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「誰に届けたいか」で表現はガラっと変わる

はらわたが煮えくりかえるほど怒った、と友人が静かに言った。

その内容は、「認められるように言語化しろ」といわれたことから始まったらしい。参加したワークショップの内容について、「仕事で発信する文章を書いて」と言われて書いた時に、上司から心無いフィードバックをもらってしまったのだそうだ。

メッセージ上で行われた上司と友人のやりとりを見せてもらったり、友人の意見を聞いていると、どうやら二人は届けたい対象が違ったようだった。(おそらく)広く浅く万人向けに、何が起こったかをレポートしたい上司と、体験したことをもとに、自分の心の動きやその時の感情を近しいお客さんへ伝えたい友人。

「仕事で発信する文章を書いて」の依頼は、想像する届けたい人が異なるだけで全然違ったアウトプットになるのだ。

対象のものをどう切り取るかで人に与える影響は全然違う。誰に届けるかで見せ方は全く変わるのだと最近改めて、そして強く思うようになった。

そう感じたのは、関わっているメディアで店舗を“顧客体験“の観点から切り取っていることがきっかけだ。

例えば、日本の伝統工芸品や生活雑貨を扱った「中川政七商店」。

CX(カスタマーエクスペリエンス)に特化したメディア「XD」では、お客さんの心をつかんで、ブランドを確立していった部分にフォーカスを当てている。

一方、訪日観光客向けメディア「MATCHA」では、海外の人に“日本ならでは“を伝えられるよう、「日本の伝統技術を使った雑貨」に焦点があてられ、おみやげの提案に変わった。

そして、「丁寧な暮らし」を伝えるライフスタイルメディア「キナリノ」では、日用品のカテゴリからバラエティ豊かな「花ふきん」をスポットライトに当てている。

訪日観光客向けに発信するとき、日本人が普段使いするものとして提案するとき、またはマーケティング担当者へ事例として紹介するとき。それぞれ気になるポイントは違っていて、読者によってフォーカスの当て方に特徴がでる。

読者の「そのメディアに何を求めに来ているのか」に合わせて、対象の見せ方や取り上げる方法を変え、知りたいことに手を差し伸べていくのだろう。

書くことの先には伝えたい人がいる。その人に向けて何を伝えたいかで、どんなことを書くかが変わってくる。だからこそ、「何か書いて」と頼まれたときには、「どんな人に届ける文章か」を、相手としっかり認識合わせをしておきたい。

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