそういうの使わない方がいいんじゃないかなーー?」と、にこやかに言った。

高2、春、最大の衝撃だった。


自分が通っている高校はまあまあそこそこ頭が良いので、みんなそこらへんの良識はあると思っていた。だからMusicFMという違法アプリの存在は知っていたものの、自分とは縁遠い話だと思っていた。

しかし、彼女だけではなく、MusicFMを使っている人は周りに結構いた。

文化祭バンドに向けてドラムを練習する彼は、「MusicFM、オーラルの新曲まだ入っとらんくてさー」
と、ぼやいていた。

椎木さん大好き!と言っていたあの子は、「MusicFMまじありがたい。あ、マイヘアはちゃんとCD買うよ♡」
と、謎の弁明。

1年生からの友達に「違法アプリとかまじありえん!」と愚痴ると、
「えっ、ごめん、私も使っとるわ……。違法って知らんかった!」
と、言っていた。
ちなみに、彼女は今もそのアプリを消していない(こないだ喋ってる時にホーム画面にそのアイコンが見えた)。

引き合いのように出してしまったけれど、マイヘアもオーラルも好きだ。むしろ先の彼や彼女経由で知ったので、本人達が悪びれず違法アプリを使っていたことがショックだった。

冒頭の彼女とは今ではすっかり仲良しだ。MusicFMを使っているところ以外は大好きだ。
夏頃まで、私は彼女に時折「そのアプリ、違法だよ?」と繰り返した。

「いやわかっとるんやって!でも、お金ないからさー、しょうがないやん? 大学生になってバイトするようになったら、ちゃんと正規のアプリ使うから!」

「学生だから、限られたお金の中でやりくりしなきゃいけない。」
そんなものは、違法アプリを使う言い訳になんかならない。

だけどそういう話をしたって、正規の有料アプリを使ってる私の家はお金持ち、たくさんお小遣いもらえる、親が甘い、みたいに取られるオチだ。それがめんどくさくなって、彼女を咎めるのもやめてしまった。
うちは両親ともに音楽好きで、親も好きなバンドの音源は大体揃うし、私が見つけた新しいバンドにも親が興味を持つので、アルバムをレンタルしてきてくれたりする。アジカンのアルバムの初回盤のお金を、母親と半分ずつ出し合ったこともあった。
私が違法アプリに嫌悪感を持つことができるのは、こうした環境のおかげもあったかもしれない。最初に好きになったバンドがアジカンという、アートワークにも魅力が大きいバンド、というのもあるだろう。

自分がそんな子に育ったことに心底安心しているし、やっぱり、ファンだ、といいつつ、違法アプリを使う友人たちは、なんか怖い。


教育が悪い、とは思わない。


だってもちろん、ネットの使われ方についての授業はこれまでに散々あったわけで、

「ネットに自分の写真や個人情報を載せてはいけません」

とか

「法に触れる行為はしてはいけません」

とか

「他人を傷つけるようなことを書き込んではいけません」

とか。教えられてきたし、覚えている。

でも、インスタにはみんなまるで義務みたいにプリクラを載せるし、気づいたら友達のアイコンが私との写真になっているし、Twitterに愚痴なんか書きまくってさ。
あとそこのお前、クラス写真載せるならせめて顔にぼかし入れろや、アホか。何で友達でもないお前のアカウントでクソ写り悪い顔晒されなあかんねん。ストーリーなら24時間で消えると思うなよ、スクショで永久保存じゃボケ。

……そんな具合に、いくら教育を受けたって、「みんなやってるし」ということで自分もしてしまう。慣れてしまえば、そこに対する疑いも罪悪感も静かに失せる。

しょうがない、と言ってしまうのはなんだけど、しょうがない、と、思う。
ネットの海は広い。恐怖心に好奇心が勝った瞬間から、本当に怖いことがない限りはなかなか引き返すことは出来ない。

音楽に対する態度だってそうだ。
「これ、違法だよね……?」って最初はためらっても、みんなやってるし。何より無料、ええやん。
「そんなん万引きと一緒だよ!!」って大人に言われたって、別に防犯カメラないし、店長に腕掴まれて「ちょっとカバンの中見せてもらってもいいかな?」なんて言われないし、バックヤードに連れてかれて親呼ばれたりしないんだから。

物質として買うことが主体ではなくなったからこそ、一度無料で手に入ってしまうと、そこに本来の金銭感覚を植え付けるのは本当に難しいことなのだと思う。
そうして「悪い」ことを「悪い」ことして受け止められないまま、MusicFMを使っている高校生が大人になっていく。私はそれが怖い。

大多数が「無料である」ということ以外の価値を見いだせないのならば、音楽という文化に未来なんてない。
どうか、私の大好きな音楽たちが、大好きな人達のつくる音楽が、正しい方法で、たくさんの人たちに届いてほしいと願っている。





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あおいで

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#音楽 記事まとめ

楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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コメント5件

なんでMusic FMはダメなのか??違法だからだめ、とかじゃなく、ちゃんと説明されてない、教育されてないことも問題と考えます。自分も近々、違法アプリについて書きたいと思ってます。あと文章表現がうまいですね!
違法音楽アプリに対する 各国のサービス

米 iTunes「違法サービスはタダで聴けて素晴らしい でもiTunesなら100円でこんなにも手軽に聴けるのさ」

英 Spotify「違法アプリが蔓延している それらを潰すには それらを越えるサービスを提供しなければ」

日本「違法サービスは著作権が〜
だからCD買えや」

日本はCD買わせるために有名な曲は聴き放題加入しない。
まずはAppleMusicとかSpotifyやGoogleMusicに聴き放題に加入させることから始めた方が良いかと。
月額480円(AppleMusic)から使えるし、聴き放題で聞けるようになれば
ほとんどの人はMusicFMとか使わなくなると思うよ。
※海外垢だとperfume聞けるけど、日本垢だと聞けない
リツイから失礼します。
すごい一気に読み込んでしまいました。
お恥ずかしながら、私は一度このアプリをインストールしていたことがあります。機種変を機に使わなくなって今は正規のものを使ってますが、インストールしていた時は便利だなーと確かに思っていました。
でも便利でも、それは私の大好きなバンドやアーティストの力にはならないんですよね。
いや、ほんまにそうだわ、、と唸りながら読みました。
‪はじめまして。「Music FMを使っている高校生が大人になっていく。」‬この強烈な見出しにぐさりと来ました。現在大学生の私は、筆者様と同じ、高校2年生の時にMusic FMというアプリを知りました。まさに私は、Music FMを使って大人になった高校生です。
17歳だった当時の私には筆者様のような意識は持っていませんでした。
無料に価値を求めるのは、ある意味正しい消費者の姿勢なのかもしれませんが、その価値にべったり依存してはたしかに音楽であれ、どんなコンテンツにも未来はないなぁ、と、改めてこのアプリの持つ危険性を考えさせられました。
最後に、このような違法コンテンツを取り締まる意識が強まる風潮にのって、この記事がたくさんの10代に刺さりますように。
長々と失礼しました。
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