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【伊丹 大地さん】"麩"を通じて、食文化を問い直す。

皆さんは、”麩”にどういったイメージがありますか?

お吸い物に入っているあれね…!という人が多いのではないでしょうか?

実は、静岡県を中心に”麩菓子”が流通しているのですが、その製造会社(株式会社三島食品)を経営されているのが本日ご紹介させていただく、伊丹 大地さんです。

なぜ今の会社を経営することになったのか。麩になぜ興味を持ったのか?

事業を続ける中での今の悩みはあるのか?などお話しを伺いました!

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三島食品株式会社との出会い

私が経営している「三島食品」は、60年ぐらい前にスタートして、
当時は生のうどんをリアカーで運ぶなど、製麺業をしていました。
その後、流通店で鍋焼きうどんなどを販売していましたが、卸の分野では勝てなくなってきていて…
そんな中で、20年前に富士市にある麩菓子の会社を買い上げたんです。
今でいう、M&Aですよね。そこから、麩菓子の分野を新事業として取り組み始めました。私自身は、2012年に婿入りをし、3代目となりました。
本業の製麺業は学校給食に特化して事業を継続していたものの、2015年に廃業し、今は麩菓子1本で事業を続けています。

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なるほど…
苦労してきたのが伝わってきます…。
そもそも、なぜ会社を継いだのでしょうか??

私が会社を継いだ理由


継ぐしかなかったんですよね(笑)
そして、麩自体にすごく興味があったのもあるかもしれません。
というのも、なぜCMもやってないのに今も残っているんだろう?というところが気になったんです。

たしかに、気になりますね。

私の中で”麩”は地味なイメージがあります(笑)


そうですよね。(苦笑) 麩について調べていくと、肉の代わりの精進料理としてや牛乳に浸して離乳食に使われていたりと、身近なところで幅広く使われているんだと分かりました。そして、麩には地方性があることもわかりました
例えば、さくら棒が流通しているのは静岡が中心だし、沖縄のほうの麩は違った触感といったように。元々、中国から入ってきた食品だけど、日本独自で進化してきた食品でもある。
だからこそ、海外にFU(麩)が知れ渡ればいいなという思いもあって、麩の会社を営んでいるんです。

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素敵な思いが聞けたところで、
麩を販売してきた中で感じることはありますか??

麩を販売してきた中で感じること


伊丹さんから、こんな一言。

そもそも、麩ってどうやって出来るのか知ってます?

知らないです…。どうやってできているんですか?


メーカーによって異なりますが、基本的にはグルテンと小麦粉と水で出来ているんです。
私たちの会社では、1~10まで手作りで作っています。

人間、知らなかったものを知った時の感動ってすごいですよね。
最近、外国の方に麩を触れてもらう機会がありまして、初めて麩に触れてもらったときに、ナニコレ?ってなるんです。だけど、説明をしていくうちにわかっていく。
その感覚がすごく心地よくて、麩を販売し続けています。

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麩を作る際に機械化したほうがいいのでは?と投げかけると…

需要と供給のバランスを考えると、機械化の方向に進めるというよりは、
これからは手作りや温かみを大事にしていきたい。だから、すべてを機械化するということは考えてないです。麩菓子を作っている事業所は、現在減少傾向。 そのため、苦労していることとして、機械が壊れてしまったときに機会を直すもの一苦労。私たちは、食品(麩)を作っているんだけど、機械も作っていると感じます。そのため、機械の設計書を昨年新しく作ったり。
せっかく作るなら、ユーザーフレンドリーにいきたいよね

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麩菓子を扱っている中で、悩みはありますか??

「1個何百円する麩菓子をどう売っていくか?」 を今は考えているところです。
最初は麩菓子に何百円も払えない!というお客さんが多かったものの、
最近は理解を示してくれている人も多くなっているんです。

そうなった今、特に衛生面を意識しています
元々、木で出来ていたところを金属製のものに変更していますが、私は衛生面と手作り感は相容れない部分だと思っています。
衛生面を意識してしまうと、手作り感が損なわれてしまうから。
そのバランスも今はすごく悩んでいる一つです。

あとは、大地さん自身が麩を焼いており、現場(工場)を任せられていないという状況が悩みだという。

本当は、現場を任せたいのですが、麩を焼く技術って難しいんです。
もし、僕の他に麩を焼ける人がいたとしたら、自分は外から見ることができるので、
また違った形で自分の会社を見ることができるんだろうなと感じます。


これまで、ご自身の会社について伺ってきましたが、
大地さんが大事にされていることはありますか?

伊丹 大地さんが大事にされていること


“成長”を常に考えています。
失敗を恐れて何もしないと、降下してしまうからね。
もし、失敗しても何かをやろうという姿勢
がすごく大事だと思います。

私もその姿勢がすごく理解できます。
ですが、何をすればいいのかの“何”という部分がわからない人もいると思うのですが、どうお考えですか?

いろんなことがあるけど、自分の中で割り切っていかに自分の色が出せるのか。
選択と集中という言葉がしっくりくるかな。
円と円が重なる部分にガッと努力していくイメージ。
まずは自分が向かっていく方向を定めるために、何かやろうという姿勢を持ってほしいですね。

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終わりに

奥さんに「なぜ?」が多いよねと言われることが多いという大地さん。
疑問を常に持って生きていると言いますが、その原点は海上保安庁に入庁した経験が大きいという。

なんで、高校とか大学とか行くの?って思うんです、義務教育は中学で終わりだというのに。
なんとなく、当たり前に生きている真実を知りたいんです。
海上保安庁時代、私は事故の原因などを探るために、真実を突き止めていく方法や記録の取り方・論理的に考える方法を学んできましたが、それが私の人生に活かされています。
もっと、当たり前と捉えられていることに対して、突き詰めていきたいんです。

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編集後記

“麩”がどのようにできるのか、正直知りませんでした。
1つの食材がどのように出来上がっているのか、その食品・食材を作っている方はどういった思いを抱えているのか。
TPPの問題や食の安全が叫ばれている今、私たちは「食」について考えているようで、実は考えていなかったり、まだまだ知らない世界があるように思います。

今回、日本にずっと存在している“麩”という食品を通して、生産者の顔だけではなく、生き方まで知ることが出来たら、食への意識が変わるのではないかと強く感じ、伊丹 大地さんをゲストに迎えました。

代表取締役である大地さんは、悩みを抱えています。
人はみな悩みを抱えながら生きていますが、自分らしく楽しく生きる上では、“悩みを外に吐き出すこと”が大切なことかもしれません。
食品の流通のこと、時代に即した事業展開、そして伊丹 大地さんの生き方に興味がある方はぜひ10/19(土)にいらしてください!

インタビュアー:大庭 周(おおば しゅう)

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