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“やりすぎ“のサイン

あの血豆は、サインだったのだろうなぁと、帰りの電車の中で思った。

まだ前職にいた頃、月70時間の残業が3か月続いたことがあった。新プロジェクト立上げだ! なんてワクワクする内容ならまだしも、大炎上した案件の火消しがメイン。毎日新しい課題がポコポコ見つかって、けれど1つ1つが大きすぎてすぐには解決できるものでもなくて。

4,5年前なのでどんな気持ちだったかあまり思い出せないけれど、毎日出てくる課題に絶望しながら、とにかく夢中に働いていたような気がする。

そんなふうに働いていたら、ある日の昼休みに、突然口に異物が現れたのだ。口を開けてみると、小指の先くらいの大きな血豆が一つ、左の頬っぺたの裏にくっついていた。朝は全くなかったのに、本当に突然現れた血豆。大きいので気になって仕方がないし、けれど潰したら痛そうだし……嫌だなぁと思って2,3時間を過ぎると、いつの間にか無くなっていた。そして、定時を過ぎて残業に差し掛かると、またぷっくり現れるのである。

1日の中で出来たり無くなったりを繰り返す血豆。翌月に残業規制がかかるまでは数日おきに訪れて、私をいつも不思議な気持ちにさせていた。なんだかそれは気持ちのパラメーターみたいに、午後が始まる憂鬱と、定時過ぎても帰れない諦めが、膨れ上がってきてしまっていたような気がする。


“残業”というくくりがあったなら、一体今は何時間しているのだろうか。複業を含めると平日夜も半分、土日は大体両日働いているので、当時の70時間と同じか、超えているような気もする。

確かに大変ではあるけれど、炎上の火消しよりは前向きな仕事ができているしなぁ。きっと楽しくなかったら、また血豆が表れてきたのかもしれない。

なかなか治らない口内炎を舌でいじりながら、最寄りの駅で電車を降りた。

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