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枝毛の先に、私がいる。

高校1年生の時に席が隣で、毎朝一緒に走ってた友達と会った。
実に13年ぶりの再会だった。


待ち合わせ場所にいた彼女は、髪を金髪にブリーチして10を超えるピアスを左耳につけ、凛と佇んでいた。

でも、私を見つけた瞬間にみせたあの笑顔。弾ける表情はあまりにも当時のままだった。
込みあげるものがあって、私は思わず彼女をギュッと抱きしめた。


大学では何してたの?今はどんなことしてる?これから何やってみたい?なんて、過去や未来をいったりきたり話してるうちに、「あ、そういえば全然関係ないんだけど」と彼女が言った。


「私ブリーチしてるから、つい枝毛を見ちゃうんだけど。いつもカワベを思い出すんだよね。

授業参観中なのにカワベはずっと枝毛をいじってて、カワベのお母さんが『枝毛をいじるために授業料を払ってるんじゃないっ………!』って嘆いてたのが、めっちゃおかしかったから。

だから枝毛を見るといつも、その話と、カワベを思い出すの。
ねぇ、カワベは覚えてる?」


私は全く覚えてなかったし、娘がそんな高校生だったら本気で嫌だと内心膝から崩れ落ちていた。
が、それよりも何よりも、彼女の生活の一部に私が介在している事実は、ちょっと震えた。


13年、会ってなかった。
その間は一度も連絡を取ってないし、お互いのSNSも知らない。


だけど、彼女の枝毛の先には、いつも私がいるのだ。


ねぇ、私も同じだよ。

エアーサロンパスを見たら、まずあなたを思い出すよ。
始業時間に間に合うようにダッシュで教室に滑り込んだ後は、2人とも我が物顔でエアーサロンパスを噴射してたよね。
皆からお前らまじで毎朝クサイ!と言われた、あの朝をいつでも思い出せるよ。


彼女は今、足を怪我して走れないという。

その分、私が走るから。
サポーターを巻いて靴紐を結んで、家のドアを開けて。
そして、あなたを思い出すからね。

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